EDEN〜Legend of Meet〜

作:桃汁

 

序章 時が動き出す

 

−1−

 

『太古の昔、人間と魔族、そして竜族とが互いに(ひし)めき合いながらも、共存していた時代があった。

人間は優しい心と優れた知能を神から与えられ、魔族は強力な魔力と生命力を与えられ、また竜族は幅広い知識と強力な力を与えられた。無論のこと、三者の力が氾濫しないように、各々は神から、それぞれ与えられなかったものがある。人間には力を、魔族には肉体と心を、竜族には魔力を奪い去られた。しかし、神の判断は間違ってはおらず、三者はそれほどの混乱もなく過ごして来ていた。

 だが、やはりいつかはその関係が崩れ去ってしまう。魔族は、人間の持つ肉体をいつも羨望の眼差しで見つめていた。故にある魔族が、犯してはならないことをしてしまう。

「人間殺し」である。無論、故意にではないにしろ、人間の肉体に憑依してしまったショックに人間が耐え切れなかった為にその哀れな人間は死を迎えた。人間の体には魔族の強力な魔力に耐えられないように、神が仕向けた魔力抵抗があるのである。つまり、人間に魔力が持てないように。この世界において、各種族間を越えた争いはその種族に対する挑戦、さらには侮辱を表す。この事件がきっかけとなり、各種族で様々な問題が発生した。

竜族による、人間の居住域への領地侵食、さらには人喰い。竜族同士の縄張り争いによる、人間の巻き込み事故、

魔族の人間殺し、脳吸い(人間や竜族の脳を吸い取る)、無差別大量虐殺。他種族居住域内での魔力の行使や、人間同士の欲のぶつかり合いから生じる同族殺し、竜族への攻撃、人間による魔力抗体の開発等等・・・。

「欲」とはいつの時代も恐ろしいものだ。今、私たちが生きている時代も色々な欲で満ち溢れている。

食欲、睡眠欲、性欲・・・。人間の持つ本能的な欲望が魔族にも移転したのか?

はたまた、魔族が好んで食べる人間の負の感情から学習してしまったことなのか・・・。

原因はわからない。最初は欲のぶつかり合いが、種族の権利戦争にまで発展してしまった。

この人間、魔族、竜族との三者の戦争を後に「魔大戦」と呼ばれるようになる。

かのような混沌とした時代に生きる人々にできることは神に祈ることしかなかった。

 

竜族は神に近い存在であった。そのため、人間は彼らを奉り、供え物をして神の祝福を受けようとしていた。

竜族は、その供え物と彼らの祈り(純粋な心)を糧とし、代わりに人間には山の恵みと生命の安全を保障した。

この事態に見かねた三種族の神達は、三種族を取り締まる、究極の種族を生み出すことにした。

竜族の知識と力を持ち、魔族の強力な魔力、生命力と、人間の持つ心と肉体を兼ね備えた究極の種族を!

「神竜」と彼らは名づけた。神竜は、正に一瞬にして魔大戦を終結させた。圧倒的な力、強靭な魔力で捻じ伏せたのだ。これにより、種族を越えた争い、種族間の争いには神の命により、神竜が制定に向かうという新たな構造が出来上がる。これにより、現在まで大きな争いはない。神竜もそれを知ってか、何千年もの間、地上で最大級の規模を誇るルササ火山の奥深くで眠っている・・・。』

 話を一気に終えたためか、男の表情には幾分かの疲れが見える。年の頃は30位といったところか、まだ若さが顔から溢れ出ている。

「それで?もう“しんりゅー”はでてこないの?」

小さな男の子が言った。どうやら、この男の子供のようである。あの長い話を聞いていたにもかかわらず、眠気を一切感じず、寧ろ興味を一層引いたような顔をしている。寝かせるために用意した話が逆効果だったようだ。

「そうだな・・・。また大きな争いが起これば出てくるかもしれないが・・・、争いは好きじゃないだろ?」

「うん。」

「父さんも、戦いは好きじゃない。みんなが笑顔で平和に生きられたらいいなと思っている。」

「ぼくも!」

男の子が元気よく手を上げながら答えた。その頭を父がいとおしそうに撫でる。

「おまえはいい子だ。」

「えへへ。」

照れくさそうに男の子は、はにかんだ。子供のこういう表情は大人の頬をも緩ませる。

父は外を見る。もう夜だ。

「随分と話してしまったな。今日はもう寝なさい。」

そういうや否や、父は部屋から出ようとする。

「うん。でもお父さんはどこいくの?」

男の子が今まで座っていたベッドに再び横になる。

「ちょっとな・・・。」

途中でドアを閉めてしまったために、男の子には聞き取ることができなかった。

男の子は言われたとおりに眠ることにした。

 

−2−

 

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン・・・・・・・・・・・。

凄まじい衝撃と爆音が男の子のベッドにまでも鳴り響いた。

突然のことで、何がなんだかわからない。

男の子はシーツを頭まですっぽりと被せ、小さく身をかがめた。

「(神様・・・・)」

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!

再び爆音が響く。今度のは随分とここから近い。

男の子は、泣き叫びたかった。

(怖い、一体何が起こったんだろう。ぼくはどうなるんだろう。誰か助けて!!お父さん!!)

ズガァァァァァァァッ!!!

三度(みたび)爆音がした!すぐ隣だった。男の子は本能的に悟った。次はここがやられる。逃げなきゃ!

そう思い、男の子は裸足のままベッドから降りる。その時、彼は父からもらった「お守り」の黒筒(こくとう)を握り締めた。

(お父さんが守ってくれる!)

こう信じて彼はドアまで駆け出した。

すると声が聞こえる。男の子はドアに耳を近づけた。

「おい!正門を固めろ!!リザードが10匹にベヒーモス7匹!!おまけにウィザードまでいやがる!!

 魔道隊を呼んで迎撃体制だ!!」

こっちからは違った声がする。

「ミート様の救出を急げ!!ゾーズ王が魔獣と戦っている!戦闘員はすぐさま援護!救護班は、城内の救出を急げ!」

(魔獣?お父さんが?どういうこと?)

そう男の子が考えているとドアが勢いよく開いた。

「ミート様!!」

「ヴァ・・・ヴァジール!!」

入ってきたのは、ドラグーン城に仕える大神官ヴァジールであった。若いが、優れた判断力と知識、魔道において

彼の右に出るものはいない。容姿端麗、頭脳明晰、しかも優しいヴァジールのことが男の子は好きだった。

「ここは危険です!!早く逃げましょう!!」

言うなり、男の子はヴァジールに抱えあげられる。

「いったい何があったの?」

「わかりません!ただ、魔獣がいきなり攻めて来たのです。しかも、太古の魔獣『ターバ』というとんでもない力を秘めた魔獣が。」

「みんなは?他のみんなは?」

「ミート様、後でゆっくりお話します。今は逃げることを第一に考えてください!」

ヴァジールは、魔力で飛翔しながら城内をすいすい飛んでいく。

ガガッ・・・

目の前の柱が倒れてくる。

「危ない!!」

男の子が叫んだ。

「ミート様、目をつぶって!」

男の子が目を(つむ)ると、ヴァジールは持っていた杖を振りかざした。

「火炎球(ファイアーボール)!!」

 

ズガァァァァァァァァァァンンンッ!!

 

柱は粉砕され、その粉塵の中をヴァジールは突っ切る。

「もう大丈夫です、ミート様。」

飛びながらヴァジールはそう言った。

「ホント?」

言われるままに目を開ける。すごい速さで、城内をヴァジールが飛んでいるのがよくわかる。

もうすぐ出口のようだ。

「もうすぐですよ!飛ばします!!」

ギュンッ!!

さらに加速し、一気に城外へ出た。

「ミート様が救出されたぞ!!」

兵士が大声で叫ぶ。

「よし!あとは任せろ!あの怪物どもを殺るだけだ!!」

「見ていろよ!」

口々に兵士らが言いながら敵陣へと突っ込んでいく。

「抜け出せたね!ありがとう!」

男の子はヴァジールに言った。

ヴァジールはまだ飛びつづけている。このままでは森に入ってしまう。

「どこへ行くの?」

「・・・敵はあなた様を狙っているのです。」

「え?」

「ですから、私はあなたを安全なところまでお運びします。」

「どういうこと?ぼく、何も悪いことなどしてないよ。」

男の子はすっかりパニックになってしまった。父は魔獣と戦闘中、住んでいた場所は攻撃され、自分は敵に狙われているという。5歳の男の子にとって理解するのは難しい状況である。

ヴァジールは、包み隠さず全て話しておかなければならないと痛感した。

「わかりました。全てお話します。」

二人は森林の中へと姿を消した。

 

−3−

 

「なぜ貴様が今ごろになって・・・!」

ゾーズが剣を構えながら叫んだ。

『グハハハハ!!敵が襲撃するのに、いちいち連絡なんかしてられるかよ!俺は早く、不老不死になりたいのだ!

 貴様の息子のミートが、神竜の血を引いていることは調べ済みさ!』

ターバは高らかに笑いながら答えた。5mはありそうな巨体に目が6つ。長い手足に、全身から生えた剛毛が皮膚を完全にガードしている。おまけに魔法も効かない上に、向こうは強力な魔法、毒攻撃などを使ってくる強敵だ。

「なぜ、ミートの命を狙う!!」

怒りを堪えている為か、顔が紅潮していくのが自分でもわかる。

『だから、神竜の血が欲しいからだろうが!』

「俺も神竜の血を引いている!それに代々このエデンのドラグーン王家は、神竜の子孫が治めているのだ!血が欲しいのなら俺のを奪えばいいだろう!!」

『誰でもいいわけじゃねぇ、子供の頃の血がいいんだ。しかも、てめぇの息子は先祖返りかなんか知らんが、飛びっきりの力を持っている。その血なら不老不死も夢じゃない。』

「なんだと・・・・?ミートにそんな力が・・・」

ゾーズの体がわなわなと震える。

『俺は早く血が欲しいんだ。てめぇとなんかおしゃべりしてる暇はない。あばよ!』

ターバは踵を返して、森のほうへと向かった。

「待て!ミートは渡さんぞ!!」

ゾーズもあとを追った。

 

「ぼ・・・ぼくがしんりゅーの血を引いてる・・・!?」

全てを聞いた男の子はショックを隠せなかった。

「そうです。しかも、連中はあなたの生き血を狙っています。」

「な・・・なんで僕の血を狙うの?」

「神竜が、三種族の神によって作り出されたということはお父上から聞かれてますね?」

「うん。」

「神竜は、人間、魔族、竜族の全ての長所を持ち兼ね備えています。それが故に、神竜の血を引くものは姿形は人間とほぼ同一ですが、能力に関しては次元が違うほど上の力を持っています。それ故に、神はこの天空大陸エデンに住まわせたのです。人間に干渉せず、また偏らないように。」

「・・・・」

男の子は信じられなかった。自分がそのような存在であったことに。

いつしか無言でヴァジールの話を聞いていた。彼は話しながらもまだ凄いスピードで飛んでいる。

「エデンに住んでいる我々はエデン(びと)と呼ばれ、他の人間と違い魔力を持っています。これは神竜を守るために神が与えてくれた力なのです。普通の人間には魔力は存在しません。」

「うん・・・・。」

「ちょっと話がずれましたね。神竜の血についてでしたね。」

ヴァジールがにっこりと笑う。こんな緊急事態なのにも関わらず笑顔をくれる。男の子は少しその笑顔で安心した。

「神竜の血は、強力なエナジーを含んでいます。そもそも、エデン人が魔力をもてたのは、神竜の血を人間が飲んだからだと言われています。それが神が与えてくれた力です。私も飲みました。魔力をもてない人間が魔力を持つ。寿命の短い人間がこうして400年も生きている・・・。」

「え・・・?ってことは・・・?」

「そうです。私は、400歳です。」

「そ・・・そんな・・・」

「驚かれるのも無理はありません。私は、随分前の王が子供のとき、洗礼を受け血を飲みました。神竜の血を引く子供の血は、強力で1000人に1人、飲んでも死なないで生き残れるらしいのです。人間には強力すぎる麻薬のようなものですね。しかし、魔族は別です。奴らは生き残ってしまいます。私は運良く生き残ることができました。今まで無能だった私が、このように魔力を持ち、大神官としていられた。しかも何百年も生きていられる。」

「・・・」

男の子は自分の体の仲に、そんな恐ろしいものが流れているなんてすっかり怖くなってしまった。

「しかし、この効果は子供の血でしか効果はありません。18歳までの間に怪我やその血を奪われてはなりません。

 だから逃げるのです。地上に!」

「!!」

「地上の人間として暮らすのです。大丈夫。地上の人も優しい人が多い。私もすぐ後を追います。」

「ホントに?」

「ええ。ミート様を一人にはさせません。それに・・・危ない!!」

ヴァジールは咄嗟に危険を感じ、進路を変えた。

 

シュゴォォォォォォォォォォッ!!!

 

一瞬だった。さっきまで飛んでいた森の半分以上が炭化したのだ。凄まじい威力のエネルギー砲である。

「うわ・・・ウワァァァッ!!」

男の子はついに泣き出した。何がなんだかわからない。

『見つけたぜ・・・』

「た・・・ターバ!!!」

ヴァジールはすぐに男の子をマントの中に隠した。

『渡してもらおうか・・・』

「ぬかせ!渡すわけがないだろう!」

『ふん、エデン人ごときが俺に敵うと思うのか?なんなら力ずくでもいいんだぜ?』

明らかに形成不利だ。ヴァジールは死を覚悟した。

(なんとしてもミート様だけは、地上に連れて行かねば・・・)

『反応無しか・・・、じゃあ力ずくで・・・』

その時だった。

 

「神竜闘気砲(ドルオーラ)!!」

 

『グァァァァァァァァァァッ!!!』

神竜の技の中でも最強の部類に入る大技を食らったターバは流石に苦しんでいる。

「ヴァジール!!ミートを連れてさっさと行け!!」

「は・・・はい!ゾーズ様!!」

男の子は、ゾーズの額が輝いていることに気づいた。

「あれが神竜の血を引くものの証、“神竜の紋章”です。あの紋章が出ると、真の力が出されるのです。」

「神竜の紋章・・・。」

男の子はそうつぶやいた。

『お・・・おのれぇ・・・・』

ターバは目標をゾーズへと変えた。

「ミートには指一本触れさせんぞ!!」

『小賢しい!!捻りつぶしてやる!魔獣ターバ様を甘く見るなよ!!』

神竜対魔獣の戦いが始まった。

卓越した者同士の戦い・・・。

ヴァジールも男の子も呆然としてしまっている。

「ヴァジール!!!」

ゾーズに怒られてミートを連れて飛び出した。

『逃がすかよ!!』

空かさず、ターバが衝撃波を放った。

間一髪ヴァジールは避ける。

「貴様の相手はこの俺だといったろうが!!」

ガキィッ!!

ゾーズの刀が、ターバに刺さる!

『グハァッ!・・・やるな・・・』

「来い!!」

ゾーズは剣を構えた。

(くっ・・・この状況下では明らかに俺が不利だ・・・。さすがは神竜の血を引く者だ・・・。何とかしてコイツ引き離さねば・・・

 もしくは、今回は大人しく引き下がるか・・・)

ターバは決断のときを迎えていた。

「そっちが来ないのならこっちから行くぞ!!だぁーーーーッ!!」

ゾーズが勢いよく飛び出した!

その時だった。

ガサガサッ・・・

叢から人間が飛び出した。女の子だ。

「何か物音が・・・きゃあ!!!」

「何!?」

ゾーズは自分の進行方向に出てきた女の子に激突しかねない状況であったため急上昇した。

『しめた!!食らえ!!』

ターバは女の子に向かって火炎咆哮弾(ヒートブレイク)を放った。

「ちっ!!」

ゾーズは急降下し、女の子を抱きかかえると急上昇した。

『フハハハハ!戦いで気を取られるなぞまだまだ甘いぞ!!ゾーズ!息子の命は頂いた!!』

ターバは猛スピードでヴァジールを追撃した。

「くそ!!」

「あの・・・あの・・・・。」

女の子が申し訳なさそうにゾーズの腕の中で言った。

「君は悪くない、さぁ、お逃げ。」

ゾーズはそう言うと地上に降りた。

「あの・・・あたし・・・。」

「気にするな、俺はもう行く。早く逃げろ。」

「ありがとう・・・あたしあたし・・・。」

ゾーズはその女の子を降ろすと背を向けた。

「あたし嬉しくて・・・。」

ゾーズが飛ぼうとするときだった。

「あんたを殺しちゃうわ!!!!」

 

ズボォッ・・・・!!!!!

 

「がはっ・・・・」

女の子はグレートソードをゾーズに突き刺したのだ。

『ゲヒヒヒヒヒヒ・・・・、こんな手に落ちるとはなぁ・・・。神竜が聞いてあきれるワイ。』

「き・・・貴様・・・、死四天の妖魔士ナポリタンだな・・・グハァッ・・・」

『いかにも・・・。貴様も終わりだ。この世界は、我々魔族が頂く・・・。』

「くそぉ・・・!!ち・・・力が・・・」

『へヒヒヒヒ、その刀にはたぁ〜っぷり毒が塗ってあるからのぉ・・・じーわじ〜わと効くゾイ・・・』

ナポリタンは、しわだらけの緑色の顔をくしゃくしゃにして笑った。

「ぐぐぐ・・・」

ゾーズは力を入れるが入らない・・・。

『無駄無駄ぁ・・・今ごろもうミートはころりとやられてるだろうなぁ・・・くやしいか?ええ?悔しいか?』

濃霧陣!!(モアミスト)」

『ヒエッ!!』

至近距離でゾーズは煙幕代わりにモアミストを使った。そもそも姿を晦ます為ではなく、防火のための防御魔法を

パワーアップさせ、煙幕のようにしたのだ。

『ち!』

あたりを見回すが、ゾーズの姿は見えない。

取り逃がしたナポリタンではあったが、悔しさは顔には出ていない。

『まぁよい。どのみち奴の運命は決まっておる・・・。』

 

『追いついたぜ!!』

ターバはヴァジール達にものの数秒で追いついてしまった。

「な・・・なんてスピードだ・・・。」

ヴァジール達には逃げる時間が十分にあった。なのにもかかわらず、ここまであっさりと追いつくのは・・・。

巨体からは想像もできないほどの鋭敏さである。

「ゾ・・・ゾーズ様はどうした!?」

『ふん、あんな間抜け野郎が国を治めているなんてな。終わってるぜ。』

「質問に答えろ!!」

『知ったことか。さぁ!ミートをよこしな!!』

凄い剣幕でターバは言い放つ。

「く・・・ゾーズ様も・・・この世は終わりだ・・・。」

『そうだ!終わりなんだよ!これから魔族の時代がやってくるんだ!!』

「こんなことして神が黙っていると思うなよ!」

『何が神だ!俺が不老不死になればそんなものつぶしてやんぜ!!』

「なんということだ・・・。」

ヴァジールは言葉も続かない。

しかし、これだけは確信していた。ミートさえ捕まらなければ、最悪の事態だけは免れる。うまくミートが成長し、先祖返りしたその

力を引き出せれば、こいつを、この悪しき計画を断ち切れるのかもしれない。可能性は限りなくゼロに等しいが・・・・。

『観念したようだな・・・ならば死ねぃ!!』

「神よ!!我を救いたまえ!!」

ヴァジールが叫んだ!!男の子も叫んだ!!

「神様!!」

『神などおらんわ!!』

ターバが最期の一撃を繰り出したときだった。

 

カァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!

 

突然、眩い閃光が迸る!!

『グァァァァァァァァッ!!ち・・・力ガァッ!!!』

ターバの力が吸い取られている!!そのエナジーは青白い光となってある場所に流れ込む。

男の子のお守りにである。

「な・・・何コレ?」

男の子にはさっぱりであるが、ヴァジールは驚愕している。

『グァァッ!このガキィ・・・・』

ターバが酷く苦しんでいる。随分とダメージを受けたらしい。魔族は精神世界に存在するため、実体はここにはない。物理攻撃

は効かないといってもよい。特殊な武器以外は。

これはチャンスである。

その時、ちょうどゾーズが追いついた。怪我をしている。

「ゾーズ様!!」

「これは・・・ウグッ・・・どういうことだ・・・?」

「実は・・・」

ヴァジールは簡単に流れを説明した。

「なるほど・・・、今弱っているのだな・・・。」

「でも我々の適う相手ではありません!」

「ミートを・・・」

ゾーズは男の子を抱きかかえた。

「ゾーズ様・・・何を・・・?」

「ヴァジール、ミートを頼んだぞ。ミート、ヴァジールの言うことを聞くんだぞ。」

「お父さん?」

「むん!!」

ゾーズは男の子の首に手刀をいれ気絶させた。

ヴァジールにはこれから何が起こるかわかっていた。涙が止まらなかった。

「記憶を封印させる・・・。」

ゾーズはそう言うなり、紋章で輝く額に男の子の額をつけた。

綺麗な、そしてどこかもの悲しげな光が辺りをつつむ。

「ミートを頼んだぞ・・・。」

「ゾーズ様ぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

ゾーズはターバに向かっていった。

後日、ヴァジールはルササ火山に流れ星が消えていった噂を耳にする。

ゾーズ最期の時も、男の子は眠ったままであった。

二人は、地上へと降りてゆく・・・。

物語はここから始まる。11年の時を経て・・・・。