■  シャヤーズX峰(5884m)


 お詫びと訂正

 位置の概念  アプローチルート図  キャラバンルート図  クライミングルート図

 シャヤーズX峰(5884m)はパキスタンの北部に位置する東部ヒンドゥ・クシュにある。北面のシル谷から見ると、氷河上に雪に覆われた三角錐の端正なピークがどっしりと聳えている。主峰はパウエル村からも見えるようであるが、どれがピークなのか顕著でない。 X峰(5884m)は過去、試登されていますが1993年に小さな私達の山岳会によって初登頂れた。

 私達はラワルピンディからディールへ行き、ロワライ峠を越えてチトラールへ。チトラールからジープでパウエルまで行き、パウエルからヤルフーン川に沿ってキャラバンを開始し2日でヨシキストへ。ヨシキストからシル・ゴルへ入り、キャラバン1日でBC(3800m)地点へ到着した。BCはシャヤーズX峰(5884m)の北面に位置し、ピークを望める。C1(4300m)へは左岸を行く。お花畑を経て、脆い崖のトラバースをする。眼下に山上湖が横たわっている。驚いたことに山上湖の向こう岸では馬の放牧をしていた。冷たい山上湖からの流れを渡渉してモレーンを超えるとシャヤーズは指呼に聳える。この見晴らしのいい氷河上にC1を設置。ここで初めて氷河を横断してシャヤーズ基部のアイスフォールに取り付く。いよいよ本格的な登山になりザイルを使用する。



 ルート偵察の二人は雪の向こうに消えて行った。私は急峻に聳えるシャヤーズX峰(5884m)を見上げていた。風はなく、ときおりアイスフォールの崩壊する音が静寂を突き破る。陽を受けた背中は暑く、影の部分は冷たかった。振り返ると遠くに山塊が幾重にも連なっている。目に映る変化は何もなく。静止した眺めである。この緩やかな時の流れが悠久の時を刻んできたのだろう。7月2日(C2下より)

C2よりC3コルへ 頂上へ延びる足跡


 C2(4900m)はアイスフォール只中で、すぐ近くまでクレバスが伸びてきていた。クレバスを避けながら登り上がると傾斜は緩くなりコル下のプラトーにでる。そこにC3(5400m)を設営、絶好のサイトであった。行く手には傾斜50度はあると思われる雪壁が立ちはだかり、中央付近には横に走る長いクレバスが威圧していた。フィックスロープを張り、雪壁を突破すると視界は一気に展開する。そこから頂上直下までは平坦であったが、直下基部から頂上までは急峻な最後の登りが待っていた。頂上は巨大な塔の様に聳え、南面は雪を寄せ付けない切り立った垂壁であった。

クレバスと垂直に延びる足跡 天候にも助けられて無事登頂


 BC設営から8日目の7月6日、C3を5時に出発。頂上基部からは一人ずつ確保しながら登った。頂上の数メートル手前で、二人はラストの私を迎えてくれた。そのささやかな気持ちが嬉しかった。アタックキャンプのC3出発から7時間27分後の12時27分、ザイルで結び合った3人は一緒にピークを踏んだ。これまでの苦労が報われ、夢が叶った瞬間であった。隊長がBCの隊員と交信を始め、登頂成功のお祝いメッセージが届けられた。私にも交信の番が回り、BC隊員の声を聞いた途端に熱いものが込み上げて溢れた。この成功はBC隊員を始めとする多くの方々の協力により成し得たものであった。
 成功も束の間、私はBC撤収後の帰りのキャラバンで
強烈な腹痛に見舞われ、軍のヘリでチトラールまで運ばれた。