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1.レディ・ジョーカー 上…高村薫
2.沈まぬ太陽(三) 御巣鷹山篇…山崎豊子 3.沈まぬ太陽(四) 会長室篇・上…山崎豊子 4.沈まぬ太陽(五) 会長室篇・下…山崎豊子 5.レディ・ジョーカー 下…高村薫 6.シェエラザード 上…浅田次郎 7.シェエラザード 下…浅田次郎 8.ストロボ…真保裕一 |
| 1.レディ・ジョーカー 上 | 高村薫 |
毎日新聞社1997.12発行1700円ISBN4-620-10579-1
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再読。初読したのは、発売当初だったけど、うーん、こんな話だったっけ。最初の競馬場でのシーンまでくらいしか憶えてないぞ。
で、憶えてなかった理由もちょっとわかるけど、でも面白い。時期的にいくつか企業脅迫の事件が相次いでいて、それを見るたびにこの小説のことを考えたりもした。 さて、レディ・ジョーカーという犯罪集団は、なぜ結成されたのか。部落問題に端を発して、その結成までじくじくと膿んでいく様子の書き込みがなかなか細かくて、納得させるものがある。上では、レディ・ジョーカーが結成された理由、そしてまず最初のターゲットの社長誘拐までが語られているが、ここにときどき登場していた合田がどう絡んでくるのか、それはこれから見逃せない。しかし、二段組で活字が小さくて、読み終えるのに時間がかかるったら〜。 [ 先頭へ ] | |
| 2.沈まぬ太陽(三) 御巣鷹山篇 | 山崎豊子 |
新潮社1999.7発行1700円ISBN4-10-322816-4
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御巣鷹山のジャンボ機墜落事故があったのは、私の初の海外旅行の数週間前のことだった。飛行機に乗るのが怖くてたまらなかったことを憶えているし、事故当夜、自衛隊のヘリの音がひどくうるさかったのも記憶に強く残っている。
航空会社で労組問題のために何年も海外をたらいまわしにされた恩地が、東京へ戻って遭遇したのは、この墜落事故だった。加害者の立場から、被害者に尽くそうとする恩地たち。今まで「小説」として読んでいた本が、にわかに現実味を帯びてくる。事故の瞬間、事故現場に遺されていたものたち、遺体の損傷のひどさ、被害者の嘆き、読みながら、怖くて哀しくて仕方なかった。亡くなられた方々だけではなく、遺族の人生も大きく変わっていったのだと、思わせられた。そしてあれから15年近く経過した現在も、まだ傷跡は遺族の心に残っているのだろう。 ともあれ圧巻の第3巻。それは想像を絶していて、今更ながら当時の記録を捜してみようかと思ったほど。 [ 先頭へ ] | |
| 3.沈まぬ太陽(四) 会長室篇・上 | 山崎豊子 |
新潮社1999.8発行1700円ISBN4-10-322817-2
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墜落事故を機に一新した会社の経営陣、そして理想を掲げた新会長国見に、会長室へ配置された恩地。国見の理想と、会社の実情、そして未だ癒されぬ事故の遺族たち。
まだ救いはあるのだと思っていたが、会社の体制はこの事故ひとつでは変わらなかった。あんな事故なのに、なぜそれでも変わらないのか。日本だけがこんな体制の中に企業を存在させているのか、それとも他の国でもそうなのだろうか。 そして未だにアカと言われなければならない恩地。一番大切なはずのことが別のものになぜとって代わらなければならないのだろう。理不尽だなあとつくづく思う。 [ 先頭へ ] | |
| 4.沈まぬ太陽(五) 会長室篇・下 | 山崎豊子 |
新潮社1999.9発行1600円ISBN4-10-322818-0
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政府と会社の有力者たちの癒着は、理想ではどうにもならないところまで来ていた。裏で国見や恩地を攻撃する役員たち、絶望しきった国見は会長を辞任する決意を固める。事故が起きてもなにも変わらなかった企業。
そして恩地は再び事故の遺族のために働こうとするが、再びナイロビ勤務を命じられる。 結局このあとも、会社は何も変わらないのか、それとも自殺したある社員の告発によって何かが変わっていくのか。 最初、あれほどアフリカですさみきってしまった恩地。だが、今度は彼はナイロビに救いを求めている気がした。「沈まぬ太陽」とは、巨大な一企業のことかと思っていたが、そうではないのかもしれない。 彼が、遺族が救われる日は来るのか。これを読んだ遺族がどう思っているのか、それを聞くのはまだきっと辛い。 今、あの航空機事故を題材に小説を書かれた山崎豊子さんには敬意を表します。 [ 先頭へ ] | |
| 5.レディ・ジョーカー 下 | 高村薫 |
毎日新聞社1997.12発行1700円ISBN4-620-10580-5
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結局、レディ・ジョーカーとはなんだったのか。企業と総会屋、政治家、ジャーナリスト、そして警察。様々な人々の歯車が少しずつ狂い、破綻していくのがなんとも言えない。
ここで、企業というものに視点を合わせた「レディ・ジョーカー」「沈まぬ太陽」ふたつを読了したが、なんと好対照なこと。「レディ・ジョーカー」には、妄執とか執念とか情念のようなものが感じられて熱い。合田の白いスニーカーとかね、これが高村薫さんの書き方なんだなとしみじみ思ったな。 合田とレディ・ジョーカー、誰が壊れて誰が変わって誰が不幸になって幸福になったのか、それともまだ皆の中で何かがくすぶりつづけていて、いずれ違う形になるのか――この先は読者の判断に委ねられているのか、それとも合田の話はまた別の形で出てくるのか、どっちにしても楽しみなのだ。 [ 先頭へ ] | |
| 6.シェエラザード 上 | 浅田次郎 |
講談社1999.12発行1600円ISBN4-06-209607-2
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戦時中、本来の航路につくことなく、戦争にかりだされ、国際条約で安全が保障されたはずの豪華客船は、なぜ沈んだのか。
その問題を軸に、その船を日本人の手で引きあげてほしいという謎の中国人は何者なのか。依頼を受けた日本人たちは、その船「弥勒丸」の情報を集めるために奔走する。謎の船「弥勒丸」について調べる男達の現在と、実際に「弥勒丸」でなにが起きていたのか、どんな人々が乗っていたのか、過去と現在が交差して書かれていく様子が、これからの物語の広がりを感じさせる。 [ 先頭へ ] | |
| 7.シェエラザード 下 | 浅田次郎 |
講談社1999.12発行1600円ISBN4-06-209958-6
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安全を保障された船、弥勒丸、だが実は、日本軍と敵のとてつもない計算の上に航海していた船だった。日本軍の計算、敵の計算、安全を保障されたはずなのに、いつ攻撃されてもおかしくない危険な状態だった。
船に乗っていた沢山の民間人の本当の理由を知っていた軍人たち、そして船の乗員たち。日本がもうほとんど勝つ見込みのなかった時勢に一体なにがあったのか。 乗員たちの船への愛情が、ひしひしと感じられる物語。運良く生き残った何人かの人たちが語る弥勒丸とは、そして依頼人の正体とは。 なんというか、本当に「現在」の話がはじまるのは、このあとなのだけれど、作者が書きたかったのは「現在」にまでこれだけの想いを残す「彼女」の存在だったのだと思う。「現在」の話が進行していくと思っていただけにちょっと意外だったけど、こういうのもアリか。でもそれならもっと、弥勒丸に乗った人々の話が聞きたかったな。なんか物足りない感じ。 [ 先頭へ ] | |
| 8.ストロボ | 真保裕一 |
新潮エンターテインメント倶楽部SS2000.4発行1400円ISBN4-10-602647-3
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一カメラマンのある時々を、年代を逆にして書いていった連作集。この、現在に近い方から書いているってところがミソだろう。哀愁をそそるのだ。なぜなら、過去彼が見てきた男たちに、彼は現在なりつつあったりするのだから。
カメラマンという人気商売、なにかを自分の手で作りだす人の葛藤やぶつかる壁、そんなものが伝わってくる逸品。いい写真とはなにかを模索していた若いころ、とりあえず金になる仕事を請けおうようになった名前定着後、それでも人の生死や別れと出逢うことによって、そのときどきの彼に強い印象を与えたのだろう。人には幾つかの転機が、必ず存在するのだと思った。 それにしても真保作品は、最近、私にとって大ヒットだなあ。物語としての「ハードボイルド」とは違うかもしれないけど、これもまたすごい「ハードボイルド」な作品。 [ 先頭へ ] | |