**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 第5号          発行日 9月25日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 最近、刑事コロンボに凝ってます。 ということで、今週はけ維持コロンボの2作品ご紹介します。 【忘れられた女(FORGOTTEN LADY)】 二見文庫 著 者:W・リンク(William Link)/R・レビンソン(Richard Levinson) 訳 者:野村 光由(のむらみつよし) 出版社:二見書房 初 版:昭和63年7月30日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 ロス郊外のマリブ・ビーチ、往年のアカデミー女優の豪邸で一発の銃声が轟 いた。夫の医学博士は密室のベッドに横たわり、銃を手にしてみずからの頭を 撃ち抜いていた。捜査にあたったコロンボは、ミュージカル界へのカムバック を夢見つづける未亡人に疑惑を抱く。事件当初、書斎で上映されていた懐かし の名画−そのフィルムの裏に隠された謎とは? ---------------------------------------------------------------------- 刑事コロンボの最大の特長は、「犯人は誰か?」を推理してゆく一般的な推理 小説とは違い、初めから犯人が登場し、犯行の手口も読者に知らせた上で、一 つ一つ証拠をかためていって犯人を追いつめていく広辞苑の言葉を借りれば 「倒叙(とうじょ)推理小説」と呼ぶ形式であることです。 一般的な推理小説では読者は警察関係者もしくは探偵といった、いわゆる事件 を推理し犯人をつきとめる側なのに対し、刑事コロンボでは、読者は犯人の側 つまりいかにして警察の追求を逃れるかという視点に置かれることが従来の推 理小説にはない面白さとなっているのだと思います。 さてそんな刑事コロンボですが、今回ご紹介するのは1976年の作品です。 倒叙推理小説に許される特権として、犯人をご紹介しましょう。犯人は往年の アカデミー女優です。殺人の動機は自分がミュージカル界へカムバックするた めの資金として夫の遺産を手に入れたかったというもの。 アカデミー女優は夫を自殺に見せかけるために夫を睡眠薬で眠らせた後、銃を 握らせ、こめかみに向けて発射させます。近くに医師の診断書を置いて、病気 を苦に自殺した、と見せかける念の入れようです。 現場に駆けつけた刑事たちが現場の状況から早々と「自殺」という結論を出す のに対し、コロンボは「豪邸に住むような老人が病気を苦に自殺するというの は不自然だ」と、殺人の疑いを持ちます。まずは現場の第一発見者である執事 から事情聴取します。コロンボは普段車の中にあるハズの拳銃が現場である寝 室にあるという点で、死んでしまった医学博士がわざわざガレージまで銃を取 りに行ったという現場の状況から判断される一般的な推理の矛盾点について執 事に意見を聞きます。執事は、コロンボが言う通り、たしかにおかしいという 反応をします。コロンボが犯人を特定していくテクニックの一つとして、矛盾 点を指摘してみて相手の反応を見る、というのがあります。矛盾を矛盾として 受け入れればよし、なんとか矛盾をなくそうと推理の補足説明をする奴がクサ イというわけです。このテクニックで犯人の目星がついた後は、事ある毎に犯 人を訪問し、さまざまな証拠をぶつけていって、犯人の出方を見ます。 こうなると犯人は、しつこいコロンボを嫌がって、コロンボの相手をしている うちにボロを出してしまい、ついには決定的な証拠を突き付けられ、御用となっ てしまうというのが刑事コロンボのストーリーのパターンです。 しかし、この作品ではそのパターンを見事に裏切ってくれました。こればかり はネタを明かしてしまうと面白くないので、興味のある方はぜひ、小説を読む なり、TV作品を見るなりしてください。 ---------------------------------------------------------------------- 【死者のメッセージ(TRY AND CATCH ME)】二見文庫 著 者:W・リンク(William Link)/R・レビンソン(Richard Levinson) 訳 者:野村 光由(のむらみつよし) 出版社:二見書房 初 版:昭和63年10月25日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 アビゲイル荘の密室で男の変死体が発見された。女流ミステリ作家アビゲイ ル・ミッチェルがニューヨーク滞在中、義理の甥が書斎の金庫室に閉じこめら れ窒息死していた。床に散乱する新作の原稿、書類箱に刻まれた暗号めいた傷 跡……死にぎわに残したメッセージが意味するものは? 女流作家が構想した 復讐のミステリにコロンボ警部が挑戦する。消えたキー・ホルダーに秘められ た謎とは? ---------------------------------------------------------------------- 倒叙推理小説なので先に言っちゃいます。 犯人は女流ミステリ作家アビゲイル・ミッチェル。動機は義理の甥がその昔、 甥の妻である姪をヨットから突き落とし殺害したと思い込み、その姪の復讐を 果たすためというもの。 アビゲイルのモデルはやはりアガサ・クリスティなんでしょうか? ミステリ作家が犯人ということで、手口やアリバイ工作が実に巧妙なものになっ ています。しかし、コロンボの最初の事情聴取の際、「こんな事故で..」と 失言をしたがために、以後コロンボから疑いを持たれ、ついには追いつめられ ていってしまうところがなんともふがいなかったです(笑)。 アビゲイルはこの他にも甥の車のキー・ホルダーを無くしてしまうという大き なミスをしています。結果的にアビゲイルのいくつかのミスが後で尾を引いて しまうわけで、「コイツ本当に女流ミステリ作家なんかな」と思わず疑いたく なってしまいます(笑)。しかし、そのミスを挽回していく過程はなかなかスリ リングで楽しめました。ですが、ラストの犯人を問い詰めていく部分は話の進 め方がちと強引に感じました。以上から、刑事コロンボの作品の出来としては 残念ながらランクの下の方の分類となってしまいますね。 では、また来週、お会いしましょう。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 第5号    発行日 9月25日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション *** HP制作中です。 *** **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------