災厄の女神 救命改造計画

救命にあずけられることになった問題医師・雨宮こずえ。彼女はどこにいてもマイペースだった。

進藤とたまきが口げんかしながら医局に入ってくると、神林達に注意された。

(神林達)「シー!!」

二人が神林達が指すほうを見ると、こずえがソファーで舟をこいでおりソファーに倒れこみそうになっている。

(城島)「雨宮先生、まだあのソファーで寝たことないんですよ。」

(神林)「プライド高いから、『こんな粗末なソファーになんか寝られない』ってさ。」

(香坂)「そうなの(苦笑)。」

(太田川)「あ、寝ちゃいそうですよ。」

見ると、こずえの体が大きく揺れており倒れるのも時間の問題という感じになっている。

(馬場)「この頃疲れたまっているから。」

(神林)「楽になるよー。」

(馬場)「行けー、行ってしまえー!!」

神林達は小声でこずえに念を送っている。つい進藤とたまきも固唾を飲んで見守っている。

(秀一)「ちわー、通りすがりの家具屋でぇす!!」

突然の大声に馬場達は驚き、こずえも眼を覚ました。

(神林達)「あぁー」

(馬場)「なんで家具屋が通りすがるんだよ。」

神林達は一様に残念そうな顔をしており、進藤とたまきは苦笑している。そんなメンバーに目もくれず、通りすがりの家具屋はこずえに近づいた。

(こずえ)「オヤジ様。持ってきてくれた?」

(秀一)「もちろんだ、他の客なんか放っておいてこっちを最優先にしたんだから。おい!」

通りすがりの家具屋こと秀一が合図すると、揃いのつなぎの制服を着た男性達が見るからに高級そうな革張りのソファーを持って入ってきた。そして、こずえがそれまで座っていたソファーを外に出し、そのソファーを代わりに置いている。

(神林)「あ、あの雨宮先生。何やっているの??」

(こずえ)「あのソファー、スプリングが悪くて。替えます。」

あっさり言うと、唖然としている他の救命メンバーのことなど気にせずこずえは仮眠室のドアを開けた。

(こずえ)「このベッド、これも替えたいのよ。」

(秀一)「なんてヒドイベッドだ、こんなので寝ていたらこずえの体にどんな悪影響を及ぼすか!なんて可哀想なんだ、こずえ。こんな劣悪な環境で働かされて・・・ここには労働組合はないのか?」

(こずえ)「ここのなんて御用組合よ。」

(香坂)「労働組合は仮眠用のベッドまでは感知してないと思うけど・・・」

(神林)「それに、そのベッドそんなに言われるほど悪くはないと思うんですけど。」

(秀一)「何を言っているのかね。この堅さ!スプリングが全然感じられない。こんなベッドで寝ていて、こずえの美しい骨格に何かあったら君は責任取れるのか?どうなんだ。」

秀一に責められて神林は困っている。

(太田川)「このソファー、うちの応接室に置いてあったソファーと同じ感じだー。」

(矢部)「すっげ、今までのとは全然違う。」

進藤達が気づくと、研修医二人はのん気にこずえが持ってこさせたソファーに感動している。

(こずえ)「ねぇ、オヤジ様。ここにキングサイズのベッド二つは入らないかしら?」

(秀一)「それはキツイだろうなー。」

こずえに話かけられて、秀一は慌てて仮眠室の中に入って広さを確認している。

(城島)「キングサイズ・・・仮眠室用のベッドじゃないですよ。」

(こずえ)「この壁、無くなったら広くなるわよね。」

(秀一)「そうだな。オーイ、ドリル持って来い!」

(神林達)「わわわ、ちょっと待ってください!」

雨宮親子の非常識すぎる会話に再度救命メンバーは慌てだした。

(馬場)「あんたら、いったい何考えてんだ!」

(雨宮親子)『リフォーム。』

(香坂)「リフォームって、そんな突然。それにこういうのは業者さんに頼むものよ。」

(こずえ)「大丈夫よ、オヤジ様こういうの得意だから。」

秀一は笑顔で頷いている。

(城島)「でも突然そんな勝手なことしたら、神宮教授になに言われるかわからないですよ。」

(こずえ)「ちょっと壁ぶっ壊したくらいで、文句言うやつなんかいないわよ。」

(救命メンバー)「絶対いる!!」

その後、救命メンバーの強硬な反対にこずえ達も渋々諦めた。

そしてその数日後・・・

(馬場)「おい、またあの甘ったるい匂いやってんのかよ。」

(太田川)「アロマテラピーです。こずえさんが色々持ってきてくれたんですよ、落ち着きませんか?」

(馬場)「なーんか、むずがゆくなるんだよな。」

(城島)「随分変わっちゃったからなー。」

城島の言葉に進藤達は仮眠室を見た。

仮眠室の壁はペンキが塗りなおされ、中にはセミダブルのベッドが女性用、男性用と二つ置いてある。香坂、こずえ、太田川が相談した結果購入した、パステルカラーのベッドカバーがかけてあり、床には毛足の長い高級そうな絨毯がひかれている。照明などもオシャレなものに変えられ最近は女性陣がアロマオイルを持ち込み、寝る前に焚いたりしているので進藤達は落ち着かない。しかし「何が気に入らないのか」と聞かれると明確な理由がないだけに、黙ってしまう結果になっている。

(神林)「なんか、医局の仮眠室じゃないみたい。」

(矢部)「なんだって、あんなに変わったんでしょうね。」

(進藤)「決まっているだろ。」

進藤達はインテリア雑誌を読んでいるこずえのことを見ていた。最近、こずえは気に入ったインテリアを見つけると買い込んでは、医局に持ち込んでいる。おかげで、仮眠室だけではなく医局の中までこずえの趣味で買ったインテリアや食器があふれかえっている(ただし、趣味はいいので香坂や太田川は喜んでいる)。一度神林がそれとなく注意したのだが、

(こずえ)「お金のことなら心配いりませんわ。私、後で請求書を突きつけるようなケチな性格しておりませんから。」

と言って相手にしなかった。

(城島)「普通、そこにいるうちに馴染んでいくものなんですけどね。」

(馬場)「そうだよなー。」

最初は浮いていたものの、三ヶ月経つ頃にはすっかり救命に溶け込んでいたたまきをみんな見ている。

(香坂)「こずえは環境が変わったら自分が合わせるんじゃなくて、環境を自分に合わせるのよ。」

再度すっかり変わってしまった仮眠室を見て、たまきの言葉に頷く救命メンバーであった。

 

End

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