ベネックス礼賛

フランス、と聞いて真っ先に思い浮かべるのはやはり映画である。 そもそも映画はフランスのルミエール兄弟の発明であって、「フランス=映画」というのは強ち間違った連想ではないと思う。

フランスといえばゴダール、トリュフォー、ジャック・タチ、ルイ・マルなどの有名監督がずらりと並ぶ映画王国であるわけだが、筆者にとって同世代のヒーローといえば、これはもう間違い無くジャン・ジャック・ベネックス監督である。「ディーバ」「ベティ・ブルー」「IP5」などの傑作をこともなげに発表してきた現代フランスの最高峰映像作家だ。

80年代半ば、このベネックスと競り合っていたのが今やすっかりハリウッド化してしまった「ニキータ」のリュック・ベッソンである。「ベネックスか、あるいはベッソンか?」これは当時の筆者にとって「溝口健二か、あるいは小津安二郎か?」はたまた「ジェームス・ブラウンか、あるいはスライ&ザ・ファミリー・ストーンか?」という問いと同様、すこぶる切実なものであった。

当時は他にもドイツのヴィム・ヴェンダースが映画による映画論ともいうべき「ベルリン天使の詩」を発表し、ソビエトから亡命したタルコフスキーが核戦争を扱った遺作「サクリファイス」を発表し、アメリカではジム・ジャームッシュがアンチ・ハリウッドなモノクローム映画を矢継ぎ早に発表し、映画という観点ではかなり豊穣な時代であったように思う。

ベネックスの映画は脚本も面白いが、なによりも映像が美しい。あらゆるカットがもう完璧にバシっと決まっていて、思わず物語を忘れてしまいそうなほどである。「映像美」ということでいえば、たとえばタルコフスキーなどはさらに厳密で、もうほとんど古典絵画状態の超絶映像のオンパレードなのだけれど、タルコフスキーの場合はあまりにも構図が完璧すぎて、見ていてその完璧さがつらくなる時さえある。(でもタルコフスキーも好きなので、また見てしまうのだが・・)

一方ベネックスの場合は美しい映像には違いないのだが、さすがは映画発祥の地の映画人だけに、どこかさらっと洗練されていて見ていて疲れない。また変に知性派ぶったゴダール的難解さもない。

さて、ベネックスの出世作は言わずと知れた「ベティ・ブルー」であるが、これは恋愛映画としては史上最高峰の一篇である(個人的に)。映像よし、俳優よし、脚本よし、音楽よし。これ以外に何が要るのか?というパーフェクトな恋愛映画である。が、敢えてオススメするなら「ディーバ」である。パリの郵便配達員とソプラノ歌手との不思議な恋、そこに絡まるギャングとの闘い。徹底的にエンターテイメントであり、美しい恋愛ものでもある。例によって美しい映像と音楽。

秋の夜長、フランス映画文化の至宝ジャン・ジャック・ベネックスの映像美にあなたも酔ってみませんか?

2002年09月20日 16時25分51



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