**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 第17号          発行日 12月18日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 今週は医学もの2作品を紹介します。 【有毒地帯(CRITICAL JUDGMENT)】上下巻 ハヤカワ文庫 著 者:マイクル・パーマー(Michael Palmer) 訳 者:川副 智子(かわぞえともこ) 出版社:早川書房 初 版:1998年7月31日 原作は1996年 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 次々と急患が運び込まれるペイシェンス地域病院の救急治療科。そこに勤める 女医アビーにとって、毎日が目のまわるほどの忙しさと緊張の連続だった。ア ビーがこのカリフォルニアの田舎町にきたのは、恋人のジョシュが巨大企業コ ルスターの工場に再就職したためだ。しかしコルスターに勤務するようになっ てから、ジョシュは原因不明の頭痛や倦怠感を訴え、ふさぎこむようになった ……『沈黙の病棟』につづく医学サスペンス ---------------------------------------------------------------------- つい最近リリースされた作品です。 下巻の文庫カバーのあらすじに「ロビン・クックに比肩するベストセラー作家」 とあったので興味を持ちました。 主人公である女医アビーが勤めるのは救急治療科。最近はドキュメンタリー特 別番組等で救急医療の現場が伝えられていますように、非常に大変な仕事です。 救急医療の医師は、一刻を争う状況の患者が運び込まれてきた場合、迅速な救 急処置をとり、危機的状況から患者を救わなければなりません。この際、どの ような処置をすれば、患者が救えられるか、危機的局面における判断が必要と されます。この「危機的局面における判断」こそが原題であるCRITICAL JUDG- MENTなわけです。本作品ではこのような救急医療の現場のリアルな描写だけで も十分に楽しめますが、女医アビーの人間性がよく書き込まれている点も見逃 せません。医者だって人間であり、悩みもあれば恋もする。まぁ、当り前のこ となんですが、それが書込まれていることによって、より、医療現場での、危 機的局面における判断の描写が生きてきます。 さらに、アビーの勤める病院には、原因不明の頭痛や倦怠感を訴える患者が次 々と運び込まれてきます。サスペンスの世界です。 「巨大企業コルスターがどうもあやしい」ということで、私は最初、環境汚染 かなにかが原因だろうと読んでいたのですが、実に意外な原因でした。 それはちょっと思い付かないと思います。 ただ、あまり現実的ではないようなものでした。ネタばらしになるのでこれ以 上書きませんが、「ちょっと強引だなぁ」と思った次第です。 とは言え、十分に楽しめる作品でした。 ---------------------------------------------------------------------- 【フィーバー 発熱(FEVER)】ハヤカワ文庫 著 者:ロビン・クック(Robin Cook) 訳 者:林 克己(はやしかつみ) 出版社:早川書房 初 版:1991年9月15日 原作は1982年 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 癌の免疫療法を研究する医師チャールズは、愛娘ミシェルが血液の癌−−急性 白血病に冒されていると宣告された。絶望のあまり彼は半狂乱になるが、自宅 近くの池の異臭に気づき、恐るべき事実を発見した。川の上流にある工場がた れ流した有毒物質が、ミシェルの体を蝕んだのだ! チャールズは工場を閉鎖 させようと孤独な闘いを挑む一方で、自らの手で娘の生命を救うために最後の 手段にでるが……。社会派医学サスペンス! ---------------------------------------------------------------------- 医学ものの巨匠、ロビン・クックの作品です。 作品の冒頭で、ベンゼンが原因で骨髄細胞が傷付けられ、白血病になっていく くだりの描写がありますが、読んでいてちょっと恐かったです。 化学の授業で習った覚えがありますが、染料、香料、ガソリン等に含まれてい る身近な化学物質です。 私は医学にはうといので、ベンゼンで本当に白血病になるのかどうかは知りま せん。なにかの機会に白血病について調べてみたいと思いました。 さて、作品の内容ですが、設定が巧みです。妻を9年前に亡くし、忍の一字で 3人の子供を育ててきたチャールズ。2年前に再婚を果し、経済的に苦しくと も幸せな生活を営いた...。ところが愛娘ミシェルの体調がここ最近良くな い。もう4週間も発熱が続いている。質の悪い風邪だと思い、後妻のキャスリ ンはミシェルを病院に診察に連れて行く。診察の結果、驚くことにミシェルは 骨髄性の白血病だった。絶望に打ちひしがれるチャールズ。普通の父親ならば 医者にすべてを託し、娘の回復を願うしかないのだが、チャールズはなんと、 癌の免疫療法の研究者だった。通常の白血病の治療では、薬の副作用により、 患者に多くの負担をかけてしまい、また骨髄性の白血病は生還の見込がなく絶 望的と理解しているチャールズは、ミシェルを救うため、自分の長年の研究を 急ぐ。一方で、ベンゼンを川に垂れ流した工場に対し、即時操業停止を求め活 動する。しかし、自分の研究所や工場からはさまざまな圧力がかかってくる。 実に行動力のある父親で、とても感動的です。 家族とは愛とは何か考えさせられました。 さすが、ロビン・クックと唸らせる素晴らしい作品です。 では、また来週、お会いしましょう。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 第17号    発行日 12月18日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション 週間【外国小説寸評】ホームページ http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/3407/index.html **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------