「救命士」
Bringing 0ut the Dead(’99年・米)

監督:マーティン・スコセッシ
製作:スコット・ルーディン、バーバラ・デ・フィーナ
製作総指揮:アダム・シュローダー、ブルース・パスティン
脚本:ポール・シュレーダー
撮影:ロバート・リチャードソン
プロダクションデザイン:ダンテ・フェレッティ
編集:セルマ・スクリーンメイカー
衣装デザイン:リタ・ライヤック
音楽:エルマー・バーンスタイン
原作:ジョー・コネリー
出演:ニコラス・ケイジ パトリシア・アークエット ジョン・グッドマン ビング・ライムズ トム・サイズモア マーク・アンソニー クリフ・カーティス

2000年4月9日@札幌劇場
 1990年代はじめのニューヨーク。救命士フランクは半年前から完全に自信を失っていた。助けられたはずの少女ローズの亡霊が頭から離れない。そんなとき患者の娘メアリーと出会い、心の平穏が訪れるかに見えたが・・・。

 この映画の題名が「救命士」だからと言って危機に瀕した患者を救うヒロイックな場面も、一分一秒を争う緊迫した医療の現場を描写したような場面も無い。あるのは亡霊にとりつかれたニコラス・ケイジのやつれた顔。もしかしたらこの映画を観て一体主題は何だったのだろうと首を傾げる人が大勢いるかもしれない。しかし私が思うにこの映画は逆療法的なヒーリング・ムービーだ。何故ならどんなに仕事や私生活やその他もろもろで疲弊しきっていたとしてもこの映画の主人公フランクよりはマシだと思えるから。「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」の主人公の男の子が「宇宙へ飛ばされたライカ犬よりましだ」と言うように「俺はあの映画のフランクよりましだ」と開き直ってしまえばフッと心が軽くなるかもしれない。逆に打ちのめされてしまうかもしれないので保証はしないが。

 当たり前のことだが救命士という職業は医療の現場にいない一般人よりも人間の死に際に立ち会うことが多い。一般人にとって死とは一生に数回しか出くわすことのない特別なものだが救命士は呼ばれてそこへ出向く。死とどう向き合うのか。全ての死に対して同等の向き合い方をしていたらきっと精神は疲弊し自分があの世行きになる時期がすぐそこまでやってくる。死は尊厳ある特別なものだが同時に実に自然なことでもある。終盤、救命士であるフランクが患者に対して行った処置は家族にとって「特別」である死が救命士にとって「自然」の出来事であるとフランクが悟った瞬間であろう。

 ある時はファンクで、ある時はロックが流れる救急車の滑走シーンはこの世とあの世をつなぐ道路を迷走しているようだ。車の外の風景が飛んでいく、その中で人の顔だけがふっと見える、彼らはフランクの殺した(と思っている)人々の亡霊なのか。もしかしたらシラフでトリップしているだけなのかもしれない。極限の状況で交わされる際どいジョークは暴走し、黒すぎる展開に困惑してしまう可能性もあるが一見の価値はあるだろう。ニコラス・ケイジ&パトリシア・アークエット夫妻の視線に邪推する邪道な楽しみ方もある。もう一度観たい映画だ。

 

感動  
音楽
映像
仮面夫婦?

総合:87

つ て な に ぬ ね の