・・・これで俺ら・・・やっと一緒に居れるな。
『うるさい・・・』
もう、離したらへんからな・・・
『黙ってくれ・・・』
好きやで・・・・・・義
「黙れ!!」
ココで悪夢は終わり。俺の夢はいつもここまで。
「・・・やっと終った・・・・・・」
ぽつりと呟いて、天井を仰ぐ。知らずの内に握っていたシーツに汗が伝う。
毎日続く夢・・・・・・誰かに縛られる夢。体と心を・・・俺の全てを。
俺は、この夢が終る事を毎晩待ち望んでいた。
「とくいー」
「へ?」
「お前、ボーっとしすぎやで。大丈夫か?」
baseの楽屋。舞台の合間。
目の前には、俺の顔を覗き込んでくる人。陣内智則。ピン芸人。
俺は、少し息を吸い込んでから答えた。
「・・・大丈夫デスよ。」
「そーか?自分の体大事にしーや。」
「大丈夫ですって。」
俺が笑って返すと、陣サンは俺にしか聞こえない位小さく呟いた。
「・・・お前だけのや無いねんから・・・」
「え?」
俺は言葉の意味を理解できないまま、陣サンの次の言葉を待った。
「やってそやろ?お前がもし、今倒れたりしたら・・・皆に迷惑かかるやん。」
「あ、そうスね。」
「でもまー、徳井おらんでも俺が何とかするけどな(笑)」
「ひっどいッスわ。陣サン」
笑いながら俺は、手に持った缶コーヒーに視線を落とし、缶を手のひらで揺らした。
「おつかれさまでしたー」
「あ、徳井!」
楽屋も見ずに、後ろ手でドアを閉めようとしていた俺に、陣サンが声をかけた。
「何スか?」
「これからウチこーへんか?」
「え。」
「あ、何か用事ある?」
「いえ、無いッスけど・・・」
「んじゃ、決定やな!」
ギィィ・・・
マンションのドアを陣サンがあける。中へ促されて入っていった。
中々キレイな部屋。とりあえず俺は、小さなテーブルの横に腰を降ろした。
「ビールあるけど・・・飲むか?」
「あ、もらいます。」
陣サンは口の開いたビールを俺に手渡した。
『飲みさがしか?』
そう思っていたら、陣サンが笑った。
「大丈夫。ソコで口あけただけや。」
とりあえず、安心してビールを一口飲んだ。口の中に苦味が広がっていく。
俺が飲んだのを確認して、陣サンは俺の横へ腰を降ろした。
それからは仕事の話とか、昨日のテレビの話とか。
とにかく下らない話に花を咲かせていた。
「・・・・・・・・・・・・い・・・」
「え。」
「・・・・・・・・・してん・・・色・・・・・・悪い・・・・・・」
何故か陣サンの声がだんだん聞き取りにくくなっていき、
世界が回っているような感覚、気持ち悪い。
俺の記憶はココで途切れた。
次に気が付いた時、俺は陣サンのベッドに横たわっていた。
頭がグラグラ痛くて、揺れる視界の中、必死に視線を色々な所に這わせる。
「「なんや・・・徳井。もう起きたんか?」」
陣サンの声がダブって聞こえる。
飲んだビールは最初の1缶のみ。それだけでこうなるとは到底思えない。
「陣・・・さ?」
「徳井が悪いんやで?気付いてるくせに気付いてないフリするから・・・」
「フリ・・・?」
「俺の事、好きなくせに・・・
自分の気持ちに気付かへんフリなんかするから・・・。」
「え・・・?」
「でも大丈夫やで。俺もお前の事好きやからな?心配すんなや」
「何言って・・・いっ!?」
起き上がろうと俺が体を動かすと、手首に痛みが走る。
驚いて手首に目をやると、手錠が俺の手に食い込んでいた。
「アカンで・・・徳井。お前はそーやってすぐ・・・
逃げようとするから・・・心配する事なんてあらへんのに・・・」
「?!」
陣サンが急に目前まで迫ってきて、俺は思わず目を瞑る。
無理矢理押し付けられた唇は、俺にとって。快感でもなんでも無かった。
色んな所に口付ける唇も、服の中に入ってきた腕も、繋がれた手首の痛みも、
きっと全て夢だ。そうだコレは夢なんだ・・・。
「悪夢や・・・」
目を瞑って小さく呟く。
「なぁ・・・徳井」
「・・・これで俺ら・・・やっと一緒に居れるな。」
聞き覚えのある台詞。聞き慣れた声。背筋が凍るような感覚に襲われる。
「もう、離したらへんからな・・・」
いつもの夢のよう、黙れの一言すら出ない。
「嫌・・・や・・・」
「好きやで・・・・・・ヨシミ」
悪夢は終ってなんかなかった
現実的な手首の痛み、肌の感触
コレは夢なんかじゃない
最悪の黒夢は始まったばかり
(2002.10.4) |