監督:リドリー・スコット 2000年6月2日試写@道新ホール 序盤から大迫力の戦闘シーンがあるが、闘いの前にはマキシマスが手のひらで小麦を触りながらゆっくり歩く姿が挿入される。戦闘の前の静けさを演出している面もあるが、実は英雄マキシマス将軍の心象風景を映し出している。彼の心の拠り所はローマ皇帝になることを拒否することからも分かるとおり、常に田舎にいる妻子にある。その妻子が無惨にも殺されたのだから彼の怒りは凄まじいのだろうと容易に想像できるのだが、マキシマスという男は怒りよりも失望感が先に立つ。プロットはまるでギリシャ神話のような英雄物語に思えるが、そこはさすがにリドリー・スコットでこの映画は英雄の内面に深く切り込むことによってかなり複雑な心理描写を可能にしている。しかし「復讐」という名義が後半は政治的な意味合いを帯び、マキシマス本人の心理がぼやけてきてしまう。この辺に不満を感じるかも知れないがラッセル・クロウの悲哀の籠もった演技とラストシーンの美しさで許していただきたい。 CGによって再現されたコロシアムでの闘いはエンタテイメント性に溢れ(それだけにいきなりチームプレイになったり虎が出てくるのはちょっと笑えるが)、熱狂する観客が皇帝にさえも影響するという描写は暴君であるコモドゥスの焦りや孤独感を煽る。冒頭でのエピソードや姉との関係でコモドゥスにも人間性を持たせようと努力はしているがホアキン・フェニックスの演技はやや平坦で説得力に欠けるものだったような気がする。後半はマキシマスよりも狂気に陥っていくコモドゥスに焦点が移っていくのでこの辺は残念だった。上映時間は2時間半もあるし、製作費は一億ドルもかかっている。だからというわけではないが、見応えのある作品には違いないので見終わった後に「ああ、映画を観たな」という充実した気持ちになることは保証しよう。
総合:85点 |