「サイモン・バーチ」 監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン
きっと泣かせてやるぞという意欲が全面に出たちょっと嫌らしい映画なんじゃないの?と思っていたりしたが、ごめんなさい、私が悪うございました。この映画の登場人物は主役の二人の少年から脇役に至るまで実に愛に溢れています。例外はサイモンの両親くらいのものだが、彼らが出てくると画面のトーンが一気に暗くなるし殆ど登場しないので印象に残らない仕掛けになっている。サイモンの母親役は完全に親友であるジョー(ジョセフ・マッゼロ)の母親(アシュレイ・ジャッド)に委ねられているのだ。このお母さんが実に可愛い。アシュレイ・ジャッドは最近なんだか汚いメイクの役が多いような気がするがこういう曇りのない笑顔の方がよく似合うと思うぞ。 エピソードの積み重ねには無駄がないし、伏線もしっかりしているので非常に物語に入り込みやすい。日常の出来事を子供の視点から見てまるで大事件のように扱い、ほのぼのとした空気を漂わせる辺りはカナダ製ドラマの「赤毛のアン」や「アヴォンリーへの道」を思い出させる。主人公が少々おませなのも似ているかも知れない。定石通りの展開ではあるがそこは安心して笑えるし、一緒になって悲しんだりできる気持ちの良さがある。特に脇役が可愛いらしいので見ていて飽きない。ジョーの祖母や元使用人のヒルデの関係が面白い。軽口を叩いてサイモンを馬鹿にする通行人もおかしい。クリスマスの配役を決めるときの日曜学校の生徒達はそれまでほとんど画面に出てきてこなかったのに素晴らしい存在感を見せる。妻子持ちの司祭に色目を使う女教師もおかしかった。それより何よりベン(オリヴァー・プラット)ですね。あんないい人本当にいるんでしょうか、といういい人ぶり。裏切りの連続が見所のサイコ・ホラーや末法思想的な映画ばかり観てからこういう映画を観るとホッとしますね。さて、サイモンが与えられた使命とは一体何だったのでしょうか。この続きは総合点の後に・・・。
総合:86点 鹿を避けるために湖へ転落したバスから子供達を救い出すために頑張ったサイモン・バーチは寿命からなのか、それとも事故の影響からか息を引き取る。神がサイモンに与えた使命は果たして人命救助だったのだろうか。サイモンは今まさに天に召されようとするときジョーにこう呟く「君は最高の友人だ」。ジョーとサイモンの関係は互いに無二の親友である。どちらかがいなければ孤独に打ちひしがれ、生きる希望を無くしていたかも知れない。ここでいう神の使命とはお互いに親友を与え、共に生きなさいということだったのかもしれない。新しい父親を得たジョーにこれ以上サイモンという友人は勿体ないと神は考えたのだろうか。だとすると夏に湖で遊ぶ二人を見守り、冬にバスの前に飛び出したあの鹿がもしかしたら神の化身だったのかもしれない。 |