(拓海)「バレエ公演、見に行きたいって言ってたよね。友達に、そっち方面に顔が利くのがいてさ。チケットを手に入れてもらえたんだ。この日、大丈夫だよね。」

(こずえ)「・・・・・」

(拓海)「どうしたの?確か、この日は休みって前に聞いた気がしたんだけど・・・」

受話器の向こうで黙っているこずえに、拓海は不安になって聞くと、やっとこずえの声が聞こえてきた。

(こずえ)「確かに、この日はお休みで特に予定は入っていません。」

(拓海)「じゃあ、決まりだ。俺は残念ながら休みじゃないんだけど、なるべく早く仕事を切り上げるよ。夕方会ってから食事して、それから会場に行くことにしようか。」

(こずえ)「拓海先生・・・前にも申し上げたとおり、私達は顧問弁護士を努めているクライアント先の方と個人的にお会いすることは、禁止されているんです。」

(拓海)「いいの?そんなこと言って。あの清掃会社の人達のことを俺が事務長に言えば、首にするぐらい簡単なんだよ。」

(こずえ)「・・・・」

(拓海)「分ったみたいだね。君が黙って俺に付き合ってくれていれば、あの人達に何かするつもりはないよ。じゃあ、楽しみにしている。」

拓海は受話器を置いてため息をついた。こずえと初めてデートしてからもう既に半年近くたっている。その間、拓海は同じ手でこずえを月二、三回のペースでデートに誘っている。映画や舞台を見に行って、食事するだけという健全なものだ。だからなのか、こずえも江木にも誰にも言わずにおとなしく誘いに乗ってくる。

(拓海)「こんな真似しないと・・・君は俺と会ってくれないんだもんな・・・」

電話を見つめながら、拓海は寂しそうに呟いた。

 

「今日の裁判で、決着をつけると江木先生が言っていた」という話を事務長から聞いた拓海は、隆一と一緒に裁判を見にきた。傍聴席から視線をめぐらすと、ストライプのスーツを着たこずえと紺のスーツを着た江木が何か相談をしている。

(江木)「神崎さん。こちらの資料をご覧ください。これは、あなたが二年前医局長になる前に出張に行った際の記録です。いかがですか?」

(神崎)「その頃は、出張にはかなり行っていましたから場所はあまり覚えていませんが・・・・記録がそうなっているのなら、そうなんでしょう。」

江木は、裁判長達にも彼の日報が見れるようにしている。

ここで江木からこずえに弁護士が変わり、証人が呼ばれた。証人は、六本木のキャバクラのホステスで加奈子という源氏名だった。

(こずえ)「あなたと、神崎さんの関係を、教えていただけますか?」

(加奈子)「別に、関係って言っても・・・お客とホステスなだけよ。」

(こずえ)「本当ですか?お店の外では会ってらっしゃらない??」

(弁護士)「異議あり。被告側の意図が、わかりません。彼らは、単に神埼さんのプライバシーを暴露しようとしているに過ぎません。」

(こずえ)「裁判長。もう少し、お待ちいただけますか。そうしたら、こちらの意図が分るはずです。」

しばらく相談していたが、裁判長は異議を却下した。

(裁判長)「では、もう少しだけ様子を見ます。」

(こずえ)「神崎さんとどこか、地方でお会いしたことはありませんか?」

(加奈子)「・・・あります。」

(こずえ)「どこですか?それは。また、いつ頃のことですか。」

(加奈子)「仙台です、二年前に。」

傍聴人達が騒ぎ出した。

(こずえ)「どうして、仙台で?」

(加奈子)「私が一人旅をするって言ったら、神崎さんが丁度その頃出張で行くから、会おうって言われたんです。食事を、おごるからって。」

(こずえ)「彼女と、神崎さんが会っていたのは、先ほど江木が神崎さんにお聞きした出張の日です。彼女の日記と、写真を証拠として提出します。」

証拠品を見ながら、裁判長が頷いた。

(こずえ)「お食事だけで、お別れしたんですか?本当に。」

(加奈子)「・・・・・・」

(こずえ)「答えてください。あなたは、何もかも包み隠さず話すと、さきほど宣誓したはずです。」

(加奈子)「神崎さんの、お部屋に泊まりました。」

(弁護士)「異議あり!やはり、不当にプライバシーを」

(こずえ)「以上です。」

加奈子は席に戻り、再度江木と神埼が出てきた。

(江木)「あなたは、この時ツインルームに泊まられていますね?何故ですか?出張はお一人で行かれたのに。」

(神崎)「なぜって・・・部屋が、無かったからですよ。」

(江木)「おかしいですね、この日のホテルのシングルルーム稼働率は60パーセント。つまり、部屋は余っていたんです。あなたは必要も無いツインルームに泊まられた。理由は、先ほどの方と一緒に泊まるためです。違いますか?」

神崎は答えられない。

(弁護士)「異議あり!これは、原告のプライバシーを不当に暴き、名誉を毀損しているものです。」

(江木)「あなたは、病院の仕事で出張しておきながら、宿泊先になじみのホステスを呼び、部屋に連れ込んでいた。これは、病院に対する背信行為です。」

(弁護士)「裁判長、たとえ宿泊先にホステスを連れ込んでいたとしても、出張先の仕事は支障なく済んでいます。弁護側の言っていることは、詭弁にすぎません。」

(江木)「これは驚きました。どうやら、先生は病院の就業規則をご存知無いようですね。」

(弁護士)「え?・・・あ!」

(江木)「病院では、コスト削減のため、職員はシングルルームに泊まることが義務付けられており、繁忙期などでどうしても部屋が見つからない時のみシングルルーム以外の利用が許可されています。彼は、必要ないツインルームでの宿泊をし、病院に不当な費用を請求しています。こういった行為は、懲戒事項に設定しています。」

(神崎)「いや、しかし、その・・・」

神崎は言い逃れを考えているらしいが、上手く言葉が出てこない。

(江木)「以上のことから、病院としては神崎氏への退職勧告は正当なものであったと主張いたします。以上です。」

 

その日の夜、当直の拓海の元に神崎が運び込まれた。付き添っていた奥さんの話によると、弁護士と今後のことを相談していた神崎が、突然倒れたということだった。手当てを終えて出てくると、江木が来ていて神前の担当弁護士に詰め寄られていた。

(弁護士)「いくらなんでも、やりすぎじゃないのかね?人のプライバシーを暴くなんて。」

(江木)「負け惜しみですか?裁判はゲームと同じですよ、どちらが有効なカードを探し出せるのか。僕は、依頼人を勝たせるために当然のことをしたまでです。」

(弁護士)「ゲームだと!そんな考えで、人の一生に関わる裁判をしていいと思っているのか!!」

神崎の弁護士がいきり立って江木につかみかからんばかりに言ったとき、神崎夫人がやってきた。

(神崎夫人)「どうなんですか?具合は??」

(拓海)「胃潰瘍の初期です。一週間も入院していただければ、大丈夫ですよ。」

神崎夫人は、頷くと弁護士に向き直った。

(神崎夫人)「そうですか・・・・先生。裁判、辞めてください。」

(弁護士)「え・・・?何言っているんですか??」

(神崎夫人)「もう、たくさん。ただでさえ、裁判をやっているってことでご近所から好奇の目で見られているのに、この上浮気していただなんて・・・・!!余計なお金を使って、財産分与のお金が減るのは、御免です。」

(弁護士)「財産分与って、そんな離婚するってことですか?」

(神崎夫人)「当然でしょう!!あの人は、私をだまし続けていたんです。なのに、なんで私がこれからも一緒にいなきゃいけないんですか!!」

神崎夫人の目は釣りあがり、鬼の形相である。

(弁護士)「いや、でも神崎さんは、今病気で大変な時なんですから、奥さんが支えてあげないと。早まらないで、じっくり考えたほうが。」

(神崎夫人)「冗談じゃないわ。これ以上、あの人に付き合うなんて真っ平です。じゃあ先生、あなた絶対勝てるんですか?勝って、お金をもらえるんなら一緒にいてもいいですよ。財産分与してもらうお金は多いほうがいいもの。」

(弁護士)「あ、それはその・・・」

(神崎夫人)「ほら、御覧なさい。勝てないんでしょう。だったら、私は離婚します。あの人が死のうが生きようが、私には関係ありません!!」

神崎夫人は怒りに燃えて出て行ってしまい、拓海はあっけに取られてその様子を見ているしかなかった。その後、大病院に立ち向かう弱者ではなく、浮気をした上に愛人と旅行に行っていたことを面白おかしくネタにされた神埼は妻に離婚され、昔の知り合いを頼って地方に逃げたと、拓海は兄からきいた。

 

(女性)『はーい!私、大塚愛歌いまーす!!』

数日後、こずえは不機嫌だった。不機嫌の理由は、現在の状況にある。ここは、五階建ての建物全部がカラオケボックスになっているビルで、同じ事務所で働いている別の女性弁護士や事務員が企画した合コンの二次会に参加している。もちろん、こずえが望んでこんなものに参加しているのではない。たまたま雑誌に載ったこずえの写真を見た男性陣からのリクエストがあるということで、頼み込まれて断るのが面倒になって仕方なく参加しているのだ。

(こずえ)「やっぱり、断ればよかった」

盛り上がっている他のメンバーを冷めた目で見ながら、こずえはため息をついた。

一方、その頃
(友人)「拓海―、お前も何か歌えよ!」

(女性)「私、薬師寺さんとデュエットしたいー!」

(拓海)「え?そうだなー、何がいい?」

同時刻、同じビルの同じフロアの別の部屋には、拓海が大学時代の友人達と合コンためにカラオケに来ていた。同じように気が進まずに参加することになったものの、こちらは参加したらしたで、ちゃんと周りに合わせる努力をする人間なので、それなりに場を盛り上げていた。

 

拓海がトイレから戻る途中、聞き覚えのある不機嫌そうな声が聞こえた。拓海が不審に思ってそちらを見ると、こずえと見たことが無い男がいた。

(男)「ね、ふけるんなら二人でふけようよ。俺、いい店知っているんだ。」

(こずえ)「いいえ、私は一人で帰りますから。」

荷物を持っているこずえのことを、男が追いかけている。

(男)「そんな、つれないこと言わないでさぁ。俺、一次会の時から君と二人になりたいって思っていたんだ。」

(こずえ)「私は、そんなこと思っていませんでしたから。」

冷たく返事をしてさっさと歩いているこずえに、業を煮やしたのか男が怒鳴った。

(男)「あんた、他の子達が言ってたとおりだな。ツンケンしていて、可愛げがない。他の子達、あんたがトイレに行ってたとき、みんな悪口言ってたよ。あんなんじゃ、彼氏ができるはず無いって。」

(こずえ)「余計なお世話よ。私の理想は高いの、あんたみたいな頭が悪い男、お呼びじゃないのよ。今日の合コンだって、私が連れてきてくれって頼んだ覚えはないわ!」

バン!

立ち止まりこずえが怒鳴り返すと、男が壁に手をついてゆく手をさえぎった。

(男)「人がおとなしくしてれば、いい気になりやがって。なんだと?」

(こずえ)「聞こえなかったんなら、もう一回言ってやるわよ。知能レベルの低い男はお呼びじゃないって言ったのよ!!」

(男)「この・・・!男を怒らせるとどうなるか、教えてやるよ!!」

(こずえ)「ちょ・・・・!いいかげんにしないと、不幸になるわよ!!」

こずえの腕をつかんで男が空き部屋に連れ込もうとしているが、こずえは相手の腕を反対にひねって外すと、エレベーターに向かって走り出した。

(男)「待てよ!!」

ガッ

いつの間にか駆け寄った拓海が男を殴りつけると、こずえを連れてエレベーターに乗り込んだ。

(こずえ)「どうして・・・・?」

怪訝そうにしているこずえに答えず、拓海はエレベーターが一階に着くとすぐに外に出てわき道にこずえを連れ込んだ。

(こずえ)「なに・・・?んっ」

口を開く前に、こずえは拓海にキスされていた。しばらくすると、拓海は唇を離した。

(拓海)「なんで・・・・なんで、あんな男と・・・・何してたんだよ!何かあったら、どうするつもりだったんだ!!」

(こずえ)「別に、私が頼んで合コンに行ったわけじゃ・・・私は断ったのに、無理に誘われて」

言い終わる前に、こずえの唇は再び拓海にふさがれていた。息苦しくて少し口を開いた途端、拓海が角度を変えて深く口付けられる。こずえの腰には拓海の手が回され、こずえの手は拓海の袖にしがみついており、しばらく二人はキスを続けていた。

 

数日後、自宅にいた拓海は父親である薬師寺院長から呼び出された。

(院長)「雨宮先生を、顧問弁護士から解任することにした。」

(拓海)「は・・・・・?」

あまりにも意外な父親の言葉に、拓海は一瞬何を言われているのか理解できなかった。

(巴)「拓海さんを誘惑していたんだから、当然です。お父様もやっと、わかってくださったのよ。」

言いながら出したのは、何枚かの写真。こずえと拓海が一緒に歩いている写真や、この前の夜のキスが写っている。

(院長)「あちらも了承済みで、来週には新しい弁護士を連れていらっしゃるそうだ。雨宮先生は、今後一切病院には出入りしないことになっている。」

(拓海)「ま・・・待ってくれよ。俺が、俺が悪いんだ。彼女に勝手に思いを寄せて・・・彼女がそれに応えてくれないから、だから、弱みを握って雨宮先生を脅していた。ココに写っているのは、全て俺が彼女を脅して言うことを聞かせた結果なんだ。」

(巴)「拓海さん、この期に及んでそんな嘘を・・・」

(拓海)「嘘じゃない、本当なんだ。もちろん、人間として守るべきラインは守っていた。でも・・・原因は俺だ、彼女に責任は無い、罰するなら俺を罰してくれ。」

しばらく、必死に弁解する拓海を見ていたが、院長は静かに言い渡した。

(院長)「これは、決定事項だ。どんな事情があったにしろ、翻ることは無い。」

今まで、ずっとこずえを必要な人間だとしてかばってきた父親の代わりように、呆然としながら拓海は部屋をでた。

 

翌日、拓海が落ち込みながらエレベーターを待っていると、止まったエレベーターには江木が乗っていた。

(江木)「こんにちは。」

(拓海)「こんにちは。あの、今日は・・・?」

(江木)「雨宮の件は、ご存知ですよね。お詫びに伺ったんですよ。上司として、監督不行き届きだったのは否めませんから。」

こずえにちょっかいを出した自分を怒っているかと思っていたのだが、江木はまったくそんな様子はない。とはいえ、元々江木はポーカーフェイスが上手いので、実際にどう感じているのかは拓海にはわからないのだが。こずえの様子を聞きたいのもあって、タバコを言い訳に拓海は江木を屋上に誘った。

(拓海)「オヤジを、見損なったよ。」

(江木)「どうしてですか?」

拓海の言葉に対して驚きもせず、江木はタバコに火をつけながら尋ねた。

(拓海)「結局、事なかれ主義じゃないか。オフクロが騒ぐからって、彼女を解任して。面倒ごとが起きるのが、嫌ってことだろう。彼女は、俺が脅したから・・・・だから、」

江木は、何も言わずに拓海を見ている。

(拓海)「あんなに、彼女を信頼していたのに・・・雨宮さんだって、この病院のために色々やってくれていたのに。」

(江木)「我々が、この病院のために働くのは当然ですよ。それで、お金をいただいているんですから。」

(拓海)「そうかもしれない。でも・・・!あんなに『優秀な人だ、必要な人だ』って言ってたのに、あっさり切るだなんて。」

(江木)「院長も、父親だってことですよ。」

(拓海)「・・・??」

江木の言葉の意味が、拓海にはわからない。

(江木)「確かに、僕達はクライアントのスタッフ、特に幹部職員との個人的な交際は禁止されています。これは、癒着防止の意味合いもあってです。ただ、それは担当しているクライアントに限ってのことです。つまり、担当していなければ、クライアントの息子と恋愛しようがなんだろうが、かまわない、ということになります。色々と悩んでらっしゃいましたが、僕がそれを告げたら決意なさったみたいですよ。」

言い終わると、江木はタバコを携帯灰皿に押し付けて出口に向かった。

(拓海)「待ってくれよ、江木さん!オヤジが彼女を解任したのは、俺のため・・・・?」

(江木)「物事は、色々な角度から見ることが大切なんですよ。拓海先生。」

 

(こずえ)「このたびは、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

(所長)「あちらからは、息子さんが君を脅していたという話が出てきていてね。だから、君の処分は穏便にしてやってくれと言われたよ。」

こずえはうつむいたままだ。

(所長)「参考までに・・どうやって脅されていたの?」

(こずえ)「・・・・私が、ドジだったんです。あの病院の清掃会社の方達に話を伺う際、顧問弁護士と名乗って入ると表面的な話しか聞けないと思って、父のツテを使ったんです。そのおかげで、かなり本音をきけたんですけど・・・その、院長一家に関しては総じて好意的でしたが、色々病院の幹部の方の悪口もあって・・・。それを事務長等に言うって言われて。もしそんなことが分れば、あの人達は職を失う可能性があります。」

(所長)「なるほど、だから言うことを聞いていた、と。そういうことだね?よくわかったよ、じゃあ戻っていいよ。」

こずえがドアノブに手をかけたところで、所長が再度話しかけてきた。

(所長)「君は、本気で思っていたの?」

(こずえ)「?」

(所長)「君が言うことを聞かなかったら、その人達がクビになるようなことするって。僕の聞いた限りじゃ、育ちのいいお坊ちゃんで、とてもじゃないけど、無関係の人を陥れるようなことが出来るような人間には、思えなかったけど。」

(こずえ)「え・・・・」

(所長)「君は、責任感が強い人間だ。だから、言い訳したかったんじゃない?他の人の迷惑になるから、だから自分はこの人に会わないといけないって」

 

こずえは、ずっと所長に言われたことを考えていた。

所長の言うとおりだ、自分と無関係の人間が職を失うような事態を引き起こせるような度胸が、拓海にあるようには思えない。自分だったらそれぐらいのことはためらわずに出来るが、あの人のいいお坊ちゃん育ちの拓海には絶対無理だ。たとえ、あの時清掃会社の職員達が自分の悪口を言っていたとしても、きっとそのことを黙っているだろう。

そんなこと、所長に言われなくたって気づけたはずだ。いや、初めからわかっていた。最初に拓海に誘われたときから、無理をしているように見えた。柄でもないことをしていると思っていた。自分が言うことを聞かなくても、あの人達は無事だ、そんなことわかっていた。なのに、拓海の芝居に合わせていた。その行動の意味するところは・・・・

こずえは目をつぶると、組んだ手の上に額を乗せて事実から目をそらそうとした。

ピー

内線を告げる音がして、こずえは受話器を取り上げた。

(こずえ)「雨宮よ。」

(事務員)「雨宮先生、サトウ様とおっしゃる方から外線が入っていて、雨宮先生とお話したいっておっしゃっているんですが・・・。どうしますか?」

名前に心当たりは無いが、何か目的があってやっていることならとにかく話してみないと何もわからない。

(こずえ)「つないでちょうだい。・・・・雨宮です・・・・え?」

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