**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 第20号          発行日 1月8日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 今週よりレギュラースケジュールに戻ります。 さて、今週も2作品を紹介します。 【ザ・ポエット(THE POET)】扶桑社ミステリー 著 者:マイクル・コナリー(Michael Connelly) 訳 者:古沢 嘉通(ふるさわよしみち) 出版社:株式会社 扶桑社 初 版:1997年10月30日 原作は1996年 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 デンヴァー市警察殺人課の刑事ショーン・マカヴォイが変死した。自殺とされ た兄の死に疑問を抱いた双子の弟で新聞記者であるジャックは、最近全米各地 で同様に殺人課の刑事が変死していることをつきとめる。FBIは謎の連続殺 人犯を<詩人>(ザ・ポエット)と名付けた。犯人は、現場にかならず文豪エ ドガー・アラン・ポオの詩の一節を書き残していたからだ。FBIに同行を許 されたジャックは、捜査官たちとともに正体不明の犯人を追う……。エドガー 賞受賞の鬼才、マイクル・コナリーが犯罪小説の極北に挑む野心作! ---------------------------------------------------------------------- 作者のマイクル・コナリーは元ロサンジェルス・タイムズ紙の新聞記者です。 本作品はそのときの経験を基にして、新聞記者であるジャックが主人公として 活躍します。 ジャックは普段、他人の死について第三者として取材をし、記事を書く立場の 人間でした。「私は死によって生計を立てている。死をあつかうコツは一歩離 れた距離を保つことである。」とは彼の弁です。 しかし、双子の兄の死を刑事から知らされたとき、彼は一歩離れた距離を保つ ことは到底できませんでした。彼は冷たい無感覚にとらわれました。 肉親の死を知らされ、死因が拳銃による自殺とくれば、なおさらです。 なかなかヘヴィーな出だしです。ストーリーが進むにつれ双子の兄弟の辛い過 去が次第に明らかにされ、鬱々とした雰囲気がしばらく続きます。 作品の中でこのあたりは、やや気分がだれるところで、夜、寝る前に本作品を 読んでいた私は、やたら寝付きが良かったことを覚えています(笑)。 しかし、ジャックが兄の死を受け入れ、兄の記事を書くことを決心し、関係者 に取材をすすめていくうちに、どうも符に落ちない点を見つけ出すくだりから 物語は一気に面白くなってきます。 最初の読みどころは、当初自殺と見られていた、兄の死が、実は他殺だったと 立証していくくだりです。 次の読みどころは、ジャックの取材過程でFBIが登場し、激しい駆け引きの 結果、ついにジャックがFBIに同行する許可を得るくだりです。 さらに、次の読みどころは、幼児の写真を撮る怪しい男、グラッデンが警察の 追求を逃れるシーンです。結局は捕まってしまうのですが、捕まる前にデジタ ルカメラで撮影した画像データを消去し、証拠を隠滅してしまうところなどが 現在のマルチメディア時代を象徴する描写で、なかなか説得力があります。 以後、証拠を一つずつ積み重ねていくことで、次第に犯人を特定し追いつめて いく過程はスリリングで、息をつく暇もありません。下巻に入ってからは要注 意です。寝る前に下巻を読み始めてからは、一気にラストまで読んでしまいま した。気がつくと空は明るくなりはじめて...。 ---------------------------------------------------------------------- 【マンハッタン殲滅計画(OTTO'S BOY)】二見書房 著 者:ウォルター・ウェイジャー(Walter Wager) 訳 者:広瀬 順弘(ひろせまさひろ) 出版社:二見書房 初 版:昭和61年12月30日 原作は1985年 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 地下鉄がホームに到着すると、4両めの乗客117名は全員息絶えていた! 死因は神経ガス。数日前、O・Bと名乗る男からニューヨーク市長宛てに送られ た犯行予告状が現実と化したのだ。市警きっての辣腕ブルーム警部補は、美貌 の女性精神科医の協力を得て犯人を追う。が、軍部やFBIの思惑がからみ合 い、捜査は難航。折りしも、O・Bが第二の大量殺戮に踏みきった! 未曾有の 大犯罪を緊迫感あふれるタッチで描く衝撃のサスペンス巨篇! ---------------------------------------------------------------------- 私はあらすじだけ見て、これは面白そうだ、と判断して購入してくるのですが 最初、欧米の作家が、東京の地下鉄サリン事件をヒントにこの作品を書き上げ たものだとばかり思っていました。しかし、読み終わって初版日付を見るなり 非常に驚きました。地下鉄サリン事件よりずっと前です。 今では、この作品こそが、あの事件のヒントになったのではないか?と私は思っ ています。 さて、犯人であるOTTO'S BOY(オットーの息子)ことエルンスト・ヘンケは父 親でナチ親衛隊のオットー・ヘンケが戦後、戦犯として告発され、獄中で死ん だことから、アメリカに対して復讐を誓います。 その復讐の第一の行動が神経ガスによる地下鉄への攻撃です。 周到に計画し、父や母のいいつけを守り、禁欲的な生活を営むオットーの息子 の生き様は、犯罪者ではあるけれども、そこに何かストイックな美学というか 惹きつけられるものがあります。 オットーの息子を追う側のブルーム警部補ですが、主役を少々オットーの息子 に食われているようです。あまり印象に残らないですね。追うのは別に彼でな くても誰でもよかったように思えてしまいます。 ラストは意外とあっけないのが残念です。 この作品は犯罪の計画から実行にいたるまでの過程が読みどころだと思います。 映画に例えるならB級作品でしょう。 では、また来週、お会いしましょう。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 第20号    発行日 1月8日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション 週間【外国小説寸評】ホームページ http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/3407/index.html **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------