**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 第6号          発行日 10月2日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 先週に引き続き、刑事コロンボです。 【カリブ海殺人事件(Uneasy Lies The Crown】 二見文庫 著 者:W・リンク(William Link)/R・レビンソン(Richard Levinson) 訳 者:野村 光由(のむらみつよし) 出版社:二見書房 初 版:1988年6月25日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 事故死を遂げたハリウッド・スター。捜査にとりかかったコロンボは、車に 仕掛けられた奇妙な細工に気づく。野心にみちた歯科医がしるす謀殺のカルテ −−その謎に挑むうち、コロンボの疑惑は四年前の、もうひとりの俳優の怪死 にのびていく。二つの死に共通する完全犯罪のトリックとは? カリブ海の楽 園ジャマイカで何が起きたのか…… ---------------------------------------------------------------------- ハリウッド・スターは車を運転中に心臓発作で亡くなった。その推理の根拠は 車の右前輪が溝に落ちた状態で車が停止していたためである。 ところが、コロンボは、車のギアレバーがパーキングの位置になっていること を発見し、不審に思う。なぜなら、車を運転中に心臓発作で亡くなったのなら D(ドライブ)のままであるハズだからだ。仮に死後硬直によってレバーの位置 が移動してしまったとしても、リバースを飛び越えてパーキングの位置になる とは考えられない。これは第三者がパーキングに切り替えたと考えられる。 ゆえに他殺だ..。 なるほど。鋭い観察です。 次に犯人である歯科医が始めてのコロンボとの会話の際、ハリウッド・スター の死を告げた後、うかつにも「自動車事故ですか?」とたずねてしまう。 普通だったら、「え?何でまた...」のようなリアクションをすべきなのに 死亡原因を自ら推測してしまうとは...。 あとはコロンボに疑いを持たれ、いつものしつこい訪問と質問で徐々に犯人が 追いつめられていくというパターンです。 この作品は殺害方法がなかなか奇抜で楽しめました。結局最後にはこの殺害方 法が犯人逮捕の決め手の証拠を提出することになるのですが...。 ---------------------------------------------------------------------- 【13秒の罠(The Dean's Death)】二見文庫 著 者:アルフレッド・ローレンス(Alfred Lawrence) 訳 者:三谷 茉沙夫(みたにまさお) 出版社:二見書房 初 版:1988年4月25日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 メリディス大学から講演を依頼されたコロンボ警部は、演劇部をめぐる奇怪 な殺害事件に巻き込まれる。芝居に使う棺に隠されていた学部長の変死体−− その惨殺劇を演出する策謀のシナリオの謎。捜査線上に浮かびあがった緑色の ジャンパーを着た男の正体は……? ---------------------------------------------------------------------- コロンボの原作としてはめずらしく、リチャード・レビンソンでもなくウィリ アム・リンクでもないアルフレッド・ローレンスの作品です。 アルフレッド・ローレンスはこの他にも「死のクリスマス」という作品でもコ ロンボを手がけています。 コロンボは先週もお話した通り犯人や殺害方法があらかじめ分かってしまう、 いわゆる「倒叙推理小説」です。読者はコロンボが一つ一つ証拠を固めていっ て犯人を追いつめていく過程を楽しみ、最後には「あぁ、なんでそのことに気 づかなかったんだろう」と思わせるような、根拠や証拠を犯人が突き付けられ て作品が終了するわけです。ところが、この作品は最後に突きつけられる証拠 は読者も知るよしもなかった代物で、従来のコロンボのような「なんでそのこ とに気づかなかったんだろう」と思わず読者を唸らせる仕掛けがありません。 なんか、騙されたという感じです。読者がその気になれば、早い段階で犯人を 追いつめる証拠として認識できたハズのモノが読みとれるのがコロンボのすば らしい点だったのですが、本作品にはそれはありませんでした。最後に根拠を 示されても「なんだ?そんなのアリか?」という感じです。 テレビドラマの方も、この証拠は絵として見せられていません。 この作品の読みどころは、犯人である大学総長の人柄でしょう。総長であるト ランスは創始者メリディスの遺志を受け継ぎ、資金のなくなった大学の運営を 政治的な手腕を発揮して各方面から資金を集めてくるおかげで、円滑に維持し てきています。 各方面から資金を集めてくるというのは大変なことです。政治の世界はキレイ 事ばかりではありません。その政治の世界の暗黒面を学部長に指摘され、大学 総長を辞職しろ!と脅される。トランスが生き残るには学部長を亡き者にする しかない。「オレもあんたの立場だったら同じように行動しただろう」と思わ せるストーリーです。犯人に同情してしまうんですね。 導入部で、ストーリーにのめり込み、犯人を応援しているものだから、ラスト の倒叙推理小説のくせに前半知るよしもなかった証拠を突き付けられたことは なんかだまし討ちのようで、ちょっと頭にきます。これが、最終的に「気づい てしかるべきだった納得できる証拠」を突きつけられたのであれば、「まいり ました」となるんでしょうが、このラストは納得できんぞ〜! では、また来週、お会いしましょう。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 第6号    発行日 10月2日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション *** HP制作中です。 *** **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------