捕らわれの災厄の女神 1
事情があって救命に預けられた医師・雨宮こずえ。彼女の行く先々で騒動は起こる・・・
説明室で教授達が現れるのを待っている医局長の神林と死亡率の高い伝染病への感染の疑いが持たれているこずえ。
そこに、安西学長と神宮教授、それに助手の秋山がやってきた。神林がさっそく事情を説明した。
(安西)「一度患者に刺した針を、自分の手に刺すとは・・・初歩的なミスだね。」
(こずえ)「申し訳ありません。教授達と同様に、私も疲れていまして。接待疲れの教授達と違って、私の場合は仕事での疲れですけど。」
こずえはしっかりと安西の嫌味に自分も嫌味で返している。
(神林)「潜伏期間は二日だそうです。それが過ぎれば、心配要らないそうです。」
(こずえ)「潜伏期間が過ぎるまで自宅で待機して、誰とも接触しないようにしますわ。それでは。」
(秋山)「何を言っているんだ、そんなの認められるわけないだろう!」
(神宮)「うちの医師がえたいの知れない伝染病にかかっているかもしれないとマスコミにバレタラ大変なことになる。潜伏期間が過ぎるまで、感染科の個室に入りたまえ。」
(こずえ)「お断りします。話はそれだけですね、それでは。」
こずえは再び出口に向かおうとした。
(秋山)「待ちたまえ!教授はダメだと言っているんだ!!」
秋山がこずえの前に立ちふさがり、両肩をつかんで怒鳴った。
(こずえ)「これはパワーハラスメントです!私の許可無く身体に触れながら大きな声を出して、高圧的な態度で脅すなんて。上司である教授達はこういう行為を許しますの?人権擁護委員会に申し立てましょうか。」
(安西)「雨宮君、今はそんなことを言っている場合じゃないだろうが!」
(こずえ)「いつまで私の体に触っているつもり?セクハラで訴えるわよ!教授、つまり私の人権はどうでもいいとおっしゃいますの?」
こずえは秋山を振り払い、安西と神宮をにらみつけた。こずえの機嫌が悪いことにやっと気づいた安西と神宮は鋭い視線にたじろぎながら、なんとか話を進めようと努力している。
(神宮)「君は伝染病に感染の疑いがあるんだ。感染科の個室に入りたまえ!」
(こずえ)「お断りすると言っているんです。お分かりだと思いますが、私の承諾なしで感染科の個室に閉じ込めたら、不法逮捕監禁になりますわよ。この場合病院は個室にいるように『要請』することはできても、『命令』する権利はないんですから。」
(神宮)「神林君、随分教育が行き届いているようだね。」
先ほどからオロオロしながら見ていた神林に神宮が声をかけた。神林は縮こまっている。
(こずえ)「あら、私は教授達の指導の賜物だと思いますけど。」
(神林)「あの、雨宮先生。何が気に入らないの?感染科の個室って、確か必要なものがすべてそろっているはずだよ。」
(こずえ)「あそこの備品、安っぽいんですもの。」
こずえは堂々と身勝手な理由を言った。
End