- 官能小説『洋子の死亡遊戯』作・オクムラユウスケ
- 冬の海岸はひっそりとしていて寂し気だった。
そこに長い髪を潮風になびかせる女と、肩を落とした男の姿が対照的に向き合っていた。
「さようなら」
洋子は泣きすがる男に背を向け、そう呟いた。
「行かないでくれ、洋子!俺の何が悪かったっていうんだ!」
「まだ分からないのね。あなた・・・死んだのよ」
「へ?」
サトルは驚きのあまり目を丸くした。その拍子に右の眼球がポロッと落ちてしまった。
「あらあら、さっそく腐ってきてるじゃない。自慢の切れ長オメメも台無しね」
「ば、バカだな〜、洋子は。目玉の一つや二つよくあることじゃないか。」
そう言っている間にも前歯が抜け落ち、次々と地面に転がった。
「あーあ、歯がなくなっちゃった。もう私の乳首も噛めやしないわね」
「まいったなー、明日さっそく歯医者に行かなくっちゃ!」
ひきつった笑みを浮かべながら頭を掻いたサトルの指に、大量の毛髪が絡み付くのを洋子は見逃さなかった。
「毛根も死んでしまったようね」
「え?何のこと?」
とぼけるサトルを洋子は冷たい視線で見据えた。
「じゃあ、その指に絡み付いてるものは何?」
「え?これ?これは・・・マロニーちゃんだよ!」
「へえ、マロニーちゃんって黒かったっけ?」
「コーラ味なんだよ!」
「キモ!」
その時、潮風が洋子のスカートをはためかせ、同時に嫌な匂いが鼻先をかすめた。
「うえ!何なのこの匂い!卵が腐ったような匂いだわ!くさい!あなたくさいわよ!」
「うそ!マジで?今朝、ギャツビーつけてきたのに?」
「あ!ズボンのおしりがこんもりしてるわよ!」
「うわ〜!やべえ!」
サトルは無意識に脱糞してしまっていた。大量の排泄物がギャツビーの香りと混ざり合い、異様な匂いを放っていたのだ。
「サトルさん、あきらめなさい。あなたは死んだのよ」
「いやだー!いやだよー!死んだなんて認めるもんかー!」
叫ぶ度に体から血を吹き出すサトルの姿を、洋子は少し哀れに思った。
「洋子!俺は死んでなんかいない!その証拠にこれを見ろ!」
おもむろにサトルは衣服を全て脱ぎ捨て、裸体をさらけ出した。
その中心に位置するサトルの陰茎は、当時の面影そのままにそそり立っていた。
「見ろ、俺のちんすこうを!見ろ、俺のトーテムポールを!見ろ、俺の黒光りする煙突を!これでもまだ死んだって言うんか!」
洋子の目は釘付けになった。
それはまさに昔愛した男のソレだったからだ。
今まで抱かれた誰よりもたくましく、美しかったサトルの陰茎が、再び洋子の目の前に姿を現したのだ。
「どうだ!これでも俺が死んだって言い張るか?」
「確かにソコはまだ生きてるみたいね・・・」
洋子は生唾を飲み込んだ。体の火照りを抑えきれなくなっていた。
「ねえ、ためしてみる?」
一枚一枚丁寧に服を砂浜に脱ぎ捨てながら、洋子は生まれたままの姿でサトルに歩み寄っていった。
「いいのかい?」
「いいのよ。気の済むまで抱いて・・・」
サトルは洋子の裸体を強く抱きしめた。その勢いで腐った両腕がもぎ取れてしまったが、そのまま押し倒し、洋子の大きく開かれたムール貝へとサトルの熱いヤドカリがすべり込んでいった。
「ああ、いい、いいわ、サトルさん!」
恍惚の表情を浮かべ、なつかしさと絶頂感に満たされた洋子の目から涙があふれた。
「サトルさん!サトルさん!サトルさん!」
「洋子!洋子!洋子ー!」
その時だった。
- 激しく腰を振り続けるサトルの体から鈍い音がしたかと思うと、腰骨の辺りから体が真っ二つに裂け、ちぎれた上半身が洋子の豊満な胸の谷間にくずれ落ちたのだ。
しかし、サトルの下半身はまだ動き続けていた。
洋子は快楽の泥濘にのめり込んだまま喘ぎ続け、やがてサトルの下半身から、白く濁った愛液が洋子の体内に注がれた。
「ああ、すごくよかったわ。サトルさん・・・サトルさん?」
サトルは笑っていた。
- まるで自分の子供を見守る父親のように、やさしい笑顔で息絶えていた。
「サトルさんは死んでなんかいないわ。だって私の中にあなたの命が宿っているんだもの」
-
- いつの間にか太陽が海の彼方に沈もうとしていた。
赤く染まった空はやがて闇に眠る。
まるで、命が燃え尽きるように・・・