このミステリーもすごい!
このページでは、私と私の友人2人による投票で、国内ミステリーのベスト20を紹介したいと思います。対象作品はオールタイムの広義のミステリーとします。
得点集計の方法としては、3人にそれぞれ国内ミステリーのベスト30を挙げてもらい、1位を30点、2位を29点…
として集計したいと思います。なお、ここで示された順位はあくまでも人気投票であり、決して評価ではありませんので御了承ください。(実施日1998年12月1日)

国内ミステリーベスト20
| 順位 | 書名 | 著者 | 得点 |
| 1 | 占星術殺人事件 | 島田荘司 | 59点 |
| 2 | ドグラ・マグラ | 夢野久作 | 58点 |
| 3 | 不連続殺人事件 | 坂口安吾 | 54点 |
| 4 | 虚無への供物 | 中井英夫 | 49点 |
| 5 | 斜め屋敷の犯罪 | 島田荘司 | 44点 |
| 6 | 時計館の殺人 | 綾辻行人 | 43点 |
| 7 | Wの悲劇 | 夏樹静子 | 42点 |
| 8 | 生ける屍の死 | 山口雅也 | 41点 |
| 9 | 火車 | 宮部みゆき | 39点 |
| 10 | 匣の中の失楽 | 竹本健治 | 31点 |
| 10 | 十角館の殺人 | 綾辻行人 | 31点 |
| 12 | 砂のクロニクル | 船戸与一 | 29点 |
| 13 | 黒い家 | 貴志祐介 | 28点 |
| 14 | 蒼穹の昂 | 浅田次郎 | 27点 |
| 15 | ソリトンの悪魔 | 梅原克文 | 26点 |
| 15 | 密閉教室 | 法月倫太郎 | 26点 |
| 17 | 屍鬼 | 小野不由美 | 25点 |
| 17 | 山猫の夏 | 船戸与一 | 25点 |
| 19 | 孤独の歌声 | 天童荒太 | 24点 |
| 19 | 異邦の騎士 | 島田荘司 | 24点 |
| 19 | 翼ある闇 | 麻耶雄嵩 | 24点 |

<総評>
やはり、またしても、・・・さまざまないい方ができようが、1位は「占星術殺人事件」であった。緻密な論理の
展開に加うるに、Sの言う「アクロバティック」な作品とするのが一般の評価であろう。日本では本格がもはや読まれなくなっていた頃、
いきなり登場した「占星術」はかなり批判をあびたという。しかし島田荘司愛好家Sの「これまで書かれた最もすばらしい推理小説のひとつ」という意見もあったのだ。
NはこれをSに読まされ感服、「探偵小説を馬鹿にしてすみません」とあやまり、Aは「おもしろく読むには読んだが」、犯人がわかるとその他の人物が「不要な余計な人物に思えてくる」などの不満をもらしている。
そのとおりであるが、小説の論理でなく本格の論理で考えると江本君などまさに必要不可欠、この人物を用意する作者の周到さがうれしい。
ともあれ、「占星術」が、島田荘司の数多い名作のひとつであり、日本で最も著名な探偵小説のひとつであることは確実である。
2位は異色の探偵小説「ドグラ・マグラ」である。読んだ人間を狂気の渦へといざない、目眩めく漆黒の闇へと飛翔させるこの作品は、まぎれもなく日本推理小説史上最高傑作であろう。
「狂人の狂人による狂人のため」の本書を未読の方はぜひともこの作品と斬り結んでほしい。それが駄目なら齧ってほしい。それでも駄目なら舐めるだけでもよい。
正統派本格推理小説である坂口安吾の「不連続殺人事件」が3位にランクインした。豪邸に招待された奇人たちの錯綜する人間関係の中で、脅迫状が舞い込み次々に殺人が起こるというオーソドックスな推理小説である。
ただ、メイントリックがアガサクリスティの某作にそっくりなため、それが前2作に及ばなかった理由かもしれない。
推理合戦や推理小説談義、衒学的知識などに彩られ、アンチ・ミステリーあるいはメタ・ミステリーなどの原形とも言うべき中井英夫の「虚無への供物」が4位に。
昨今のネタにつまった新本格系のエセアンチとは違い、重厚で面白いのはさすが。5位は島田荘司の「斜め屋敷の犯罪」である。この頃の島田荘司は読者の期待を裏切らなかった。
本作でも凄まじい「アクロバティック」なトリックで我々を驚かしてくれる。ただ、機械トリックであるがゆえ、インパクトという点で「占星術」に及ばなかった。
唯一3人の投票が重複した綾辻行人の「時計館の殺人」が6位である。館シリーズの最高峰といっても過言ではないメイントリックの壮大さとラストの喪失感が印象深い。
7位には夏樹静子の「Wの悲劇」がランクイン。クイーンに挑戦したとも思える本書は、倒叙小説の形を取りながら、フーダニットも楽しめる名作である。
8位は異色の本格、山口雅也の「生ける屍の死」である。死者が甦る世界で何故殺人が起きるのか?
この異常な謎を極めて論理的に解決する本書には誰もが酔いしれるだろう。9位は宮部みゆきの「火車」。
これを1位に挙げたジャスコさん曰く「まるでラストシーンから書いていったようだ」。自分が追う者が全く見えないという不安感こそ
究極のサスペンスである。10位には同点で竹本健治の「匣の中の失楽」と綾辻行人の「十角館の殺人」がランクイン。
前者はアンチ・ミステリーの終着駅とも言えるのではないか。小説の中の現実と作中作が次々と入れ替わり読者を惑わせる。
後者は作品そのものよりも歴史的意義で評価の高い綾辻行人のデビュー作である。ジャコウさんやブルマさんなどは、あまりの文章の下手さに辟易していたようだが…。
11位以下にも名作が目白押しである。まず12位には船戸与一の大作「砂のクロニクル」が。ジャコウさんのみの投票だがここまで上位に。
13位はこれまたジャコウさんのみの投票である貴志祐介の「黒い家」。この作品は和歌山カレー事件にそっくりだとか…。
14位は著者浅田次郎に「この物語を書くために私は作家になった」と言わしめた「蒼穹の昂」がランクイン。15位には同点で梅原克巳の「ソリトンの悪魔」と法月倫太郎の「密閉教室」が。
前者は今やSFもミステリーと呼ばれることを証明したような作品。後者は法月倫太郎のデビュー作。「虚無への供物」を強烈に意識しつつ、正当な本格になっているところが素晴らしい。
17位は小野不由美の超大作「屍鬼」と船戸与一の「山猫の夏」が同点で並ぶ。前者は今年の「このミス」ランクイン有力候補であり、後者は船戸与一の雄大な構想を最も強く感じさせる、
南米3部作の最初の作品である。19位には天童荒太の「孤独の歌声」、島田荘司の「異邦の騎士」、麻耶雄嵩の「翼ある闇」と3作品が同点で並んだ。
「孤独」は天童荒太の快作。「異邦」は記憶喪失ミステリーの最高傑作。島田荘司はこの作品でトリックだけで読ませる作家でないことを証明した。
「翼」は新本格の極右麻耶雄嵩のデビュー作。21歳の現役大学生が書いたとはとても思えない精巧な筆致と重厚なプロットが素晴らしい。(すみません。11位以下は決して手を抜いたわけではなく、未読の作品があるので書けないんです。)
今回のアンケートでは本格系が圧勝した。これは選者の圧倒的少なさとジャンルに偏りのある私の投票に起因すると思われる。
まあ、そうはいっても11位以下は新旧入り交じり、ジャンルも多岐にわたったので、全体としてはなかなか良い21作品になったと思う。
次は誰か海外編をやってくれ…(俺は30作も投票するのは無理だが)。
最後に作家別得票数を
1位 島田荘司 175点
2位 綾辻行人 137点
3位 横溝正史 75点
4位 船戸与一 69点
5位 夢野久作 58点
<選者紹介>
ブルマ
早稲田大学在学中。私とは高校の同級生でもう7年近い付き合いである。ミステリーの読書量は私と大差ないが、
ミステリー以外の読書量が非常に多く、総読書量は今回の3人の選者の中では最も多いだろう。好きな作家は栗本薫、スティーブン・キングなど。
好きな作品は「グインサーガ」、「トミーノッカーズ」など。しかしその膨大な読書量ゆえ、架空の女性にしか恋することができなくなってしまい、
女日照りが続いてしまう今日この頃であることを私は知っている…。
ブルマさんの国内ミステリーベスト30
ジャコウ
学習院大学在学中。私とは中学の同級生でもう10年(!)近い付き合いである。ミステリーの読書量は今回の3人の選者の中では最も多いだろう。
好きなジャンルは冒険小説だが本格の読書量もかなりのものである。ミステリー以外に何を読んでいるかは不明。
好きな作家は大沢在昌、船戸与一など。しかし彼は恥ずかしがって誰にも言わないが、本当に最も愛し尊敬している作家及び作品は、門田泰明の黒豹シリーズであることを私は知っている…。
ジャコウさんの国内ミステリーベスト50
私
詳しくはこのホームページのプロフィール欄を参照。ミステリーは好きだがハードボイルドや冒険小説をミステリーとは認めない
ガチガチの本格派です。従って読むジャンルもほとんど本格推理小説だけであり、他はほとんど読まない。
今回のベスト20で本格が圧倒的に強かったのは私のせいでしょう。
私の国内ミステリーベスト50
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