「オーディション」
(’99年・日本)

監督:三池崇史
原作:村上龍
脚本:天願大介
撮影:山本英夫
美術:尾関龍生
照明:小野晃
録音:中村淳
編集:島村泰司
サウンド・エフェクト:柴崎憲治
助監督:加藤文明
製作担当:鈴木剛
エクゼクティブ・プロデューサー: 横浜豊行
企画:進藤淳一
プロデューサー:福島聡司 陶山明美
出演:石橋凌 椎名英姫 沢木哲 國村隼 松田美由紀 広岡由里子 中村美里 石橋蓮司 斉木しげる 根岸季衣 光石研

2000年5月27日@蠍座
 妻に先立たれて十数年、息子に最近しょぼくれてると言われた青山は友人から映画出演のオーディションの名目で女を集め、その中から再婚相手を選べとすすめられる。オーディションに応募してきた女性の一人・麻実に急速に惹かれていく青山。彼女の方もまんざらではなさそうだが、彼女の求める愛は常軌を逸していた。

 もし、この映画を予備知識無しで、三池崇史の作品ということも知らずに観てしまったなら、その人を羨ましいと思えるだろうか。これは結構微妙だ。しかし、この作品がビデオ化され、自分がレンタルビデオ屋の店員になったとしたら、「寅さん」や「釣りばか」の隣にこっそりこの作品を置いておき、そして何も知らずに借りていった客の反応を見てみたい。ビデオの箱はさり気なく高島礼子のお宝映像のものとすり替えておく。彼はきっとこの映画の後半の凄惨さに卒倒するだろう。「オーディション」は「リング」や「催眠」や「富江」と同じ棚に並べられるホラーなのだから。

 しかし、その怖さたるや貞子などものの比ではない。前半の思いっきりたるい展開と紋切り型のおじさんのラブストーリーは確信犯的に観客の心に透き間を作る。この麻実という女の周囲は謎だらけで部屋には何故かでかい布袋が転がっている。さらに彼女のマネージャーは行方不明。青山の友人も「あの女はやめた方がいい」と心配顔だ。それでもやはり彼女を信じ、彼女の心の闇も包んでしまおうという主人公の包容力は聞こえは良いが、歳をとって分かったつもりになっていた男の傲慢だった。前半の弛緩と後半の緊張、さらにラストではもう一ひねり加えて、主人公と観客を恐怖のジェットコースターに乗せてしまう。終盤の嫌悪感といったら生理的にも受け付けない部類に入る醜悪さである。観るときには用心した方が良い。

 石橋凌はいつも通りだが麻実役の椎名英姫は凄かった。オーディションにあらわれた時にはこんな女のどこが良いのだと思ったが、物語が進行するにつれて次第に魅力的になっていく。本性をあらわしてからが益々魅力的でなんて美しくて恐ろしい女なんだろうと心底震えてしまった。視覚的な恐怖感を出そうとして麻実という女の狂気や彼女の過去に今一つ迫れず、いかにも漫画的な描写になってしまったのが残念だが、それなりに楽しめたので良しとするか。   

   

哀愁      
生理的嫌悪感
濃い演技
エンディングテーマ        

総合:67

つ て な に ぬ ね の