英子さんの部屋(春)

17年前にたくさんの短歌を残し旅立っていった女性がいました。
これらの短歌をとおして今、あの頃交わすことのできなかった
母との会話を楽しんでいます。




山並みを結びてかかる飛行雲春の茜に虹のごと映ゆ

木々の芽は早萌え出でて遠からぬ春を告ぐるや今朝の庭面に

春を待つ心は同じ草々の浅木緑は日々にのびゆく

病窓のまなかいに見ゆ山裾に梅咲きそめて春の近づく

今朝臭う梅の若木よ十八の我が娘と同じ齢を持ちて

杉山に煙り立つごと杉花粉舞い立ちのぼり春一番の吹く

連れだちて今日帰り来しつばくろの何をめあてに古巣をぞ知る

丹精のバラの一輪咲き初めて王者の庭に勝る思いす

咲き残る桜にむごき春あらし雪さえまじる雨の憎さよ

「菩提樹」を子等と唄えば学窓を出でしはるかに思い起こしぬ


夏の部屋へ