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部品が欠落したME superについて…
故障品のME superを入手して分解修理していると、部品の欠落した個体に出会うことがある。以前の所有者によって分解が試みられた結果で、それが重要な機能部品の場合は、あきらめて部品取り用ストックとする以外にはないが、代替のもので置き換えることができる場合は、使える個体に戻すことは可能である。
多い事例としては、分解の最初に外す必要がある巻上レバー上部の飾りボルトを「逆ネジ」と知らずに左に回してねじ切ってしまったもの、シャッターモード切替ダイヤルのオート位置ロック解除ピンと、それを押す白いボタンを失っているもの、その下にあるクリックピンと押しスプリングも失っているものなどである。
飾りボルトを折損したものについては、頭部が失われていない場合や、ネジ山を潰しただけのものは、その下にある切欠き円形ナットにエポキシ接着剤とエポキシ粘土 を使って接着することで、外見は完璧で、かつ十分使用に耐えるものとすることができる。 エポキシ接着剤で接着するだけでは必要な締付トルクに耐えられないのだが、頭部内側のくぼみ部分と切欠き円形ナットとの間にエポキシ粘土を充填することで十分耐えられるようになる。この場合、切欠き円形ナット周囲に刻みを多く入れると、結合はより強固なものになる。
飾りボルトの全体を失っている場合は、薄いアルミ板で16oの外径を持つ円盤やドーナツ状円盤を何枚か作り、エポキシ接着剤で積層してから切欠き円形ナットと接着することで代用品を作ることも可能である。この場合、デザインを変更すると楽しいかも…
シャッターモード切替ダイヤルのオート位置ロック解除ピンとその押しボタンを失っている場合は、ピンはともかくとして、押しボタンの代替品の製作は相当に困難である。 もともと、このロック機構は無用の存在であると亭主は考えている。 そこで、ロック機構を廃止してしまえば、これらの部品は不要となる。そうするためには、ロック解除ピンが押すクリックピンを取り去る方法もあるが、これだとすべてのクリックが失われ、 各モードの切替・保持が不安定となる。 このクリックピンと押しスプリングを失っている場合も多いのであるが、これは、代替品の補給や製作が容易である。 押しスプリングは、Aシリーズ以降のマウント部の信号ピン部に数多く使われているスプリングがそのまま使えるので、再起不能なジャンクレンズを入手することで供給できる。 クリックピンは片側が丸まった単純な丸棒なので、模型店や東急ハンズなどで同径の真鍮棒を入手すれば、容易に加工できる。 シャッターモード切替ダイヤルがオート位置でロックする仕組みは、シャッターモード切替ダイヤル裏のプレートに掘り込まれたクリック穴にクリックピンが深く入り込むことでロックするのである。 深く入り込んだクリックピンを、押しボタンで押されたロック解除ピンが押 し戻すことで、ロックは解除されるのである。 クリックピンが深く入り込まないようにするためには、ロック解除ピンが失われた穴にエポキシ粘土を充填し、プレート面にクリックが確保できる程度のくぼみを設けるだけでよい。ダイヤル表面に見えるエポキシ粘土は、押しボタンと同様にクリック位置を示す指標となって、まさに 、一石二鳥である。
こうしてロック機構を取り去ったダイヤルは、操作性がとても優れたものになる。L位置に入れるのも、Mモードに切り替えるのも、押し難いボタン操作が不要なので、すこぶる快適である。
内部機構の部品欠落例としては、軍艦部とフレーム部を電気的に接合する接点端子がフレーム右前にあるが、この三本端子の上面に貼られていた透明フイルムを剥がしてある個体がある。これが無いと、端子と軍艦部が接点以外で接触導通してしまい、電気的な挙動が異常となる。 これは絶縁のための部品なので、必要なものなのである。絶縁ビニールテープでもよいのであるが、厚手の透明な粘着フィルムを代替品とすることで体裁も確保できる。
巻上レバーには引き出し予備角が与えられているが、レバーが格納位置に止まらない個体がある。クリックスプリングによって格納位置に止める仕組みになっているのだが、このスプリング(板バネ)が折損しているのだ。 他の機能部品が破損している再起不能の故障品を入手し、それから移植してもよいのだが、形状的に単純であるし、弱いバネでよいことから、鉄板や真鍮板、燐青銅板などから切り出して代替品を製作するのも比較的容易である。
ME superが故障する原因の主要なものが、シャッターユニット内のゴムダンパーがとろけて羽根の作動を拘束するもの、エアダンパー内のゴムダンパーがとろけてピストンの作動を拘束するもの、ミラーボックス横のリンク部に3ヵ所あるゴムダンパーがとろけてリンクの作動を拘束するもの の 三つである。 これらのうち、シャッターユニット内のゴムダンパーの代替品を作るのは、1o厚のゴム板から切り出したりして、なかなかしんどい作業である し、これを取り去っても大きな支障があるわけではないが、他のゴムダンパーなら、内径2o外径4oのゴムチューブを輪切りにすることで簡単に代替品が出来上がる。 ゴムチューブの材質は何でもよいというわけにはいかず、衝撃に強いことと、油に侵されない特性が必要である。 シリコンゴムのものは耐油性能が優れ、安価で容易に入手が可能であるが、耐衝撃性が劣るため、使う部分によってはすぐに千切れてしまう。 フッ素ゴムのものは耐衝撃性、耐油性のいずれもが優れているので、これだと問題が少ない。高価なのと、流通が限られているのが欠点であるが… 塩化ビニールのチューブも使えそうであるが、絞込みレバーが激突する部分では、シリコンゴムと同様、すぐに損傷してしまう。この部分はフッ素ゴムでも損傷が生じることがあるので、内径4o外径5oの真鍮パイプを併用することで対処する方が良い。これなら、安価なシリコンゴムで十分である。他の場所では、どれを使っても問題は生じないことだし…
故障品から救出して使える個体が増えると、単にオリジナルに近づけるのだけでなく、外装や内容について他とは違うものを、という欲望に囚われるものである。そこで、貼皮を本革にしたりとか色々と手を加えることになるのであるが、一例として、飾りボルトが傷ついているものについて、メッキや塗装を水研ぎペーパーで剥がして研磨剤で磨くという方法がある。 これの場合、素材が真鍮なので金色に輝き、なかなかの風格が出る。
また、底蓋の三脚座周囲が一脚など安物の雲台によって醜く傷ついている個体がよく見られ、これの場合、凹凸を叩いて修正し、傷と一緒にメッキや塗装を剥がして磨き上げれば、これも金色がアクセントとなり、なかなかの風格となる。 再塗装しても、塗幕を硬くするのは難しいのではげ易く、それより真鍮地金のままにしたほうが手入れも簡単だし、取り扱いに神経を使わずに済む。 亭主の常用品はすべてこれであり、今や、トレードマークと化しているかも…
故障品のカメラを修理して再生させる楽しみのためには、故障品を数多く収集して必要な部品の確保を図ることも大切であるが、無いものは代替品を作るという姿勢もあってよいと思う。カメラは写せてこそカメラであって、オリジナルの部品が揃っていても動かない、棚の置物にしているだけというのでは、機械としてのカメラに対して失礼であろう。
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