※右端で折り返してお読み下さい             アンパンマン そうだうれしいんだ ヤクの悦び たとえ腕の痕がうずいても (間奏) なにが君の幸せ カミを喰ってブッとぶ ラッシュこないまま終わる そんな時は追加だ 忘れないで注射痕 こぼさないでよだれ だから君はとぶんだアッチまで そうだ恐れないで 鼻孔吸引 シャブとポンプだけが友達さ あ、あ、アンパンマン 怪しい君は ゆけみんなに夢みせるため  「空は海の色が映ってるから青いんだよ」などという戯言でも信じてしまいそうなほど澄みきった空を全身にビンをつけた男が飛んでいる。  「うわぁー。今日もいい天気だなぁー。今日のパトロールも終わりにして、もうそろそろ瓶詰め工場に帰ってCビン一本すっとこうかな」  アンパンマンが帰ろうとしたその時、彼の耳に聞き慣れた鳴き声がする。  「えーん。えーん」  「あれぇ、うさぎさんじゃないか。どうしたんだろう?」  うさぎさんは緑一面の草原に座り込み、泣いている。どうやら仕事らしい、そう思いアンパンマンはうさぎさんのそばへと降り立った。  「どうしたんだい?うさぎさん」  彼女はその声に振り向いた。泣き腫らしているその大きな目は、痛々しい。  「あっ、アンパンマン・・・・・。えーとね、ぐすん。アル中のお父さんがね、男つれ込んできたお母さんをぶち殺して首吊っちゃったの」  いかにも気の毒だという表情を顔に浮かべ、うさぎさんの肩に優しく手を置くアンパンマン。  「それはかわいそうに、こんなときはこれをお吸い」  そういうと、アンパンマンは自らの体にぶら下がっているビンを握り、瞬間、力を込めた。小気味いい音を立てて、ビンは彼の体からもげた。そのビンをアンパンマンから差し出されたうさぎさんは、それを受け取り、少し、吸った。  「ありがとう、アンパンマン。少し元気が出たよ」  「それはよかった。それじゃあね、うさぎさん。ばいばーい」  飛び去るアンパンマンに手を振るうさぎさん。  「キャハハハハ!そこの妖精さんはなんて名前ー?」  草原にウサギさんの嬌声がこだまする。  倉庫のような建物の前に降り立つアンパンマン。ドアを開け、中にはいる。  「あ、アンパンマン、パトロールから帰ってきたんだね」  建物の前にいた、瞳が空虚な光で満たされている老人が、彼に気づいた。  「あ、シャブおじさん。ただいま。いったいどうしたんですか?」  シャブおじさんと呼ばれた老人の後ろで、犬と少女が追いかけっこをしている。  「ペケとマッジクマッシュちゃん?ペケがねえ、マジックマッシュちゃんのマジックマッシュルームを食べちゃったのよ」  アンパンマンの間に、ちょうど今寝室から出てきた女性が答える。純正トルエン、略して純トロを愛するトロ子さん。シャブおじさんの愛人だ。  「待ちなさい、ペケ」  「アン!アン!」  瓶詰め工場の中に甲高い声が響く。  「ダメだよ、ペケ。マッシュルーム食べたあとに走り回るとドンギまっちゃうよ」  ペケは元々警察犬だったが、マッポのガサ入れに来たときに、シャブおじさんにダブルダイアモンドというペケの一種を喰わされ、瓶詰め工場の一員に加わった。  額にMとかかれた少女、マジックマッシュちゃんは疲れて肩でいきをしている。  瓶詰め工場で、今日も平和な一日が過ぎようとしていたが、それは息急ぎ切って工場に入ってきたガスパンマンによって破られた。  「大変ですよ!シャブおじさん!どうやら町でバッドトリップショーをやるらしいですよ!」  マジックマッシュちゃんがガスパンマンに聞く。  「バッドトリップショー?何それ?」  「ははは、、マジックマッシュちゃんはマッシュルームかじってるだけあって子どもですねぇ。バッドトリップショーっていうのはねえ。レンダルミンかなんかを食わせてどっかからさらってきたスケにエル打ってみんなでマワす集まりのことですよ」  そういうガスパンマンだって瓶詰め工場の一員の中で、一番度胸がないので、ガスパン程度のことしかやったことがない。  「それおもしろそー!わたしもいくー!」  「アン!アン!」  「よし!それじゃあアンパンマン号で出発だ!」  早速瓶詰め工場のメンバーは倉庫においてある、アンパンマンの頭部を燃やしている車に乗り込んだ。アンパンマン号はビンの形の、黒光りをしているその車体を走り出させた。  「いやぁー久しぶりだなあバッドトリップショーも」  「シャブおじさん、僕は今日エルじゃなくて自分でカクテルしたドラッグを使ってみようと思うんです」  「へぇ、何を使うんだい?」  「アップ系とダウン系をカクテルするとすごいトび方をするというんで」  「それは楽しみだね、みんな」  「アン!アン!」  こうしてアンパンマン号はバッドトリップショー会場へと爆走していく。やがて、会場。みな思い思いに手の甲のコークを吸ったり、砕いたガンジャを食ったりしている。  「やあ、カバオ君。スケは誰が連れて来るんだい」  カミを食って目がヤバくなっているシャブおじさんに声をかけられたカバオ君は振り向いた。ちょうど彼はエルをスプーンの上であぶっているところだった。  「あ、アンパンマン。みんなにバッドトリップショーを開くって言った人がさらってくる筈なんだけど」  その時、アンパンマン達の上に投網のような物が投げられ、一網打尽にされてしまった。  「だ、誰だ!」  「ははははは、は行!」  「バ、バイキンマン!」  バイキンマンとはここら辺を管轄とする警察のマッポだ。いつもアンパンマンたちの邪魔をするので、バイキンの様に忌み嫌われ、バイキンマンと呼ばれている。元マルボーらしい。  「この俺様の仕掛けた罠だとも知らずにのこのこと集まって来おって。いくぞド近眼!瓶詰め工場のを強制捜査するぞ!」  「うん!ガスパンマンさまを更正させるためなら・・・・・・」  網の中でもがくアンパンマンたちを尻目に、パーカーに乗ってバイキンマン達は去っていった。  「大変だアンパンマン、ヤクが全部もっていかれてしまう!」  アンパンマンは渾身の力を込め手編みを千切ろうとするが、網は切れる素振りさえ見せない。  「うーん、千切れない」  「そうだ!これを使えば網を切れますよ!」  ガスパンマンはそういってポケットからライターを取り出す。  「そうか!ライターを使えば網を焼き切れる!流石ガスパンマン!」  「じゃあ網を焼き切りますよ」  一方その時瓶詰め工場ではバイキンマン達がヤクを運び出していた。「クックック、これであいつらも終わりだ。今までは証拠不十分でヨンパチの拘留だけだったが、これだけのヤクが出てくれば、10年はぶち込める」  バイキンマン達がヤクを運び出そうとしていたその時、瓶詰め工場の扉何者かによってぶち破られた。  「だ、誰だ!」  「そこまでだ!バイキンマン!」  「ち、早かったなアンパンマン。しかしこの私たちを止められるかな!?」  「止めてみせるさ!喰らえ!」  バイキンマンに飛びかかるアンパンマン。しかし。  「ふん、微温いわ!」  空中からチョッピングライトを繰り出そうとしたアンパンマンに、バイキンマンは狙いすましたソバットをたたき込む。  「ぐはぁっ!」  「ははははは、は行!」  「な、何でアンパンマンがこうも簡単に」  地上でのた打ち回っているアンパンマンを見下ろして、シャブおじさんが呆然とつぶやく。アンパンマンの苦しみ方を見ると、只事ではなさそうだ。どうやら折れた肋骨が内臓に刺さっているようだ。  「アンパンのやりすぎで骨がボロボロになっているからな、一発でこの通りだ。残念だったな、アンパンマン。バイバイキーン」  バイキンマン達がパーカーに乗って去っていこうとしたその時、シャブおじさんが動いた。  「仕方がない。アンパンマン、新しいヤクだよ」  言うが早いか、シャブおじさんは白衣の中からポンプを取り出し、まだもがき苦しんでいるアンパンマンの腕に突き立てた。透明の液体がゆっくりとアンパンマンの体内へと流れていく。その途端、アンパンマンは震えが止まり、瞳にいような輝きを宿し、立ち上がった。  「元気百倍、アンパンマーーン!」  「な、何だと!?何故奴が立ち上がれる?」  バイキンマンの驚きに答えるように、シャブおじさんが話し出した。  「今アンパンマンに打ったのは、エンジェルダストという合法ドラッグだ。正式名称はフェンサイクリジン。略称PCP。元々は手術用麻酔としてサニールという名前で発売されたんだが、強力な酩酊状態と痛覚減少を引き起こすだけじゃなく、機能異常や怪力を発することもあったんで、今では当然人体への使用は禁止されているがね」  「な、なんでブツを持ってやがるんだ・・・・・・」  顔面の筋肉が弛緩したことによる異様な笑みを浮かべながら、アンパンマンはパーカーに歩み寄る。  「ブワァイキィンマァン!もぉう好きにはさせないぞぉう!アン、プワァァーーーーンチ!」  アンパンマンの拳がパーカーに直撃する。アンパンマンの拳が自らの力に耐えきれず、見るも無惨にひしゃげるが、気にせず拳を振り切る。パーカーが、ふっとぶ。  「ぐ・・・・・・、こ、これで勝ったと思うなよ!」  バイキンマン達が乗ったパーカーは、例えるなら空を駈ける一筋の流れ星になって、空の彼方へと消えた。  「やったあ!アンパンマン!」  「アン!アン!」  「助かりました、シャブおじさん」  「これでみんなのヤクも守れましたね」  「だけどアンパンマン、大丈夫かい?」  アンパンマンのつぶれかけた胸と砕けた拳を怪訝そうに見ながら、シャブおじさんが聞く。  「こんなのCビン一本吸ってりゃ直ちゃっいますよ」  「それもそうだね」  「アン!アン!」  こうして、瓶詰め工場のメンバーの今日も平和な一日が過ぎていった。


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