監督:スティーブン・ソダーバーグ 2000年6月1日@札幌ピカデリー1 映画っていうのは何だかんだ言ってやっぱり結末は重要だと思うんですよ。どんなに詰まらない映画でも途中で寝てしまって結末を見逃すと物凄く悔しい。で、この「エリン・ブロコビッチ」は実話をベースにしていることもあって結末は既に知れ渡っています。「タイタニック」と同じですね。それで2時間近くを引っ張るわけだから相当の演出力を必要するはず。無理矢理な泣きのシーンになりそうだったり、やさあここだという盛り上げどころでわざと突き放すようにカメラをひく演出は実にクールだった。ソダーバーグ監督は訴訟の顛末を追うよりもエリン・ブロコビッチという人物を深く掘り下げることでこの映画に命を吹き込んだ。「エリン・ブロコビッチ」は法廷サスペンスではなく、題名そのもの、エリン・ブロコビッチを描いた映画である。個人的にはジュリア・ロバーツはどうでも良い女優の一人だったが、この映画を見て少し見直すことにした(偉そうな言い方だ)。 冒頭からすでにエリンに首ったけである。エリンという人物があっと言う間に飲み込めてしまう。子供に対して愛情を注ぎ、金には妥協せず、仕事に燃え、四文字禁止用語を連発し、男にすがるような真似は絶対にしない。こうなるととても嫌味な女に見えてもおかしくないが、毒づいても嫌われないのはまるでアメリカの毒蝮三太夫である。彼女には一度喋りだすと周囲は耳を傾けざるを得ないカリスマ性と圧倒的なパワーがあるらしい。エリンがいかにして600名を越える原告の意見をまとめたかというくだりはエキサイティングでジュリア・ロバーツの神妙な顔は「ああ、この顔は子持ちの女しかできないな」と思わせる説得力のある演技だった。脇を固める役者もうまい。上司エドを演じたアルバート・フィニーはアメリカの弁護士のイメージとはほど遠い善人ぶりで攻撃的なヒロインとは好対照をなしている。その他エリンの子供達、恋人、原告などとにかく周囲の人間との絆やヒロインの成長をさりげなく見せてしまう手腕には脱帽といわざるを得ない。この映画は傑作だ。子供を持つ母親にとっては恐らく心に染みる作品だと思う。
総合:90点 |