『誕生 〜born to be WILD〜』
登場人物
藤本隆(31) 夫
藤本靖子(28) 妻
助産婦(33)
○分娩室
分娩台に寝ている靖子、今まさに小さな生命が誕生しようとしている.
その横、靖子の手を握り励ましている隆.
助産婦 「藤本さん、がんばてください.もう少しですよ.」
靖子 「んー、んー.」
隆 「がんばれー、靖子.ヒー、ヒー、ヒー」
助産婦 「旦那さん、ヒー、ヒー、フーです.」
隆 「あー.フーでした.フーでした.緊張してまして.」
靖子 「んー、んー.」
隆 「ヒー、ヒー、ヒー、フー」
助産婦 「旦那さん、ヒーが一回多いです.」
助産婦 「藤本さん、さあ、顔がでてきましたよ、もうすこしですよ.」
靖子 「んー、んー.」
助産婦 「はーい、産まれましたよ.」
助産婦、赤ちゃんを抱き上げ、顔を両親の方へむける.
助産婦 「元気な男の子ですよ.」
隆、靖子、満面の笑みで赤ちゃんを見つめる.
赤ちゃん 「まいど!」
赤ちゃん、産まれたての親父顔(宮川大助(顔大)).
隆、靖子、驚きのあまり、キョトンとしている.
赤ちゃん 「何や、何や、その鳩が豆鉄砲くらったような顔は?
ま、ええわ.しかし、長いねん!長いねん!!
もっと、こう、スポーンっていかんか?ほんまに」
靖子 「す、すいません」
赤ちゃん 「わかればええねん、わかれば.」
(間)
赤ちゃん 「改めまして、こんにちは.
(ヤングオーオーのようにマイクを突き出すマネをして)ハッピー?」
隆 「・・・.」
赤ちゃん 「(もう一度うながすように)ハッピー?」
隆 「(親指をたて)ハ、ハッピー.」
赤ちゃん 「(今度は靖子のほうに)ハッピー?」
靖子 「(親指をたて)ハッピー!」
赤ちゃん、助産婦の方を向く.
助産婦、右手のをあげ、親指を立てて待っている.口は『ハ』の口
赤ちゃん「お前はええわ」
助産婦、やり場のない右手を左手で隠すようにおろす.
赤ちゃん、隆の方をみる
赤ちゃん 「自分がパパか?」
隆 「え?」
赤ちゃん 「われがパパか、聞いてんねん」
隆 「は、はい、一応」
赤ちゃん 「何や、その一応いうのは.おのれの種子で宿したんちゃうんか?」
隆 「そ、そうです.間違い無く、パパです.」
赤ちゃん 「しかし、あれやな、ママよ、ええんかこれで?」
靖子 「これ?」
赤ちゃん 「これやん、これ(隆の頭を指差す).ないやん、髪の毛、はげやん
ありえへん、遺伝するやん、一子相伝やん」
助産婦 「北斗神拳かい!」
靖子 「結婚する前はあったから・・・.私もこんなつもりじゃなかったし、
騙されたっていうか・・・」
隆 「騙されたって!」
赤ちゃん 「私のためにけんかはやめて!2人を止めて!!(悲劇のヒロインぶって)」
助産婦 「河合奈保子かい!」
隆、赤ちゃんに向かい、
隆 「っていうか、何なんだよ!」
赤ちゃん 「おいおい、逆ギレかい?」
隆 「っていうか、何歳だよ!」
赤ちゃん 「んー、かれこれ生後5分くらい?(無い腕時計みながら)」
助産婦 「時計ないじゃん」
赤ちゃん 「何、何、もしや、疑ってる?
ほれほれ、首も座ってへんし.(首をたてようとするが、
すぐに折れてしまう.)」
隆、複雑な表情.
赤ちゃん 「そうか、わかった.わし、そろそろいくわ、
なんか歓迎されてへんみたいやし.」
赤ちゃん、自分で歩こうとする.首はすぐに折れる.
靖子 「待ちなさい!どこ行くの!」
赤ちゃん振り返りながら、
赤ちゃん 「なんやかんやいうても、やっぱり産みの親やな.
こんなわしでも、育ててくれるんか.」
靖子 「(『んか』にかぶすように)へそのをきってからいってよね、
きしょいから.」
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