シギスヴァルト・クイケン

バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ&

パルティータ

全曲演奏Part2

ソナタ第1番ト短調BWV1001

パルティータ第1番ロ短調BWV1002

ソナタ第3番ニ短調BWV1005

東京文化会館小ホール





前回のカザルスホールではかなり後ろの席でしたが、今回は前から2列目の席で、クイケンの演奏を間近
でじっくり拝見することが出来ました。どうも今回も前半はいまいちの出来のように感じました。素人の
私でも明らかに解ってしまう程のミスは前回より減ったものの、とにかくギーという弦の悲鳴か非常に多
く、とても耳障りでした。本来クイケンは弓に力をあまり加えないタイプのはずなのですが。そういえば
昨年のブランデンブルク協奏曲の演奏で見た時よりもボーイングが激しいようでした。やはり大作という
のと、ホールいっぱいに響かせる為にいつもより力んでいたのかもしれません。後半のBWV1005は比較
的良いようでした。

ドイツ・ハルモニア・ムンディでこの無伴奏を録音したのが1981年。あれからもう19年も経ちました。
実験的演奏とも言われたその録音当時と比べるとさすがにかなりの変化が感じられます。音のふくらませ
方もかなり穏やかとなり、あれだけ徹底的に避けていたヴィヴィラートも割と取り入れています。勿論
モダンの様に音の出だしから一定のヴィヴラートではなく、音の終わりに軽く添える程度ですが。
しかしこの無伴奏ソナタ&パルティータに対する基本的な姿勢はやはりクイケン独特のままですね。1音
1音を数珠の様につなぎ合わせてメロディー主体で弾くのではなく、1音1音をくっきり浮き彫りにする事
によって隠された和音を呼び起こし、メロディー楽器でありながらもバッハならではのポリフォニーを表現
しようと努めているのではないかと思います。音を横の線ではなく縦の線で表現するとでも言えばよいでし
ょうか。かつてビルスマが無伴奏チェロ組曲の演奏で「歌うよりも語るように」と言ったのとも共通点があ
るかもしれません。

このバッハの無伴奏の再録音が近々発売されるそうです。今はレイチェル・ポッジャーの様にバロック・
ヴァイオリンを用いながらも陽気で一般受けする演奏がもてはやされているのに対して、大御所がどのよ
うな巻き返しをするか非常に興味ありますね。ビルスマの再録音はちょっとガッカリでしたが、クイケン
ははたしてどうでしょうか。