申立人によって問題とされたTBSの報道は、1.「80万ドルのキャッシュで家を購入した」とした点と、 2.「疎遠な妻、別居や離婚」などと申立人や夫妻の関係を報じた点である。
このうち 1. については、TBSによれば、キャッシュか否かその支払方法は取材で確認できなかったので、「とも伝えられている」との表現で放送したとされる。しかしながら、申立人が主張するように、本件放送内容は事実と異なっており、後にTBSも誤りを認め、96年11月8日の放送で、実質的な訂正を行ったことは前記申立要旨や答弁要旨で明らかである。
キャッシュか否かの誤報は、直ちに権利侵害とまでは言えないが、重要な事実についての誤りであることは確かである。
この点につき、後の放送で実質的な訂正がなされたことは、もとより評価できるが、正式な訂正の形を取っていないこと、また、申立人はすでに96年の5月中にはこの点の誤りを指摘しており、一部のメディアも5月中にはこの事実を報じているにもかかわらず、TBSの訂正の時期が非常に遅れたことは、放送倫理上問題であったと考える。
また、2. については、こうした離婚等に関する誤報は申立人の感情を著しく傷つけるだけでなく、本件においては権利侵害をもたらす可能性があったことも否定できない。しかしながら、断定的な表現を回避していることや申立人に容疑がかけられていない旨の情報も伝えている点をはじめ、本件放送を全体的に考慮すると、権利侵害があったとまではいえない。
ただし、申立人は96年の5月中には離婚等についての誤りを指摘しているほか、一部のメディアもすでに5月中からこの事実を報道していることなどを考えると、より早期に事実確認の取材を行って、申立人の言い分や、訂正の放送をすることが望ましかったと判断する。
本委員会は、TBSに対し、委員会決定の主旨を放送するとともに、社内に周知徹底させ、今後、事件報道に当たっては、人権をはじめ放送倫理に十分配慮することを強く要望する。