その手を離さない・・・
進藤が、街でふと寄ったCD屋さんで、ある音楽を耳にした・・。
『いつもそう 単純で クダラナイことがきっかけで・・・
言葉が不器用すぎて 邪魔ばかりする 好きなのに伝わらない こんな想い 切なくて』
進藤はその音楽が気になった・・。
(進藤)「(心の中)まるで俺のことみたいだな・・。つい憎まれ口ばかり・・・。」
立ち止まり、音楽に耳を傾ける・・。
『「愛しい」だなんて 言い慣れてないけど 今なら言えるよ 君のために 隣で笑っていてくれるのならば これ以上 他に何も要らないよ 』
進藤は心にその歌詞が響く・・。
(進藤)「・・・シージャック事件のとき、あいつを失うかもしれないと、怖かった・・。あいつの笑顔をずっと見ていたい・・。」
たまきの笑顔が思い浮かぶ・・。少しはにかんだ笑顔・からかうように笑う顔・・。
『出会えたことから 全ては始まった 傷つけあう日もあるけれど 「一緒にいたい」と そう思えることが まだ知らない明日へと つながってゆくよ。』
その歌声は、進藤を応援しているみたいに聞こえる・・。進藤の心に勇気が芽生えてくる・・。
(進藤)「出会いか・・・。」
「一年間一緒に過ごせたんでしょ・・。よかったじゃない・・。・・・医者が患者を救うのに理由なんか要らない・・。」
「脱臼整復くらいでもたついているに、口だけは立つんだな・・。」
最初の頃の自分達の会話を思い出しては、苦笑する・・・。
(進藤)「最悪だな・・・。でも、初めてあったときに言われたあの言葉には、救われたな・・・。すでにその頃から俺の中にあいつが入り込んでたのか・・。」
たまきのことを考えていると、胸の奥が熱くなる・・・。
(進藤)「すいません・・。今かかってる曲ってどれですか?買いたいんですが・・。」
店員は驚いた顔をするが、すぐに持ってきてくれた・・。お礼を言い、店を出た・・。
自宅に戻り、CDをデッキに入れる・・。心地よい歌声が進藤の心に響いてくる・・。
(進藤)「・・・良い曲だな・・。」
『・・・平然を装っていたけど 余裕などないくせに また 笑顔をつくってしまった・・。 「守ってあげる」と あの時言ったこと ためらう気持ちも 嘘じゃないよ それでも 信じてゆこうとする想い コワレテしまわぬように 抱きしめていたい・・
・。」
シージャック事件のことを思い出す・・。犯人に脅され、一人苦しむたまき・・・。怖い・どうしたらいいの?と俺に聞いてくるあいつに「俺がついてる」と、あいつの肩を抱いた・・。
(進藤)「俺は、あいつが好きだ・・。離したくない・・。」
歌詞を見ながら、告白する決意をする進藤・・・。
〜翌日〜
仕事に行くと、隣にはすでに出勤していたたまきが、座っている・・。
(たまき)「おはよう。」
進藤は、ドキっとする・・。何気ない挨拶にも反応してしまう・・。
(進藤)「・・・おはよう・・。」
反応が鈍い進藤に、たまきは苦笑しながら、笑っている・・。
(たまき)「・・・反応鈍いわね・・。寝ぼけてんの?」
進藤は、ついいつものように、睨みかける・・。
(進藤)「・・・うるさい・・。」
たまきは苦笑しながら、視線を戻した・・。自分自身を呪ってしまう・・。
(たまき)「あら・・。あなたにしては、珍しいもの持ってるじゃない・・。この曲良いわよね。あたし好きよ。ELTでしょ?たしか、フラジールだっけ?」
進藤のカバンからはみ出ていたCDを見つけ、微笑んでいる。
(進藤)「ああ、たまたま立ち寄って、買ってみたんだ・・。こういうのが好きなのか?」
(たまき)「ん〜、そういう訳じゃないけど、歌詞いいでしょ?あっそうだ。今かけましょうよ。大きな音出さなきゃ大丈夫でしょ・・。」
そういうと、デッキにCDをかけ、小さめの音量で音楽を流す・・。
(進藤)「・・・何回聞いても良い曲だな・・。歌詞が特にいい・・。」
たまきを見つめながら、話しかける・・。
(たまき)「でしょ?あら、気が合うわね。」
進藤はいつもと違うたまきについドキっとするが、冷静を装う・・・。
(進藤)「そうだな・・。」
たまきも、いつもと違う進藤に戸惑っているようだ・・。
〜屋上〜
いつものように、進藤はタバコを吸いに屋上へやってきた・・。特に決めているわけではないが、必ず足が向かっていた・・。その理由とは・・・?
(たまき)「やっぱり、居たわね(笑)。今日、いつものあなたらしくなかったから、居ないのかと思っちゃった・・。」
微笑んでたまきがやってくる・・。そう、いつもこの時間、たまきは外の空気を吸いに時間が許す限りやってくるのだった・・。
(進藤)「・・・今日は、特別だ・・。」
たまきは笑って、空を眺める・・。
(たまき)「あたしね、あの歌詞をさ聞いてるとね。あの歌詞の中で、「出会えたことから 全てが始まった」っていうのがあるでしょ?あそこ好きよ。他にも好きなとこあるんだけど、どうしてか、そこが気になるのよね・・。よくわかんないんだけ
ど。」
笑って進藤のほうを見る・・。
(進藤)「・・・俺もそこ好きだな・・。でも、この歌詞聴いてると俺に言ってるような気がする・・・。俺が言いたいことも・・・・。」
たまきは首を傾げて進藤を見る・・。進藤は笑ってたまきを見つめる・・。
(たまき)「意味がわからないんだけど・・・。そうなの?」
進藤は頷いて、たまきを引き寄せる・・。たまきは驚いて体に力が入る・・。
(進藤)「・・・俺から離れる前に・・・。俺と付き合ってくれ・・・。俺の傍でずっと、笑っててくれ・・。」
たまきは、進藤の顔を見る・・。進藤もたまきの顔を・・。
(たまき)「・・・今、わかったことがあるの・・。どうしてあそこの歌詞が気になるのか・・・。あなたと出会ったから、私ずっと気になってたのかもね・・。あたしもあなたから離れたくない・・。こんな私だけど、いい?」
涙を堪えているが、今まで見たことがないくらいの笑顔だった・・・。
(進藤)「ああ・・。もちろんだ・・。ずっと一緒にいような・・。」
それから、二人は家に帰り、二人で曲をずっと聴いていたのだった・・。
・・・・・・・二人仲良く手を繋いで・・・・・・
〜END〜
トップ