**********************************************************************          週刊【外国小説寸評】 創刊号          発行日 8月28日 毎週金曜日発行       毎週、筆者が読んだ外国小説を皆様にご紹介します。 ********************************************************************** 皆さん、こんにちは。 週刊【外国小説寸評】では、その名の通り、筆者が読んだ外国小説を毎週皆様 にご紹介します。 私は、あまり流行りモノを追いかけるタイプではないので、中には古い小説を 紹介することがあるかも知れません。既に読んだことのあるモノを紹介してし まった場合はなにとぞご容赦くださいませ。 では、さっそく始めましょうか..。 【テロリストの半月刀(シミタール)】上下巻 文春文庫 著 者:ラリー・ボンド 訳 者:広瀬 順弘(ひろせまさひろ) 出版社:文藝春秋 初 版:1997年7月10日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 早朝のサンフランシスコ。霧がたちこめるゴールデンゲート・ブリッジの上 で、一台の大型トレーラーが火柱と化し、燃えさかる火の海が渋滞中の車の列 をのみこんだ。そして、それは全米が凍りつく未曾有の連続無差別テロのはじ まりにすぎなかった……。テクノスリラーの俊英が、周到な取材をもとに描く テロリズムの衝撃と恐怖! ---------------------------------------------------------------------- 米大使館同時爆破テロと、その報復として米国がアフガニスタン、スーダン両 国内の「テロ関連施設」へのミサイル攻撃を行ったことは記憶に新しいですが この小説のオープニングはまさに同じシチュエーションの内容です。 あらすじにもありますが、補足します。 「ゴールデンゲート・ブリッジ上で大型トレーラーが爆発し渋滞中の周りの車 をことごとく巻き添えにした。これは大型トレーラーに爆弾を仕掛けたテロだっ た。FBIの徹底的な調査の結果、犯人はイランの工作員と判明。これに対し、 米国海軍は、約百発のトマホーク巡航ミサイルをイランに向けて発射した。」 事件前にこの小説を読んでいたため、爆破テロがあったとき、中東のどこかの 国が仕掛けたんじゃないのか?、もしそうなら、ミサイル攻撃で報復されるか もねぇ...、などと勝手に勘ぐっていたら本当に米国がミサイル攻撃したの でちょっと驚きました。「どーせ、小説の世界はフィクションだろ」などとは 言ってられない御時勢ですね。 で、小説の内容ですが、テロリズムの手口のオンパレードです。 どれもこれも、実際にありそうな手口です。もちろん、我々が普段お世話になっ ているインターネットも登場します。著者はなかなかよく取材していると思い ます。「あれ?これって変じゃない」というのは感じませんでした。特殊部隊 やFBI、SWAT等、いわゆるエキスパートの仕事をドラマチックに描写しています。 ストーリーのテンポもよく、上下巻を一気に2晩で読み終えてしまいました。 東西の冷戦が終わった今、新たなる強力な米国の敵はテロリストです。 「実際に起こっても不思議はない」と思わせる内容のお勧めの作品ですね。 ---------------------------------------------------------------------- 【処刑室】上下巻 新潮文庫 著 者:ジョン・グリシャム 訳 者:白石 朗(しらいしろう) 出版社:新潮出版 初 版:1997年2月1日 ---------------------------------------------------------------------- <あらすじ>文庫カバーより引用 1967年、サム・ケイホールはKKKの一員として、ユダヤ人弁護士の事務所 に爆弾を仕掛けた。この爆発で弁護士の双子の息子が即死。サムは起訴され、 死刑判決をくだされた。事件後20年、ミシシッピ州刑務所の死刑囚舎房に収監 されているサムの元へ、若い弁護士が訪れた。彼は、サムの実の孫だったのだ! 死刑執行日までわずか4週間。アダムは祖父の命を救うことができるのか? ---------------------------------------------------------------------- 著者は「ペリカン文書」で一躍有名になったジョン・グリシャム。 ペリカン文書を映画で見て面白かった記憶があり、同じ原作者の作品なら、まぁ ハズレは無いだろう、と「死刑」というハードなテーマにもかかわらず買って みた次第。 読み終えて、文庫カバーのあらすじを見てみると、本当にあらすじで要約でき る極めてシンプルなストーリーであったことに気づく。それならば、なぜ上下 巻という長編になるのか、と思われるが、この作品では「人間」がじっくりと 描かれているがゆえに長編になっている。 私は最初、冤罪という線で法廷でスリリングな争いが描写されるのかと期待し たのだが、作品では法的な争いの描写よりも、サム・ケイホールやその家族の 過去が次々と明らかにされていくことに重点が置かれているようである。 マスコミ等でよく死刑が執行された報道が流れる際、多くの人が「死刑になる だけの罪を犯したのだから仕方がない」という考えを持つのではないかと思わ れるが、それは自分が当事者ではない、また関係者でもないがために思う安易 な考えではないだろうか、と考えさせるような内容の作品である。 マスコミでは決して伝えられないような当事者や関係者ならではの詳細な事情 が作品の中で読者に伝えられる。この作品を読み終わった後、私の死刑制度に 対する考えかたは少し変わったような気がします。 内容、文量ともにハードですが、途中で飽きさせることなく読者をグイグイ引っ 張って一気に読ませてしまうところはさすがです。 たまにはこんな作品を読んでみるのはいかがでしょうか。 **********************************************************************    週刊【外国小説寸評】 創刊号    発行日 8月28日 毎週金曜日発行    発行責任者 塩田 和明 sioda@anet.ne.jp    企画・制作 ハロハロプロダクション *** ただいまHP制作中です。 *** **********************************************************************   Copyright(C) 1998 HaloHalo Productions All rights reserved. ----------------------------------------------------------------------