辺りにはいろいろなものが見える
あなたは何を手に取る?
稚拙な筆で黒く塗られた綺麗な宝石箱
手に取ってみると微かに血の匂いがする
無秩序に文字が連ねられたノ−ト
なかに綴られているのは風の叫び
旅人が自らの言葉を預けた泉
その奥には幾多の夢が沈んでいる
風を知らせ風に揺られ風を揺らす鈴
冷たい風のなかで独り新しき訪れを歌う鈴
誰とも知れぬ者が残していった手帳
風の谷に寄せた取り留めのない言葉
歌う風たちのなかで彷徨う手を
静かに引く闇色の風
闇に満たされたなかで唯一白いもの
けれど誰かの叫びで黒く塗られることを求めているもの
訪れては消える風たちを最初に
書き留めてみようなどと考えたのは誰
深い深い穴の底で見上げた銀の月
あそこまで飛べれば外へ出られる
夜よりも黒い羽を持った紅い瞳の鴉
主への手紙をくわえて飛ぶ闇の住人