レッド・オクトーバーを追え トム・クランシー著 文春文庫
☆☆☆☆☆
現代を代表する作家の一人であるトム・クランシーの処女作である。
もちろん、ご存知の方は多いと思うが、映画のほうで知っている方のほうがひょっとしたら多いのではないだろうか。
現代の政治構図、諜報活動などを描かせたらさずがと思わせるものがある。
この本は、ソビエトの最新鋭ミサイル原潜の処女航海での艦長を筆頭とする仕官のアメリカへの亡命をめぐる米ソの諜報戦と海上、海中での攻防戦を描いている。
途中、この種の本に良くある専門的な解説が随所に出てくるが、それがちっとも邪魔にならず、一気に読み通せる作品に仕上がっている。
この本に9年間の準備期間を設けていたのも肯ける軽快な展開と数々の人間模様が織り成されているドラマが心地よい。
ただ、一箇所だけ気になったのが、この原潜をソビエトの技術では探知できず、幸運もあったとはいえアメリカが簡単に捕捉していたのは、そのような技術力の差が本当にあるのだろうか、ということだった。
専門的なことを知らない僕がダメなのか、それとも一種のご都合主義になっているのか。よくわからない。
この作品では、まだ舞台回しの役にしかなっていないCIAアナリストのジャック・ライアンであるが、この後に出てくるクランシーの作品では主役に抜擢(?)されている。
ここでは、まだライアンの性格や行動パターンが十分に描かれているとは言い難いが、次々とクランシーの作品を読み進む方には、ぜひ読んでいてもらいたい作品である。
前述したように、この本は映画化されているが、残念ながらまだ観ていないので、その点に関しての評価は差し控えたい。