**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 第10号          発行日 10月30日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 今週はスパイものを紹介します。 【プリンス・マルコ・シリーズ ニカラグアの十字軍】 創元推理文庫 (Croisade A Managua) 著 者:ジェラール・ド・ヴィリエ(Gerard de Villiers) 訳 者:秋本 紀夫(あきもとのりお) 出版社:東京創元社 初 版:1982年2月26日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫中表紙より引用 中央アメリカのニカラグア共和国大統領ソモサは、積極的な協力を惜しまない 親米派だった。しかし、いまやソモサ政権は完全に国民の信頼を失っており、 反政府組織のサンディニスタ民族解放戦線が勢力をのばしていた。このままで は、第二のキューバが誕生しかねないと、CIAはソモサ大統領追放作戦を展開し はじめたが、作戦に参加していた女性が失踪した。CIA超大物工作員の娘だ。彼 女の捜索がマルコの今回の任務だった。横暴をきわめるニカラグア国家警備隊 と、マルコはどこまで太刀打ちできるのか? ---------------------------------------------------------------------- 米国版ジェームズ・ボンドとも言えるプリンス・マルコ・シリーズ。 マルコはオーストリアの貴族なのですが、CIAの特務諜報員として世界各地で活 躍します。ギャラはオーストリアの自分のお城の維持費に消えていくようです。 プリンス・マルコ・シリーズは実はもう4冊目を読んでいるのですが、大体傾 向はつかめました。いわゆる、暴力とお色気がほどよくミックスされた典型的 なスパイもの娯楽小説です。 オープニングは美人が無残に殺され、悪の限りがつくされる。「ゆるせない!」 と読者は一気にその世界に引き込まれます。次にマルコが登場し、事件のあった 地への任務につきます。数々の陰謀、暴力、それに立ち向うマルコ。物語は一気 にクライマックスへ...。冷静に分析すると、結構パターン化されていること がわかります。 ラストはハッピーエンドとは限りません。ジェームズ・ボンドの場合、ラストは ボンド・ガールとよろしくやって「めでたしめでたし」というパターンが多いで すが、マルコの場合、何かスパイのやるせなさというか、割と後に尾を引く終り 方が多いです。諸悪の根元を断切ることができずに、マルコが生還して終りとい うのもあります。 でも、ストーリーがよく練られているので、ボンド・シリーズのようにどんどん 話に引込まれ、一気に読み進めていくことができます。 さて、肝心の本の内容ですが、舞台はニカラグア。マルコはニカラグア大統領 追放作戦中に行方不明になったCIA女性工作員の行方を捜しにやってきます。女性 工作員を拉致した当の国家警備隊はマルコに冷たく、捜査に協力しようとしませ ん。一方で反政府組織サンディニスタはマルコを脅し、大統領暗殺に協力させよ うとします。ニカラグア政府と反政府組織の間で葛藤するマルコ。どちらにつく べきか...。 この作品は、1978年に実際にニカラグアで起きた国家宮殿占拠事件をヒントにし て作られたもののようです。とはいえ、「そんな20年も前のこと知るかい!」 というのが私の正直な気持ですが、それを差引かなくとも、面白い物語でした。 ---------------------------------------------------------------------- 【プリンス・マルコ・シリーズ アブダビ王宮の陰謀】 創元推理文庫 (Carnage A Abu Dhabi) 著 者:ジェラール・ド・ヴィリエ(Gerard de Villiers) 訳 者:三輪 秀彦(みわひでひこ) 出版社:東京創元社 初 版:1983年2月4日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 石油とラクダの国アラブ首長国連邦のアブダビで、イギリスMI5の女性スパイ二 人が惨殺された。なぜ? だれに? CIAは、KGBがアブダビの首長シェイク・ザイ ドの一族の一人と手を組み何かを企んでいるという情報をつかんだ。 西側陣営に大打撃を与えるような何かを。 殺された二人はいったい何を見たのだろうか。彼女たちが潜入していたのは、 ザイドのいとこラシドの王宮だ。しかしこの男は、金と女に目がないだけの文盲 近い男だ。政治的野心などひとかけらもない。マルコが探り出した大陰謀とは? ---------------------------------------------------------------------- この本の中では、アラブの王族たちは禁止されている飲酒をしたり、やたら女性 と寝たり、かなりの乱交ぶりが描写されていますが、これは現実にそぐわない、 誇張した演出のようです。 冒頭で女性スパイ二人が惨殺されてしまうシーンの描写は強烈です。 ラストも強烈でした。 アラブを誤解してないか?と思わず作者に問い掛けたくなるほど、アラブの王族 は野蛮人のようの描写されていますが、物語としては実に効果的です。 プリンス・マルコ・シリーズは昔の本なので古本屋さんでないと入手が難しいか も知れませんが、ジェームズ・ボンドが好きな方なら特にお勧めです。 では、また来週、お会いしましょう。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 第10号    発行日 10月30日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション *** HP制作中です。 *** **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------