TakumarレンズをKマウント化する改造…

 

 M42(P=1.0)ネジのプラクチカマウントを 、複雑精緻な自動絞りや巧妙な開放測光仕様へと進化させたのは、旭光学工業の手柄ですが、その珠玉マウントを捨てて、バヨネット化したKマウントに移行したのは 、時代の趨勢でやむをえないことでした。

 その際に、安価に供給するアダプターを使用することで従来のレンズをKマウントカメラで使用することができるようにしたのだけは、ユーザーを裏切らない行為であったと評価できます。

 

 しかしながら、Takumarをアダプター利用でKマウントカメラに装着した場合、自動絞りが使用できないこと、そして開放測光ができないことが、使い勝手の上で不満の種です。

 

 一方、マウント変更後においても、Takumarの光学系を継承したレンズが幾つか存在しましたが、これらの中には、貼り合せ玉製造において接着剤の選択を誤ったものがあり、Takumar時代より経年劣化による「バルサム切れ」の多発しているものがあります。

 

 光学系が同一の場合、Kマウントの鏡胴にTakumarのレンズ玉を組み込むことは容易なことです。そのようにしても、実用の範囲において支障は認められません。このことは、旭光学の設計が統一的であり、生産管理が精妙であったことの証ですが…

 

 Takumar時代の光学系を継承したKマウントレンズとしては、K3.5/35、K1.4/50、K1.8/55、K4/50macro、K4/100macro、K4/100bellows、K2.8/105、K2.5/135などがあります。これらは 、Takumarの光学系と換装することにより、KマウントTakumarへと変身できるのです…

 

 この写真はKマウントのSMC PENTAX 1:1.8/55 ですが、中のレンズ玉は、鏡筒が無残に腐食していたSMC Takumarのものです。今やSMC PENTAX 1:1.8/55の定番となっている滲んだようなバルサム劣化のある、しかもフィルター取付枠が歪んでいたものを利用して改造しました。

 フィルター取付枠は変形の修正痕をなくすために表面の黒色アルマイト層を240番耐水ペーパーで除去し、2000番のペーパーでサテンヘアライン仕上げにしてあります。 さらにピカールなどの研磨剤で磨けば鏡面加工にすることもできますが、これくらいのほうがシックです。

 いずれも廃棄される運命にあったジャンク・レンズたちでしたが、一つになって立派に甦りました。*ist Dに装着すると等倍の視野が得られますので、 実質1:1.7以上の明るさとあいまって、今や必需品です。

 なお、レンズ玉を抜かれたSMC Takumar 1:1.8/55の腐食鏡胴ですが、絞り機構を生かして、bP0のクローズアップレンズを装着して単玉100o望遠へと変身しています。これ、なにしろ諸収差が物凄く、夜景などが面白い絵に…

 

 余談になりますが、Takumar1.4/50のうしろから2枚目のレンズ玉が黄色く変色することは良く知られています。

 これは、レンズ玉の素材(硝材)が経年で黄変するためなのですが、Kマウント化されてからは、これが黄変しない素材になっています。

 このことから、バルサム切れしたKマウントのものからこの玉だけ を移植することで、黄変のないTakumar1.4/50へと改造することが可能です。これも実用の範囲において支障は認められないし、ポジ撮影時にフィルターワークによる色温度の調整を必要としないことが最大のメリットとなります。

 なお、後日知ったことですが、黄変するレンズ玉には放射線を出すトリウムが配合されているのだそうで、放射線の害を気にする人にも、レンズ玉の換装は有効です。