〜帰る場所〜
(進藤)「・・・俺たち、救命医に楽させろ・・。」
一回目のシカゴ行きのときに、あの人からそういわれた・・。
シカゴから帰った私は事件に巻き込まれ、あの人に助けられた・・。
命もそうだが・・。心も救われた・・。
(たまき)「・・・私、どうしたらいいの?」
犯人に怯える私は、あの人にすがりついた・・。
あの人は私をしっかりと受け止めてくれた・・。
いつもそうだった・・。
どんなに憎まれ口を叩いても、
助けてほしいときには必ず助けてくれる・・。
(進藤)「俺がついてる・・。」
あの人のその言葉は今でも覚えている・・。
あのときの気持ちは忘れられない・・。
私もあの人も相当素直じゃない・・。
あの人の気持ちに自信はない・・。
私のことをどう思ってるかなんて・・。
だから、余計不安になる・・。
今、2回目のシカゴに来ている・・・。
自分の気持ちがわかった以上、この気持ちを持て余していた・・。
(たまき)「・・・あの人に会いたい・・。・・あの人の声を聞きたい・・。」
今電話したら、驚くかしら・・。
どんな会話でも良い・・。
例え時間は短くても。
日本に居た頃のあの雰囲気を味わいたい・・。
受話器をとった・・。
(たまき)「・・・出るかな・・。」
電話番号は聞いたことがある・・。
でも、それは仕事の用事があったから・・。
しばらく、呼び出し音が聞こえる・・。
(進藤)「もしもし・・・?」
寝ていたのだろうか・・。
少し声がかすれている・・。
まだ半年しか経ってないのに、随分聞いてないように思えるその声・・。
(進藤)「・・・もしもし?・・・いたずらか?」
電話の向こうで、ため息をつくのがわかる・・。
でも、しばらくこうやって、聞いていたい・・。
(進藤)「・・・誰だ?・・・国際電話だったな・・・。香坂か?」
あの人の口から自分の名前が紡がれる・・。
心が弾むのがわかる・・。
いつもそう呼ばれていた自分の名前・・。
(たまき)「もしもし・・。香坂です・・。」
すると、声のトーンが柔らかくなったような気がする・・・。
嬉しく思う・・。
喉の奥が熱くなるような感じがする・・。
(進藤)「元気でやってるか?・・・研究のほうはどうなんだ?」
心配そうに聞いてくる・・。
「会いたい」と、つい言いそうになる・・。
(たまき)「元気よ・・。研究のほうは、順調よ。そっちは?変わりない?」
言いたいのを必死に押さえ、冷静を装う・・。
(進藤)「そうか・・。こっちは変わりないぞ・・。たまには、連絡して来い・・。」
あの頃とかわりがないその声に、安心してしまう・・。
受話器を持つ手が震える・・。
(たまき)「わかって・・。・・・ごめん・・。」
泣くまいと、堪えるがつい、言葉に詰まる・・。
向こうは黙っている・・。
呆れてるのだろうか・・。それとも?
(進藤)「・・・がんばれ。お前なら大丈夫だ。がんばって早く、こっちへ帰って来い。お前の帰ってくる場所はここだろ?」
あの人らしい・・・。
つい、笑ってしまう・・・。
でも、私の寂しいこの心の中の隙間に染み渡る・・。
(たまき)「ありがと・・・。ごめんね・・。急に電話して・・。」
ここで、素直な女ならあなたの声が聞きたくなったのと、言うんだろうな・・。
素直じゃないから、いえない・・。
でも、向こうは私のその気持ちに気づいているのだろうか?
笑っているようだ・・・。
(進藤)「気にするな・・。寂しいのは・・・お互い様だろ・・・。」
自分の耳を疑った・・・。
あの人が、寂しい?
(たまき)「あなたも寂しいの?」
つい、聞き返してしまった・・。
電話の向こうでは少し沈黙している・・。
(進藤)「さぁな・・。」
いつものあの人の台詞が聞こえてきた・・。
少し安心した・・。
だって、今あの人に寂しいって言われたら、
研究を投げ出してまで、会いに行きそうになるから・・。
(たまき)「また、それ?ったく・・。じゃ、電話切るわね。・・・ありがと・・。」
最後の最後で素直な言葉を言えた・・。
あの人のお陰かもしれない・・。
(進藤)「ああ・・。またいつでもいいから、連絡してこい。・・・待ってる。」
照れてるのだろうか、慌てて受話器を切られてしまった・・。
でも、あの人の声を聞けてよかった・・。
気持ちが楽になった・・。
まだ、素直になるには時間がかかりそうね・・。
まぁ、待ってなさい・・。
〜END〜
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