創業玩家
リアルな風刺

Kantorates 著
安上がり決死隊 訳

 プラス評価面:許冠文(マイケル・ホイ)が可哀想だ。折角多くの見せ場があるのに、政治的な理由で公開が延期され、やっと公開されたと思ったら注目を受けることができなかった。本当に残念だ。本作品は高志森(クリフトン・コウ)監督作品だが、許冠文と彼との協力は今回が初めてではない。「鶏同鴨講(ホンコン・フライド・ムービー)」などの全盛期の代表作でギャグや時代風刺を含んだ内容は観衆に大いに受け入れられたが、本作品も期待を裏切っていない。更に張達明による脚本は、大陸人との絡みをスパイスを効かせながらもかなりリアルな風刺を見せていて、本作品の見どころともなっている。

 本作品は、スターの共演に頼らず許冠文が孤軍奮闘する構成になっている。しかし、無名の俳優たちやゲスト出演の羅家英、張達明らの安定した演技によって、脚本で意図した内容を忠実に再現できており、アイドルスターの主演映画とは一線を画す仕上がりになっている。主演の許冠文も従来の機関銃のようなトークというキャラから仕草や心情をにじませるコメディに挑戦し、これまでのレベルを維持しつつ新しい試みを採り入れていることは注目に値するだろう。

 ストーリーは表面的には大陸人の奮闘を描いたものだが、各シーンはいずれも現実にあるような展開を見せている。中盤では金銭至上主義のような香港人の醜悪さが描かれ、大陸陣も香港人も同じ人間として捉えられており、ラストは各人が自分を変えることによってハッピーエンドを迎えることになっている。風刺されている内容はそれほど悪意に満ちたものではないのに、何故公開が禁止されたのかよく分からない。

 大スターを揃えれば良い映画が出来るとは限らない。本作品がその好例だ。許冠文は本作品以降、新作を製作していない。本作品を見ると、また彼に新たな作品を作ってもらいたいと心から思うのだ。

 マイナス評価面:製作時と公開時がかなりずれたために、古いと思わせるギャグが登場している。また作品中で1997年の香港返還に対する恐怖を表現しようとする意図が見られるが、返還後の冷静さを取り戻した後に見るとかなり色褪せて見えてしまう。返すがえすも公開が遅れたことが悔やまれてならない。

 本作品で最もインパクトがあるのは許冠文と劉雅麗(アリス・ラウ)のロマンスだ。しかしどうもしっくり来ない。2人の感情の展開も不自然だろう。時勢の風刺のシーン、ストーリー全体の流れ、そして結末、やや単純化され表層的なアプローチになっており、深く考えさせられるまでには至っていない。

Cinespot参照

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