ぐるぐるぐるぐる
鍋の中
「うわ〜;コレたこぉなってるわぁ…;前86円やったのに…」
「お前、オバちゃんみたいな事言うなや。はずかしいわ。」
ある日のスーパーでの俺ら、
前より高くなっている野菜に声をあげる俺を徳井があきれたような目で見る。
俺はハハハと笑いながら、買い物カゴにニンジンを入れる。
タマネギが好きやない徳井の為にタマネギは甘く煮込んでやろう(嫌がらせ)
「・・・なぁ。」
「なんや?」
「今日のゴハンなんやねん?」
「福田特製カレーや。」
「カレー?」
「せや。上手いでぇ。俺のカレーは。」
そう言いながら、ルーに手を伸ばす。
徳井は、何か複雑そうな顔でニンジンを眺めていた。
「なんや、カレーきらいちゃうやろ?」
「キライやないけどなぁ。カレー・・・」
何が不服やねんろ?コイツは時々ワケわからん事を言い出す。
「キライやないねんけどなぁ・・・」
「お前、何が言いたいねん。」
ちょっとキツイ口調で言うてみた。
「うーん・・・何やろなぁ。今日は、カレーの気分とちゃうねん」
「はぁ?!気分??」
「そう。今日はカレーの気分とちゃうねん。うん。」
何ひとりで納得しとんねん・・・コイツ。
「じゃあ、何食いたいねん。自分。」
「何って・・・うーん・・・何食いたいってワケやないねんけどなぁ…。」
「もーはっきりしゃあへんのやったら、カレーでええやろ!」
「まぁ・・・ええけど。」
そんな事を言いながら、レジに向かう。
気がつけばカゴの中は、いつの間に入れたんだろう
徳井の好きなモノでいっぱいになっていた。
…金払うん俺か?
「徳井!お前も持てや!」
「はいはい。」
両手に持った袋の片っ方を徳井に渡す。
てゆーか何で今日の分の夕飯やのに、袋2つも欲しいねんって話やねんけど、
ソレはコイツの所為やから、むっちゃ重い方持たしたった。ザマーミロやわ。ホンマ。
「重い――・・・」
「はよ来いや。ってこっちやで!」
徳井は重さのあまり?フラフラ違う方へ歩いていこうとする。
コイツから目ぇはなせへんわ・・・。歩道橋を渡ろうと階段を登った時も
徳井はフラフラ、通り過ぎようとした。
「徳井!こっちやって!」
「う――ん・・・重いわ・・・ソレとかえてなぁ。」
「いややわ。重したん、お前やん。ってか、そんなに重ないやろ。ソレ」
周りはもう暗くなっていて、人通りも少なくなっている。
前を歩く徳井は相変わらずフラフラ。
俺ら2人だけ、のんびり歩道橋を歩いている。
「なぁ。福田ぁ。」
「何?」
「キスさしたろか?」
「はぁ?!」
イキナリそんな事を言われても・・・と焦る俺。
前を歩いていた徳井が立ち止まり俺を見つめてくる。
「今やったら、バーゲンセールや。
俺とキスできる券100万で売ったるわ。」
「いらんわ!アホ!」
俺はとりあえず照れ隠しに大きな声を出す。
それを知ってか知らずか、徳井は悪戯そうにニッと笑って…目を閉じた。
「ん。」
キスをねだるような声。心臓が跳ね上がる。
長い睫毛が微かに動き
前髪が夕焼けの匂いのする風で揺れる
・・・綺麗だ・・・そう素直に思った
一瞬、まわりの風景が、全部止まった。
「…………。」
気付いたら俺は吸い込まれるように、徳井の唇に自分のソレを押し当てていた。
軽い、触れるだけのキス。――あっ;;
ハッと俺は我に返ると、急いで徳井の体を両手で押して距離を作った。
「あっ、アホッ;;はよ行くで;;」
俺はそれだけ言って、徳井の前を大急ぎで歩いていった。
徳井は多分、ついてきてない・・・と思う。ボーっとつったてるに違いない。
「はよ来い!!」
振り向いて俺がデカイ声で徳井を呼ぶと、
徳井はニヤ〜って意地悪な笑みを浮かべて俺の後をついて来た。
俺は外であんな事をしてしまった恥ずかしさから、俯きながら歩いている。
多分・・・俺の顔、今めっちゃ赤い・・・。
それに比べて徳井ときたら・・・
さっきまでの袋の重みは何処へやら、首の後ろで手を組んで歩いている。
「いらんのと違うかったっけ〜♪」
徳井が、からかい半分で俺に喋りかけてきた。
「う、うっさいわ;;アホッ。」
俺がそう言ったら、後ろから笑い声がした。
・・・あぁ、またやってもた・・・;;
俺は何だかんだ言っても、コイツが好きなんやと思わせられる事がある。
今みたいな時とか・・・特になぁ。
多分、このまま行ったら・・・家につく頃にはもう、袋2つとも俺が持ってんやろなぁ・・・。
「福田ぁ。」
「なんやねん。」
「あとで100万払えよ。」
「はぁ?!何でやねん!」
「お前、俺にキスしたやろ?」
払えるか!!そう言お思たケド、徳井がむっちゃエエ顔で笑たから、俺も笑った。
「100万円分、カレー作ったるわ。」
「ハハッ(笑) 食いきれるかなー?」
「大丈夫やろ。俺のカレー。最高に美味いから」
ぐるぐる回す鍋の中
君は僕を見ながら微笑う
ぐるぐる回る鍋の中
まるで
僕の心の中
僕の心を回す君
まるで魔法使いみたいだ
(2002.10.4) |