〜声〜

 

 港北医大の救命センターの若き研修医といえば、太田川と矢部・・。今回の騒動は矢部が、勘違いをしたことがきっかけで引き起こされたのだった・・。

 夜、当直ではなかった矢部だったが、することが残っていて夜遅くまで残っていたときのことだった・・。

「あ〜、ついてないなぁ・・。最近ロクに家に帰ってないなぁ・・。疲れたぁぁ。」

 廊下をブツブツ文句を言いながら、歩いていると・・。

「ん・・・。そこ・・・いい・・。」

 かすれた声が通りすがった部屋から聞こえてくる・・・。矢部は思わず立ち止まり耳を澄ませる・・。

「あれ?今のって、香坂先生の声?」

 気づかれないように、息を潜める・・。

「ん・・。・・・気持ち良い・・・。くっ・・・ちょっ・・と、そこだめ・・。」

 悩ましい声だ・・。矢部の顔が青ざめる・・。

「クッ・・。」

 男だろうか、低い声が聞こえてくる・・。

「痛いってばぁ・・。一生・・。」

 矢部はショックを受ける・・。

「進藤先生と、香坂先生?・・・名前で呼び合う関係なんだ・・。それに・・。」

 しかし、聞こえてくるたまきの悩ましい声が、矢部の感覚を刺激する・・。

「イイ・・。ハァ・・・そこ・・。もっと・・・おね・・がい・・。イイ・・。」

「ここか?・・・こうか?」

 進藤の低い声がする・・。二人の喘ぐような息遣いが矢部を刺激する・・。

「香坂先生・・。あんな声出すんだ・・。」

 矢部の体が熱くなってくる・・。

「ねぇ、誰か外にいるんじゃないの?ねぇってば・・。」

 たまきの恥ずかしそうな声が聞こえてきた・・。焦る矢部・・。

「気のせいだろ・・。別にいいじゃないか・・。」

「そうね・・。」

 明かりが二人の影を映し出している・・。

「・・・あんな格好を・・・。」

 その影とは、たまきらしい細い影の後に進藤らしき影が抱きしめているように、映し出している・・。矢部の頭の中は、色々な妄想が繰り広げられている・・。

「ねぇ、矢部君!何してるの?こんなとこで?」

 後からいきなり声をかけてくる太田川・・。思わず太田川の口をふさぐ・・。

「ふが・・。っにするのよ・・。」

 太田川は、もがいて矢部の手を離す。

「静かにしろよ・・。ばれるじゃないか。」

「は?何言ってるの?何にばれるっていうのよ・・・。わけわかんない・・。」

 太田川が、その部屋のドアに手をかける。

「おい!辞めろって今、ドア開けるな!って聞けよ!あぁぁぁぁあ〜。」

 止める矢部だったが、太田川がドアを開けてしまい、絶叫してしまう・・。その現場を目にするのは、自分には辛いと・・。

「あ、お疲れ様です。大丈夫ですか?」

 普通に話をしている太田川をみて、首を傾げながら、恐る恐る矢部が顔を出すと、そこには・・・。

「肩こりですか?香坂先生・・・。」

 たまきは、首を左右に振りながら、いい音をさせている・・。

「そうなのよ・・。肩こりひどくってね・・。進藤先生に揉んでもらってたのよ・・・。あ〜、気持ちよかったぁ。やっぱり進藤先生じゃなきゃねぇ・・。ありがと。」

 気持ち良さそうに微笑み、進藤にお礼をいっている。

「いや・・。別に。」

 矢部は、声を失ったまま二人の顔を見ていると、その視線に気づいたたまきが首を傾げて矢部に声をかける。

「矢部君、どうしたの?何固まってるの?」

 矢部は、我に返り、

「え?いっいや・・。ちょっと・・。」

 バツの悪そうにしどろもどろに答えている・・。

「何よ・・。」

 怪訝な顔で矢部を見ている・・。

「なんだ?言ってみろ・・。どうしたんだ?」

 進藤も不思議そうに見ている・・。

「えっと、そこの廊下を・・・通ってたら、二人の・・。声が聞こえてきて・・。何やってるのかなぁって・・。」

 顔を真っ赤にして話している矢部を見て、たまきと進藤が予想がついた・・。

「何変な想像してるのよ!・・・バカ!変態!」

 たまきに、怒られる・・。

「落ち着けって・・・。お前な・・。仕事中だろ・・。そんなことするわけないだろ・・。そういうことをしたくなったら、家でやるだろ・・。」

 たまきは顔を真っ赤にして唖然としている・・。太田川は、思考回路がついてってないみたいだ・・。

「家でって・・。そんなぁ・・。」

 矢部は、たまきと進藤を見て、ショックを受けている・・。

「ちょっと・・・。何変な事言ってるのよ・・。バカ!!!」

 二人をキツク睨んで医局に戻っていった・・。

「待ってくださいよ〜。香坂先生〜。」

 太田川が慌ててたまきを追いかけていった。

 残された進藤は、苦笑して矢部に訊ねる・・。

「そんなに、悩ましい声をしてたか?・・・そうか・・。」

 矢部は、戸惑いながらも頷いて、進藤を見る。

「はい・・。二人とも・・。」

 ますます苦笑する進藤・・。自分でもたまきの声に胸が高鳴ったことは事実だ・・。

「・・・俺も男だが・・。仕事中にするわけないだろ・・。」

 といい、医局には戻らず、屋上にいった進藤だったが、

「・・・・はぁ・・。」

 残された矢部は、ある場所にかけこんだのだった・・。

 

〜END〜

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