監督・脚本:デビッド・クローネンバーグ 2000年5月5日@札幌劇場 テーマは言うまでもなく仮想現実と現実との比較にある。ここでの仮想現実とは映画の中に登場する体感ゲーム「eXistenZ」の世界であり、主人公パイクルが感じる現実は次第にその世界に侵食されていく。いつの時代とは明言しないものの世界観が近未来であること、あるいは一人の天才ゲームクリエイターがいればすぐにでも実現可能な世界であることは確かだ。その証拠に遺伝子操作とか環境破壊とかいうキーワードが出てくるのだが、それすらゲームの材料にしてしまうところは毒気満点だ。やばい遊びほど本能は喜ぶものだ。だいたい「eXistenZ」の世界に入り込むのが脊髄にあいた穴からというのがもうやばい。ゲームに入る前から命懸けだ。この映画は「マトリックス」と比較されるのが避けられないが、「マトリックス」が言うなればゲームの世界から必死に逃げようとするストーリーであるのに対し、「イグジステンズ」ではゲームの世界を救うために現実の世界から入り込んでいくストーリー展開を見せる。全く逆だ。そして主人公は一度は躊躇するものの魅惑のゲーム世界へ突入するのだ。敵と味方の区別も全く逆パターン。ゲーム開発者が正義であり、現実主義者は悪であるというスタンスをとる。 この手の映画は結末というか全体の構図をいかに隠し通し、ある時点で一気に見せることが快感に繋がると思うのだがその点に関しては残念ながら失敗している。結末に関するヒントを小出しにしてしまうので観客を最後まで騙し通すことができずに自ら首を絞める形になってしまっている。登場人物の一人として現実味を感じさせるキャラクターがおらず、映画の緊張感を奪っている。それにやたらと名前を持っている人物が大勢登場するのでどうでも良いところで混乱してしまう(この辺は終盤で頭の悪そうな兄ちゃんの「告白」があって笑えたが)。主人公の心配事は専ら背中にあいた穴から病気になりやしないかというみみっちいものだし、「ただのゲームよ」とアンゲラら言うとおりに観客まで安心させてしまう。これでは騙される快感が得られない。オチは矛盾だらけというか腹が立つほど馬鹿くさい。 それでも徹底的にこき下ろすことはちょっと躊躇してしまうのがこの映画の悔しいところだ。ハワード・ショアーの音楽がすごく良かったことと、ウィレム・デフォーやサラ・ポーリーというお気に入りの俳優が出ているのがその大きな理由だ。ゲーム・ポッドのデザインもジェニファー・ジェイソン・リーが触ると妙にエロエロな雰囲気が漂ってきてGOODであった。
総合:61点 |