無限の人


真っ暗い場所。何処だかすら、わからない場所。
『檜山・・・』
聞き覚えのある声。俺の相方の声。
「与座?」
声の方を向く。そこには与座が立っていて・・・・・・

ドサッ


「よざぁ?」
ふいに倒れかかってきた与座の重みに、そのまま俺も地面に崩れ落ちた。
何とか体勢を立て直して、与座を上向きに抱える。
「与座ッ。どしたんだよ・・・与座?」
『・・・ひ・・・やま・・・』
ズルッ・・・与座を支える右手に、生温かい液体の感触を感じて、
その手を目の前まで持ってくる。真っ赤に染まった手。赤い液体。
「え?」

『・・・ゴメン・・・』
「よざっ!!」


目を開けば俺の部屋。
いつものベッド。いつもの天井。いつもの部屋。
静かな朝の部屋。俺の心臓だけがうるさくて、
いつのまにか握りしめていたシーツ。寝惚けた頭。
『・・・夢?』

相変わらずうるさい心臓の音を聞きながら、震えの止まらない右手を握る。
「与座・・・」
ただ一言呟いて、俺は部屋を後にした。
カギをかけたのかすらわからない位、大急ぎで。

★ ★ ★


     ピンポーン ピンポーン
あ、誰か来た。
そう思って目を開けた。時計を見たら、まだ朝の6時。
「こんな時間に誰だよ・・・」
小さくボヤいて、起き上がる。眠い目をこすりながらドアを開けた。

「ひやま?」
肩で息をしながら、檜山が立っていた。
「よざ」
小さな声で名前を呼ばれて・・・そのまま抱きつかれた。
「わっ;;」
俺はよろめきながらも、何とか踏みとどまり、檜山の背中に手を回す。
ギュッと力をいれて俺の胸に顔を埋める愛しい人。
髪を撫でると、くすぐったそうに笑う。
目が合う。ふと、檜山の目に力が無くなった。悲しい色をした瞳が俺を捕らえる。




「よざ・・・死なないよな?」





檜山の指が、俺の唇に触れる。まるで、俺が存在するのを確かめるように。
『何があったんだろう?』
疑問を跳ね除けて、俺は檜山の手を握り、そのまま紅い唇にくちづけた。

★ ★ ★


よかった。与座はちゃんと居た。
心臓が動いてたし、唇の感触もあった。


夢や幻なんかいらない

無限の不安はお前が消してくれるから

お前がそこに居てくれるのなら


俺にとってアナタだけが無限。

(2002.10.4)