§今月のオススメ映画§
アレックス
at 2003 10/12 15:35
カンヌ映画祭で観客に多大なる衝撃を与えた話題作。
日本での劇場公開は今年の2月。
世界で一番美しい女優と言われているモニカ・ベルッチを主演に、彼女の実生活での夫でもある、ヴァンサン・カッセルを恋人役に起用した、ギャスパー・ノエ監督作品。
ストーリーは至ってシンプル。
あるパーティでちょっとしたいざこざから、恋人マルキュスを残し、一人先に帰ることになったアレックス。その帰り道、彼女はレイプにあう。
それを知ったマルキュスは、彼女をレイプした犯人に、友人であり、もとアレックスの恋人であったピエールとともに、復讐し、殺害する・・・というもの。
ギャスパー監督は、はじめ、トム・クルーズとニコール・キッドマン元夫妻の『アイズ・ワイド・シャット』に対抗して、モニカとヴァンサン夫妻のポルノ映画を撮りたかったそうだ。
ところが、脚本が却下され、考えあぐねた彼は、犯罪、暴力、復讐・・・というテーマをそえ、作品化したらしい。
ところが、彼らが思った以上に反響を呼び、思わぬ大話題作になったという訳だ。
9分間に及ぶ壮絶なレイプシーンは、観るものに想像以上の衝撃を与え、また、ヴァンサンとピエールの復讐殺害のシーンも想像を絶する映像だ。
ところが、この作品の素晴らしいところは、ただの復讐劇で終わらないところだ。
時間にそったストーリー進行で作品が進めば、観客は間違いなく、劇場を出る頃にはショックに打ちひしがれている事だろう。
しかし、本作品は監督自身が言うように『メメント』などに影響され、時間軸を遡る構成になっている。(「逆行」というのはこの作品の原題でもある)DVDを観た人なら知っているだろうが、チャプターはそれぞれ、その行動あるいは事件が起こった時間で区切られている。
もちろん『メメント』のように、時間軸再生機能がついているので時間を追っての再生も可能だが、私はそれはオススメできない。
なぜなら、見た跡に決して良い気分にはなれないからだ。ショックを和らげる映像が全くないからだ。
作品の意図的構成に基づいて鑑賞すれば、作品冒頭で受けたショックも薄らぎ、最後は清々しい気分になれる。
ラストシーンは、アレックスが公園で読書をしているシーンだが、バックに流れるのはベートーベンであり、なぜだが清々しい気分になる。
冒頭のカメラワークも、慣れていない人には苦痛かもしれない。映像の色彩も一定で、観るものに圧迫感を与える。
また、映画に出てくる『2001年宇宙の旅』のポスターも見逃せない。
これは他の多くの監督同様、ギャスパーがスタンリー・キューブリック監督を尊敬しているからであり、この作品を、同監督を、後世に伝えたいからである。
ギャスパー監督の手法の一つに、自分の前作品のエピソードを次の作品に使うことが挙げられるが、今回の『アレックス』には、冒頭に『カルネ』『カノン』で娘をレイプした父親が出てくる。『カノン』その後の話である。
父親は過去の自分の過ちを、淡々と語る。
『アレックス』の物語はそこからスタートだ。
作品の随所に出てくるテーマの一つに、『時はすべてを破壊する』というフレーズがある。
この作品はただのショッキングなレイプ映画ではなく、たくさんの事を考えさせられる作品であることは言うまでもない。