『HOLY NIGHT BEAR』
街路樹に灯りがついて
今夜だけは、誰も彼も、嬉しそうに歩く
車のテールランプが、
ケーキのキャンドルみたいにきれい
天気予報は言ってた
ホワイトクリスマスになるかも知れないって
左耳には、ピンクのパールの、小さなピアス
白いセーター、白いコート、吐く息だって白い
今夜の私も...ホワイトクリスマス
「はぁ〜、もうすぐもうすぐ」
きっと君は...走ってくる
白い息を吐きながら、額に汗を浮かべて
遠くからでも分かる、君の姿、
背が高いから、私はいつも背伸びをして、
君と目を合わせてた
きっと今日も....
「あっ..」
やっぱりそう!..人混みをかき分けるように、
ぶつかった人に、謝りながら....君が来た
ジーンズはちょっと...くたびれてるけど
不思議な熊が、蜂蜜舐めてる柄のグリーンの
セーターは、すっごく似合ってる....
本当に、不思議な熊だけど...
グレーのダッフルコートを振り乱して、
今日も君は、10分遅れてやって来た
「大丈夫、私も今来たところだから」
ウソなのは、二人とも解ってる
苦笑いする君の隣に、すぐに滑り込む
そこは..私の場所
世界で一番好きな....私の場所
「ねえ、今夜雪が降るかもよ」
そう..雪が降ったらイイナ..
二人で歩く道に、白い雪が積もったら
どんなに素敵だろう....
そこを二人の足跡が、どんどん付いて
それを隠すように、また雪が降って..
一人で、そんなことを想ってる私の顔を
君が不思議そうに覗き込む
「ん?...あっ、そうだ!今夜はね〜、
私からプレゼントがあるんだ
ねぇ、お店が開いてる時間に行こうよ」
そう、今夜は、二人で過ごす初めてのイヴは
私から、君に、何か贈りたいって思ってた
そして探し出したの、君にピッタリな物を
私は君の腕を取って、どんどん歩く
君は、不思議そうに、私の後をついてくる
そう..こんなの初めてだもん
私は、いつも君の後をついてばかり
君は、コンパスが長いから、
ついて行くのが精一杯
でも....今夜だけは、私が最初
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「ねえ知ってる?..うわさがあるの
今年のクリスマスは、二千年に一度のサンタさんが
やって来るんだって、
そして、そのサンタさんに逢ったら、
すっごく幸せになれるんだって
何処でどんな格好しているかはわからないんだけど
逢った人には、ちゃんとわかるんだって」
歩きながら、私はそんなことを言う
そんなうわさ、ウソかも知れないけど
でもステキ!..ホントかも知れないって
思ったらイイよね
そして、私たちは着いた
ビルの隙間に、ちょこっと建てられた
小さな小さな雑貨屋さん
木の扉の脇には、大きなショーウインド
小さなツリーと、手書きの文字は"Merry Christmas"
そして、小さなリリースに座った....
「ね、似てるでしょ、こーれそっくりだよね〜」
そこにあったのは君のセーターに
編み込まれた不思議な熊
セーターから抜け出したみたいにそっくり
リリースに座って、通りを眺めているその目は、
本当に君みたいで、私は一目で気に入ったの...
私は、君を置いて、すぐにお店に入る
でも....
「売り切れちゃったんだって...
さっき、最後のひとつが、売れちゃったって」
まるでサンタさんみたいなおじいさんが
すまなそうに、そう言った
泣きそう、顔を上げると、涙が出そうで
私は、下ばかり見ていた
そこに....
「えっ..」
そこに、ひらひらぁって..ひらひらって....雪
そう、雪が降ってきた
「ねえ..雪だよ、ゆ」
そう顔を上げた瞬間、私はぐるんと包まれた
君が、ダッフルを開けて、私をぐるんと中に入れた
あったかい、君の中...
「ねえ、ん?」
君が腕に力を入れる
私の鼻の先で、熊が蜂蜜を舐めてる
私が、プレゼントしようと思ってた....熊
涙が出た
「ねえ、信じないかも知れないけど、その熊、
私にウインクしたんだよ」
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