**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 第22号          発行日 1月22日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 さて、今週も2作品を紹介します。 【新版 大統領に知らせますか?】新潮文庫 (SHALL WE TELL THE PRESIDENT ?) 著 者:ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Archer) 訳 者:永井 淳(ながいじゅん) 出版社:株式会社 新潮社 初 版:昭和62年9月25日 原作は1977年 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 FBIワシントン支局は、大統領暗殺の情報を得た。犯人は、米国初の女性大 統領念願の銃砲所持規制法案の成立に反対する者たちか? 黒幕の存在を察したFBIは現行犯逮捕をめざし、極秘の捜査を開始した。 その直後、捜査官は情報提供者と上司と親友の同僚を失った。決行の日まであ と一週間、捜査は一向に進展しない−−−時代をさらに未来に移し、きめこま かに書きかえた改訂版。 ---------------------------------------------------------------------- 職場の同僚にジェフリー・アーチャーを薦められて読んでみた一冊。 物語は米国初の女性大統領が聖書に片手をのせたまま、宣誓をするシーンで始 まります。大統領となるまでの経緯が説明され、大統領としての執務の様子が 紹介されます。女性大統領がどんな活躍をするのだろう、と期待して読み進め ていくと、いきなり話は2年後、しかもFBIワシントン支局のシーンに飛ん でしまいました。 ちょいと期待を裏切られた感じがして、しばらく考えてみると、作品のタイト ル「大統領に知らせますか?」を思い出しました。なるほど、大統領が主役で はなくて、大統領に知らせるべきかどうか判断を仰ぐ人が主役なんだな、と。 で、FBIワシントン支局のシーンに話は戻ります。 FBIの最年少の支局長であるニック・ステームズが紹介されます。 こいつは仕事はできるし、家庭も大事にしてるというスーパーマン。今日は特 別に早く帰って妻を喜ばせようと秘書に「わたしはもう帰るよ」と伝え、部屋 の外に片足を踏み出したところ、首都警察からの専用電話のベルの音が..。 「いや、いいんだよ、わたしが出る」 相手先の首都警察のブレイク警部補によればFBIの長官に会いたいという情 報提供者がいるらしいとのこと。長官に会いたいなどという頭のおかしい連中 のいたずらはしょっちゅうだが、話をさらに聞いてみると、その情報提供者は 銃で撃たれて病院に入院しているらしい。 ニックは誰か調べに行かせると伝え電話を切ります。刑事部長のグラントを呼 び、その旨伝えると、これから自宅へ帰るが、なにかあったら自宅へ連絡を頼 む、と言い、部屋を出て行きます。 <渋いぞ、ニック(笑)。> グラント刑事部長は捜査官2名を呼び、病院へ調べに行かせます。 情報提供者の話によると、どうも大統領暗殺の陰謀があるらしい、黒幕は上院 議員らしいと部下からの報告を自宅で受け、ニックは食べかけの夕食はそのま まに、再び支局へ戻ります。 <渋いぞ、ニック!> 支局に戻ったニックは、部下達に捜査の指示を次々と出します。万が一のため にFBI長官とのアポもとっておきます。 <さすがだな、ニック!> 部下の一人に自分を自宅まで送ってくれと頼み、一方、もう一人の捜査官には もう一度病院に行くよう指示を出します。 病院に行った捜査官は、そこで情報提供者が殺されているのを発見します。 一方、自宅へと戻る途中のニックと捜査官の車に一台の黒塗りのリンカーンが ぶつかり、二台の車はそのままポトマック川へ落ちてしまいます。 <ちょっと待て! 主役のニックが死んじまってどうするんだ!> そう、主役はニックではなかったのです。本当の主役は病院に行った捜査官の マークでした。 大統領の話の後40ページ近くも使って、てっきり主役と思っていたニックを 殺すなんて、そりゃないだろ〜、って感じです(苦笑)。 以後は捜査官のマークが大活躍します。読みどころは、黒幕である議員を特定 していく捜査の過程と、マークのラブロマンスでしょうか。 冒頭の大統領の話と、ニックの話は、私の期待を見事に裏切ったということで 面白かったです。 一点だけ、難癖をつけさせてもらえれば、普通、一流のプロの暗殺者なら、い ちいち自分の暗殺手口について黒幕(クライアント)に説明しないだろうとい うことでしょうか。 読者にわかりやすく説明しようとしてるのでしょうが、もうちょっと他にやり ようはなかったのかな、と感じました。 なにはともあれ、非常に楽しめた一冊でした。 ---------------------------------------------------------------------- 【ミラージュを盗め(MIRAGE)】二見文庫 著 者:ジェイムズ・フォレット(James Follett) 訳 者:田中 昌太郎(たなかしょうたろう) 出版社:二見書房 初 版:1989年7月25日 原作は1988年 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 1960年代後半、イスラエル空軍は存亡の危機に直面した。フランスの武器輸出 禁止措置により、超音速戦闘機ミラージュの入手が不可能となったのだ。足を 負傷して空軍から除籍されていたダニエルは、この知らせを聞いて遠大な計画 を立案する。総計数十万枚ものミラージュの設計図をすべて盗みだそうという のだ。イスラエル、フランス、スイスを結ぶ決死の作戦の成否は? 史実に基 づき壮大なスケールで描きあげた波瀾万丈の冒険ロマン。 ---------------------------------------------------------------------- この作品はイスラエルの情報機関「モサド」が実際に行った作戦をモデルとし た小説です。 今日でもイスラエルやシリアを始めとする中東問題はマスコミで大きく扱われ ていますが、この本を読むまでは、イスラエルの建国の歴史について私はほと んど何も知りませんでした。 戦争中の国家において、主力戦闘機の供給が無くなるというのは致命的です。 フランスがイスラエルに対してやったのがこれです。 すでに、ミラージュの現物があるのだから、その部品を模倣して生産すればよ いのではという考えがありますが、オリジナルに匹敵する性能を出すためには 部品の加工精度だけではなく耐久性が重要で、これはまさしく工業生産技術の ノウハウです。こういったノウハウはオリジナルの設計図に事細かく書かれて いるのです。 それなら、他の戦闘機でもいいのではという考えもありますが、時代は超音速、 速度の遅い戦闘機ではつぎつぎに撃墜されてしまいます。超音速戦闘機といえ ば、種類は限られてきます。米国にはF4ファントムがありましたが、イスラ エルへの輸出はしないとのこと。仮に優秀な超音速戦闘機が入手できたとして も、ミラージュのパイロットや整備体制を新しい戦闘機に変更するというよう な時間的余裕はありません。 というわけで、残された手段は、ミラージュの設計図を盗むことで、生産ノウ ハウを得、イスラエルでミラージュを生産するしかありません。 本作品ではイスラエル建国の歴史と、ミラージュの設計図を盗むまでのスリル とサスペンスが楽しめます。 560ページもの長編ですが、最後まで飽きることなく楽しめました。 では、また来週、お会いしましょう。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 第22号    発行日 1月22日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション 週間【外国小説寸評】ホームページ http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/3407/index.html **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------