2000-NOVELS
AUGUST

[ INDEX ]

1.オルファクトグラム…井上夢人
2.グイン・サーガ73 地上最大の魔道師…栗本薫
3.上と外 1 素晴らしき休日…恩田陸
4.影の肖像…北川歩実
5.青の炎…貴志祐介
6.月の裏側…恩田陸
7.象と耳鳴り…恩田陸
8.黒い春…山田宗樹

 
1.オルファクトグラム 井上夢人
毎日新聞社2000.1発行1900円ISBN4-620-10608-9
 ある手術のあと、鼻が異常に発達した主人公、嗅覚が視覚として「見える」ようになったことを利用して、殺人犯人を捜すというのは、とても面白い趣向だった。最後はちょっと予定調和っぽくて、こう対決してこういうラストになるんじゃないかというのが、そのまま当たってしまったんだけど、ここまで読ませるのは、やはり井上さんの力とアイデアの勝利。視覚とか嗅覚の違いとか、なるほどと思わせるところもあって、嗅覚というものに興味が湧いた。視覚よりもずっと曖昧な嗅覚は、確かに、普段はそんなに気になるものじゃないからね。        [ 先頭へ ]
2.グイン・サーガ73 地上最大の魔道師 栗本薫
ハヤカワ文庫2000.7発行540円ISBN4-15-030642-7
 グラチウスの話はどこまで信用していいものなのか? なんにしても、ヴァレリウスを助けてくれてありがとうという気分なのだ。その話には、イシュトやグインの名前も出てきて、このパロの戦いが終われば、もしやある程度この物語自体も終わるのか?とも思うんだけど、まだ先は長いかもね。
 しかしこの先、竜の頭の人間とか、バケモノ話になっていったらヤだなあ〜〜(^^;(例・まかすこ(笑))。        [ 先頭へ ]
3.上と外 1 素晴らしき休日 恩田陸
幻冬舎文庫2000.8発行419円ISBN4-344-40004-6
 さて、全5巻、隔月刊行シリーズの第1巻…だそうだ。
 で、そしたらつまり、最初はプロローグだろう、と思って読んだら、ホントにプロローグ以外のナニモノでもありゃしなかった。なんと言うか、吉本ばなな的なネタだな〜と思ったんだけど、その吉本ばなな的ネタがこの先どう展開していくのか、そのラストからとんでもない恩田陸的展開になっていくのか、興味は大きい。吉本ばななだったら先はちょっと読めるけど、恩田陸であるがゆえに、先の展開がさっぱり読めない。
 当然、まだこの時点では、面白いともつまらないとも言えないのだ。いや〜、全部揃ってから読めばよかったと後悔したくらい、ほんっとにプロローグだったぞ。ま、私としては、この話、全部刊行が終わってから読むことを、今の時点ではオススメするね。        [ 先頭へ ]
4.影の肖像 北川歩実
祥伝社2000.4発行1800円ISBN4-396-63169-3
 クローン人間は是か非か、そこに移植のドナーの正体は「誰」だったのか。その変も絡んで起きる殺人事件という展開は面白い。
 確かに面白い…んだけど、これが登場人物とか話の流れとか、まとめて見ると、また面白いかは別問題なんだよね。なんか、一気読みしちゃうほどの面白さはない。小難しいことが書かれているとか、そういうわけではないし、クローンなり移植なりのネタに興味があっても、なかなか先が進まなかったのは何故だ。
 北川歩実、ブレイクにはまだ遠い?        [ 先頭へ ]
5.青の炎 貴志祐介
角川書店1999.10発行1400円ISBN4-04-873195-5
 平和な家庭に現われた義父の存在が、ひとりの少年の運命を変えた。彼にとって、義父は、母や妹のためにも「強制終了」させるべき男だったのだ。そして殺人方法を練り、実行に移すが、完全犯罪かと思われたそのやり方にも大きなミスがあって、彼はもうひとつの犯罪を犯さねばならないことになる。
 そして問題は、その事件が起きるまでの過程と、破綻してからの過程なのだ。子供と大人の存在としての違い、人を殺したことで気づくその重さ、恋愛も混じって哀しい青春小説に仕上がった。はたから見たら、わからない少年の苦悩や思いを、はたにも教えてやりたい〜。そんなもどかしさがたまらなかった、上質の小説で、「黒い家」とはまた違った傑作だね。        [ 先頭へ ]
6.月の裏側 恩田陸
幻冬舎2000.3発行1800円ISBN4-87728-398-6
 ネタバレあり。
 箭納倉という水に面した町で起きる、人の失踪事件。けれど必ず失踪した人間は数日後にその間の記憶をなくして戻ってきた。そのあいだに、一体何が行われているのか。
 水ってある意味恐怖かもしれない。鈴木光司の短編でもやっぱり怖いものがあったけど、そんな感じで夏向きのホラー。そして「盗まれた」人たちの生成過程とか、すでに「盗まれてる」人と「盗まれてない」人の境界とか、最後に「盗まれ」てマイノリティだった彼らがいずれ(もしやすでに?)「マジョリティ」になるのだ、というところとか、怖い怖い。
 恩田さんの幻想的な描写とか(うまいね、この人)含めて、凄く雰囲気のあるホラー。幻想小説と言っていいかも。        [ 先頭へ ]
7.象と耳鳴り 恩田陸
祥伝社1999.11発行1700円ISBN4-396-63158-8
 意外にも本格でびっくりしたぞ〜う>シャレかい、すいません。
 元判事の関根多佳雄が主人公で、まあ色々なシチュエイションで書かれているのが面白いね。私が恩田さんに期待するのは、こういう作品じゃないけど、最後の「魔術師」は、なかなか期待どおりかな。いや待て、それぞれ出来はよかったし、全体としてもすごく面白かったけど、いわゆる「私が恩田陸に期待しているもの」が一番「魔術師」によく出ていたなということだ。
 しかしこれ、タイトルすごく面白いよね。中の短編のタイトルだけど、これが表題になるって人目を引く、というか「なんだろう」って人に思わせる何かがある。        [ 先頭へ ]
8.黒い春 山田宗樹
角川書店2000.3発行1800円ISBN4-04-873208-0
 遣隋使の時代、聖徳太子からの手紙に怒った随の帝は日本にどんな罠をしかけたのか。
 そして、現在、日本で流行しはじめた病の胞子との関連。結構面白かったし、随の話も「ほ〜お、そういう解釈もあるのね」と思えたし、最後は不覚にも泣きそうだった。
 でも、基本的な話の枠組みは、すっっっごくよくある話。よくある骨組み。どっかで読んだなって感じのもので、似ている話の流れの小説も2、3言えるぞ。その辺がね、途中からすでに予測できていて、そのまま終わってしまったのが芸がない。        [ 先頭へ ]