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2000年ベスト10

ここは、ことこが2000年に読んだ本のベスト10コーナーです。
あくまでも読んだ本なので、発行年月はもっと古い本が多いです。

[ INDEX ]


1位…草原の椅子 宮本輝
2位…落花流水 山本文緒
3位…壬生義士伝 浅田次郎
4位…麦の海に沈む果実 恩田陸
5位…沈まぬ太陽 山崎豊子
6位…青の炎 貴志裕介
7位…ボーダーライン 真保裕一
8位…贋作師 篠田節子
9位…柔らかな頬 桐野夏生
10位…プリズム 貫井徳郎
番外…もう君を探さない 新野剛志

 
 1位「草原の椅子 上・下」 宮本輝
 今年の一位、マイベストは間違いなくこの本、上下巻の2冊もの。
 とても優しい話で、色々な人の人生が書かれるが、しっかりした骨組みと暖かい(でも厳しい)視線でもっていった話。なによりも久しぶりに読んだこの方の文章のうまさにびっくりした。なんのことはないただの地の文を読むだけで泣けてくるのは、この小説がはじめてだった。
 一枚の椅子の写真に、最後はぬいぐるみが座るかもしれないという、それだけで希望が持てた。魔がさした人々と、そういった人々によって人生を変えられた人々と、ひとりの子供。善人ばかりではない世界だが、きっと悪人ばかりでもない。
 シルクロードという砂漠の中を旅してきた宮本氏が書いた、逸品。

 2位「落花流水」 山本文緒
 こちらはとても綺麗な連作集。
 かなり絶望的な状況の中で、けれど女達は幸福に生きていた。ひとりの女とその母・娘の3人の奇異な人生を、とても鮮やかに描いていた。
 毒ももちろんあるけれど、毒があるから却って綺麗に見える。女達は毒を含みつつ、「自分」にしかできない生き方をいつのまにか選んでいく、その過程がとても素敵だった。もちろん、こんな人生をやってみたいかと訊かれたら、ちょっと考えてしまうけれど(笑)。

 3位「壬生義士伝 上・下」 浅田次郎
 私の知っている新選組は、ある意味英雄だった。
 だが、ここで書かれている新選組は「人殺し」である。そしてその中でも腕のたつ男だった吉村が、明治からその後も生き残った人々によって語られていく。
 血みどろの侍、その中にある義とはなにか、義士とはなにか、武士とはなんなのか。これもまたひとつの英雄譚なのかもしれないが、そう書くのはあまりにも哀しい。
 織り込まれていく吉村の最期もまた見事。この部分だけでも立派にひとつの物語として成り立つ。
 さて、吉村のことを訊きまわっていた人物は誰なのか。なんのためにそういうことをやっているのか。ちょっとその辺も興味ある。

 4位「麦の海に沈む果実」 恩田陸
 ひとつの閉じこめられた世界、ある学園の中で起きる殺人事件。その犯人は? 主人公の恋も入ったりして、なかなか綺麗な物語。
 と思っていたら、ラストにやられたけどね。なかなか見事。
 全体的にゴシック調の舞台設定、人物設定、青春小説っぽい語り口、その辺全部ひっくるめて、たいそう好み。今年、恩田さんは私の中でもブレイクしていて、好みは人それぞれ分かれると思うが、私はこの作品がイチオシ。
 少年の描写とか、本当に青春小説だけどね。でも綺麗なんだ、この部分。
 もう本当にこの話は好み。「好み」のツボで言ったら、この作品が一番だったかもしれない。この分野の恩田小説、もっともっと読みたい〜!

 5位「沈まぬ太陽 全5巻」 山崎豊子
 さて、1位は不動だけど、それ以下はもうこの辺までごった返しで、実はこの作品はもっと上に位置してもいいと思う。本当にこれが1位でないのは不思議でならないほど重くて、小説として「楽しめた」作品。特に御巣鷹山ジャンボ機墜落事故を描いた三巻は、ただただ圧巻で、死んでいった人々、遺された人々の気持が重くて辛くて仕方がなかった。
 加害者になった理由はあれど、被害者になった理由はない。事故とは、加害者の倫理観が問われるものだと思った。現実の事件を振り返ってみると、たくさんの人生を変えてしまった責任は、はたして誰がどうやって取ったのだろうか。

 6位「青の炎」 貴志裕介
 これはまた、えらく上質の青春小説だった。
 ひとりの少年が、ひとりの男を殺すまでの物語と、殺してからの物語。彼は男を殺すまでに緻密な計画をたてて、実行するが、それで幸福になったわけではない。その心の動きが、ただの「キレる」若者とは違い、後悔と苦悩にさいなまれることになる。
 静かな、けれど熱い炎。少年の中で燃えていたものは、ひとつの結論に向かって走っていた。その結果が、辛くて、けれどそれでも爽やかと言ってしまいたくなる出来だった。

 7位「ボーダーライン」 真保裕一
 さて、何の境界線かと言えば、他人を殺せる人間と、殺せない人間の境目。笑って人を殺せる犯人と、咄嗟の場になっても人を殺せない探偵。ふたりが向きあったとき、探偵は犯人を銃で撃つことができるのだろうか。
 アメリカの話で、探偵が職業として成り立っている社会の中、この話は説得力があった。丁寧だけど、ばっちり力技の物語で、この境界を超える人間と超えられない人間の差はなんだろうと考えさせられた。ハードボイルドの逸品。

 8位「贋作師」 篠田節子
 もう8、9年前の小説なんだけど、いや〜、面白かった。
 とってもストレートな謎解きミステリ。どんどん新しい事実が出てきて、想像が覆されたり、物語が二転三転していくさまは、面白くてたまらない。
 しかも、その中に渦巻く情念がこれまた逸品なのだ。本当に篠田節子は、芸術家や宗教家の類の人々の情念を書かせたらピカイチだと思う。まだ初期の作品だけに、今の篠田さんは絶対書かないだろうと思われるところが、またくすぐられる。私のめちゃめちゃ好きなタイプのミステリだ。

 9位「柔らかな頬」 桐野夏生
 子供の失踪が、すべてを変えた。
 もしも子供がそのまま何事もなかったら、主人公は夫と子供を捨てて、不倫相手との恋愛に走ってしまったかもしれない。主人公と死を目前にした元刑事は出逢うこともなかったに違いない。いくつもの人生が、別の変化を遂げたはずだった。
 子供の失踪の真相はどうなのか。問題はそこでないというのが、この小説のすごいところだ。真相を知ることに、この小説を読む意味はないのかもしれない。

 10位「プリズム」 貫井徳郎
 えらく綺麗な構成の小説である。貫井氏作品は、かの名作「慟哭」から、構成のたいそううまい作家という印象があるが、これもまたその印象を強くさせた作品だった。
 ひとつの死に関する四つの推理。巡り巡って、はたして真相やいかに? 個人的に「柔らかな頬」とか、この小説とか、ラストがはっきりしないのは苦手なんだけど、それを補ってあまりある面白さ。

 番外・新人賞「もう君を探さない」 新野剛志
 今年新設の賞で、来年もあるかはわからない(笑)。
 ともかくこの人、描写力はそこらの作家よりもとてもあると思う。かなりストレートな話なんだけど、これにひとひねり入るようなら、ブレイクするんじゃないかなあ。個人的にとてもブレイクしてもらいたい方です。

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