1999-NOVELS
APRIL

[ INDEX ]

1.チグリスとユーフラテス…新井素子
2.六番目の小夜子…恩田陸
3.水無月の墓…小池真理子
4.無印不倫物語…群ようこ
5.途中で、ごめん。…景山民夫
6.光の帝国 常野物語…恩田陸
7.グイン・サーガ65 鷹とイリス…栗本薫
8.無印おまじない物語…群ようこ
9.レクイエム…篠田節子
10.新宿熱風どかどか団…椎名誠
11.11月そして12月…樋口有介
12.きっと君は泣く…山本文緒

 
1.チグリスとユーフラテス 新井素子
集英社99.2発行1800円ISBN4-08-774377-2
SFだってのにミステリ売場にあった度 ※☆★※?
昔は強い男、今回は強い女だ度 ★★☆★
小説すばる様、太っ腹でありがとう度 △△★★☆
 上のコメントを解説しよう! 私は都内某大型書店でこの本を探した。発売日をかなり過ぎていたので新刊売場にはなかった。しかーし、SFという棚がそもそもない。はてな。女流文学コーナーでは本を発見できず、個人的趣味でミステリ売場を見ていたら、そこで発見してしまった。作者がSFだってあとがきでも書いているこの本は、なんとミステリ売場にあったのだ。SF売場がないから仕方ないんだけど(でもミステリではない)日本のSFはいつのまにこんなに衰退してしまったのだ? ちなみにこの店は超有名大型書店なのだよ。
 ということで読んだ本だが、新井素子の文章はやっぱり新井素子だった。「おしまいの日」から7年(おいおい…(^^;)経とうと変わらなかった。ちょっと辟易しながら読んだところもあったりして。
 でも物語は面白かった。昔は「作者がこれまで読んだどんな小説のキャラクターよりも強い男」を書いた素子さんだが、今回は強い女が出てきた。ちょっと年相応に見えなかったのが難点ではあるけどもよしとしよう。レイディという表現に「かのお方」を思いだし、みみずで昔の某新井作品を連想し、エンディングはすごく彼女らしい書き方だなあと思い、物語的にも最後の方はなかなか感動できた。母性って新井作品で割に大きな位置を占めているよね。これはもうひとつの地球発祥の物語なのかもしれない。
 連作長編(笑)のこの物語、第一話が雑誌「小説すばる」に掲載されたのが96年4月号。思えばそれを書店で見たときからどれだけ単行本にまとまるのを待っていたことか…長かった…。        [ 先頭へ ]

2.六番目の小夜子 恩田陸
新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズ92.7発行388円ISBN4-10-123411-6
「小夜子」なのは何故?度 ?????
やっぱり高校生物はいいなあ度 ☆★☆★★
微妙に怖い度 ★★♪★★
 タイトルだけは有名だった。ずっと読みたいと思っていた。この度現物を見た。そうしたら、表紙絵に見おぼえがあった。この本が新刊平積み中だった頃に、私は確かにこの表紙を見ている。表紙絵はかの秋里和国氏だった。でもまるで吉田秋生氏「吉祥天女」みたいな雰囲気を醸しだしているのである(そういえば秋里さんの漫画でセーラー服の女子高生ってあんまり記憶にないなあ)。
 さて、ある高校に伝わる「サヨコ」伝説と奇妙なゲームを軸にして話は進む。ファンタジーノベル大賞最終候補作ということでファンタジーとも確かに言える(でも少し弱いけど)。見ようによってはホラーに見えないこともない。高校生の話ということもあって青春小説・学園小説という感じも強い。不安定な高校生の心に忍び込む奇妙なゲームをすごくうまく書いている。
 すごく不思議なのは「サヨコ」の名前の表記。基本的にはカタカナが使用されている。謎の転校生の名前は「沙世子」。作中に登場する劇とこの本のタイトルは「小夜子」――何故にタイトルは「六番目のサヨコ」じゃなくて「小夜子」って表記を使ったのかな〜。
 まあ主役級の4人の関係とか他に書きようあるかもね、ってところはあったけど全体的には面白くて好み。はい。        [ 先頭へ ]

3.水無月の墓 小池真理子
新潮社96.1発行1262円ISBN4-10-409801-9
幽霊短編集度 ★★★〜〜
とっても怖い度 〜〜((((;^^)
日常と非日常の境目の薄さ度 ☆☆●〜〜
 ひとことで言えば怪談である。真夏の夜中もしくは真冬の夜中に読むととっても怖いと思う。春の昼間に読んでよかった…(^^;。
 ということでどの話にも幽霊が登場する。それがひとりだったりふたりだったり家族だったり自分だったり、まあさまざまなんだけど、これってシリーズとして雑誌掲載したのかなあ。うまいうますぎる小池真理子っ。
 小池氏の小説って文章が綺麗(というか私好み)なんだよね。で、綺麗だからいっそう怖くなるってこともあるのさ。        [ 先頭へ ]

4.無印不倫物語 群ようこ
角川書店92.12発行1165円ISBN4-04-872728-1
今回は不倫だ度 ☆★★☆
無印シリーズどこまで続く度 ??☆○?
タイトルは演歌シリーズ度 !!!
「無印OL物語」しか知らなかったのに、探すとどんどん系列の話が登場するなあ(笑)。
 今回は不倫シリーズ。不倫しているのが自分だったり恋人だったり親だったり会社の同僚だったり色々パターンがある。ネタがネタだけにやばそうな場面もあるっちゃあるんだけど、なんかそれでも人生がんばろーって無意味に元気になっちゃうところがいいなあ。
 短編集でタイトルが演歌の曲名らしい。らしいというのは私にわかる曲がいくつかあったが、ほかについては確信が持てないからであーる。        [ 先頭へ ]

5.途中で、ごめん。 景山民夫
マガジンハウス98.6発行1600円ISBN4-8387-1031-3
未完の小説(>_<)度 (>_<)(T_T)(>_<)
ヤモリって鳴くのか度 ★○●△
泣かせてもらいたかった度 ★☆★★
 ネタバレあり。
 著者がお亡くなりになったため中断してしまった連載小説「ワン・プカ・プカ戦記」「サマーキャンプ」と各エッセイなどをまとめた本。
 ということで、小説二本は未完なのだ。涙涙。第二次大戦下日系アメリカ人の活躍を描いた「ワン・プカ・プカ戦記」は、これから最前線に送られて涙も交えながら、主人公たちはとっても痛快な活躍を見せるんだろう、わくわく…ってところで終わってしまった。小中学生たちの海外サマーキャンプを描いた「サマー・キャンプ」は、なんと主人公たちがヨットで遭難してしまいこれから無人島に流されてしまうらしい…と危険な状況で中断。
 どっちも先が凄く読みたいと思うくらい景山さんらしくて明るく楽しい小説だった。どちらも国境を超えた形の登場人物たちだが、視野が広くてさすがである。
 そういえば、「ワン・プカ・プカ戦記」で一個凄い校正ミスを発見したが…うーん?        [ 先頭へ ]

6.光の帝国 常野物語 恩田陸
集英社97.10発行1700円ISBN4-08-774292-X
おとぎ話だ度 〜・〜・〜
やっぱりいいぞ恩田陸度 ★★★★
やっぱりモデルは遠野?度 ☆★?
 不思議な能力を持つ人々が住む町、常野。そこから散っていく人、そこに戻っていく人を描いた連作短編。
 話ごとに主人公や場面が変わるので「三月は深き紅の淵を」的手法かと思ったら、もっと各作品の繋がりは深かった。途中で前に出た短編の登場人物が絡んできたりする。登場人物の名前は覚えておいた方が絶対いい。
 メインタイトル「光の帝国」で、ハードSFか洋モノファンタジーを連想してしまったが、どっちかと言えば和製ファンタジー、おとぎ話のような話である。泣かせるなあ。
 さてと、現在恩田本はあと一冊あるはずだ。捜さなくちゃ。        [ 先頭へ ]

7.グイン・サーガ65 鷹とイリス 栗本薫
ハヤカワ文庫99.4発行500円ISBN4-15-030612-5
もしや物語の本題!?度 !★☆★!
ナリス様ってどういう人度 ??☆☆
リンダがやっぱりいいぞ度 ♪♪★♪
 ネタバレ有り。
 もうイシュトヴァーンはどうでもいい(笑)。
 今回はともかくナリス様である。私はどちらかというと、ナリスの方こそどうでもいいのだが、今回はどうしてもナリスである。
 以前、ナリス様不憫〜と同情を誘っておいて、いきなり物語最大の悪役はあんたかい!状態になり、やっぱりこの方の評価はくるくる変わるのだが、今回も変わってしまった。もしやナリスって物語的にはいいひとなのか!?
 ということで、グインの登場の謎、レムスにとりついている悪霊、キタイの企みなどについての、物語の核心に違いない話題が出てきた今回。次巻でスカ様がノスフェラスで見たものがあかされることを思うと、まちがいなく核心である。…しかしなぜグインがいない?
 まあ、話は大いに盛りあがっているけども、今回のヒットは善人ナリスよりも鷹のスカールよりも見捨ててやりたいイシュトよりも、リンダなのであった。私は昔からリンダというキャラクターが好きなのである。しかも昔と変わってないよ、嬉しいよ(T▽T)。なんにしても、ナリスのそばにああいう子がいるっていうのはいいことだね…って、未練たらしいが、やっぱりイシュトのそばにいてもらいたかったなあ。ふう。あ、でも、表紙のリンダ(だよね)はイメージじゃなーい。
 さて、帯にギネスブック申請中とある。これが申請を受理されて載るのはいつのことになろうか。        [ 先頭へ ]

8.無印おまじない物語 群ようこ
角川書店94.12発行1165円ISBN4-04-872836-9
ただより高いものはない?度 ☆☆☆☆
苦しいときは神頼みするだろう度 ★★★★
叶う叶わないって気の持ちよう?度 ☆☆☆☆
 さて、無印シリーズが続いていく。今回は、女の子なら誰でも一度はしたであろうおまじないシリーズだが、内容は一般的なおまじないと言うよりも神頼みも含めて全般的に扱っている。
 で、どっちかといえば、そういったものをしょうがないなー的に見ているものが多い。神頼みをしたことでかえって変なことになったり、とか、なかなか笑うに笑えない怖さがある。
 うまいところは、ある意味怖いようなその状況を、さらっと生活感をこめて書いてしまうところなのだ。
 ということで、目指せ無印シリーズ全制覇なのだ。でも、どれだけシリーズがあるのかは、やっぱりよくわからない(笑)。        [ 先頭へ ]

9.レクイエム 篠田節子
文藝春秋99.1発行1619円ISBN4-16-318190-3
長編だと思って騙され度 !???
真の恐怖は現実にあり度 ★((((;^^)
定価もミステリー度 ★★★★★
 まず、定価のお話をしましょう。消費税が3%当時は、本の値段は大体税込みで1600円とか1750円とかのきりのいい値段にしたものだった。でも、5%になってからは、逆に本体価格をきりのいい値段に設定し、税をあとでプラスするという形になった。なのに、99年発行のはずのこの本が、こんなに中途半端な価格設定なのは何故なの?
 さて、目次を見たら、どうも長編くさかったので、長編だと勝手に信じたが、読んだら短編集だった。短編だと思って目次を見かえすと、確かに短編集に見えるからくやしい。
 ということで、最後の短編「レクイエム」が本のタイトルとなっていることからでもわかるとおり、死んでいく人、それをとりまく人を描いた短編ばかりである。不思議な話もいくらかあるが、どちらかと言うと、現実的な話の方がかなり怖い。バブル崩壊で人生を大きく左右された男の話、母親に虐待されてもそれを言えない子供の話、戦時中に悲惨な体験をした男の話など、重いテーマがしっかり活きている。貴志祐介さんの「黒い家」を読んだときにも思ったが、やはり現実的な話が下手な呪いとか出てくる小説よりもよっぽど怖い。現実にあったとしてもまったくおかしくないってのがねー…やはりぞっとさせるのだ。        [ 先頭へ ]

10.新宿熱風どかどか団 椎名誠
朝日新聞社98.10発行1500円ISBN4-02-257288-4
不思議なタイトルだなー度 (^▽^)(^▽^)
実録小説度 ★★★☆★
波乗り度 ☆☆☆★☆
「本の雑誌血風録」に続く、実録小説(やっぱり一応小説らしい)シリーズ。しかしなんてタイトルなんだろう(笑)。内容を読んでいると、椎名誠さんのタイトルの付け方がよっくわかるから、きっとこれも勢いでいっちゃっただけだろうなあ。
 とうとうサラリーマンもやめた椎名さんの、物書きになっていく過程がある。すごく波に乗っているという感じ。波が来るってのは、こういうことなのかなあ。
 途中に入る沢野ひとしさんの四コマ漫画もなにげに訳わかんなくておもしろい。発想がさっぱりわからん。うむ。        [ 先頭へ ]

11.11月そして12月 樋口有介
新潮社95.4発行1262円ISBN4-10-404501-2
ジャンル不明度 ???△
テーマ不明度 △▼△▼△
下手な青春小説度 ●▽○▽●
 いや別にジャンルがどうでも、テーマなんてなくてもいいのよ。小説なんだから、面白ければ。こっちはただの一読者なんだし。…でも面白くないとイヤなのよ(ちなみに「面白い」とは、感動できるとか素直に笑えるとか先が読みたくてとかなんでもいい)。
 ってなことで、てっきりミステリかと思ったら全然そんなことなくて、なんか適当に朝起きて夜寝てーってなふうに中途半端な感じがする。青臭い純文学(青臭くない純文学もあるし、個人的には純文学も好きなんだけど)で、しかも文章もあんまりうまくない。外した〜。        [ 先頭へ ]

12.きっと君は泣く 山本文緒
角川文庫97.7発行520円ISBN4-04-197003-2
生きる希望が湧いてくるよ(笑)度 p(^^)q
初読のときより面白かった度 ★★★★
生きることは簡単なんだ度 ♪♪♪♪♪
 過去の私の名台詞に「死ぬことは簡単かもしれないけど、生きることはもっと簡単だ」というものがあった。何気なく口にしただけなんだけど、聞いていた友達が名台詞だと言った(笑)。
 まさにそんな感じの本。実は、もう何年も前のことになるが、一番最初に読んだ山本文緒作品がこの本だったのだ。今はなき某書評誌で紹介されていたのがきっかけなのだが、主人公のオンナが、すっげ〜イヤなヤツなのさ。オンナは美人でなんぼ、みたいな(しかもこの主人公、整形してる)。まさに鼻持ちならない〜〜〜って感じでね。女主人公でここまで嫌いなのは、あとにも先にもこれが突出(ちなみに男主人公で嫌いだったのは、浅田次郎氏の「プリホ」の主人公)。
 だが、今読みかえしてみると、この女のイヤさ加減がわかるのだ。顔と要領のよさだけで生きてきたような女の末路という感じだが、どん底まで不幸になっても、それでも生きていってみようかってところはスバラシイよ、はっきり言うけど。決して「頑張ろう」じゃない。とりあえず生きていくしかない、なのだ。
 今、自分が不幸だと思っている諸君、ぜひこの本を読んでみて。小説の中のことだけど、世の中には自分より不幸なヤツなんてたくさんいるなあと感じいってしまうこと請け合いだから。いや〜、最後には、この主人公に同情しちゃったよ、わたしゃ。        [ 先頭へ ]