Makeup Crazy


うちの嫁はんの趣味は化粧(と化粧品)である。メーキャップ、というやつ。そう、お化粧。彼女が化粧(品)にかける情熱はかぎりなく熱い。その集中力はすこぶる高い。その情熱と集中力を語学に費やせば今ごろ十ヶ国語くらいは操れるようになっているのではないか。しかし何がどう間違ったか、彼女の関心は化粧(品)。女優でもないのに。ムダなのに。

そもそも筆者は化粧の濃い女性はあまり好きでない。小手先の化粧できれいに見せようという女性の魂胆もなにやら気にいらない。かくして「アンチ・メーキャップ」を標榜していたのであるけれども、結婚して八年。嫁はんの化粧及び化粧品にかけるあくなき探求心を間近で見ていたら、「まあええか」という気になってきた。

うちの嫁はんは基本的にボーっとしたタイプである。ある意味おっとりしている。換言すれば頭の回転が遅い。正確にいえばボンクラである。ボンクラ夫の妻がボンクラなのは、ある意味必然である。しかし、そんな彼女が日々のくらしの中で獲物を狙うオオカミのような眼差しになる一瞬がある。それはテレビで化粧品のコマーシャルが流れた時だ。何をしていようと、その瞬間彼女の目はブラウン管に釘付けとなる。そうなるとこちらが話しかけても一切返事はしない。

もの凄い集中力で画面をくいいるように見つめている。こちらが「あ、話しかけてはいけない」という気に自然となる、それだけの気迫を放ってコマーシャルを見ている。「あ〜、なるほどな」とか「なんでこんなモデル使うかな〜」とか「またこの路線か〜」とか「美咲ちゃんになりてぇ〜」などと小さな声でブツブツ呟きながら見ている。宮本武蔵のごとき殺気である。とても恐い。

そんな彼女であるからして、外出する際にも化粧に時間をかける。それでケンカになることも多い。本人いわく「今日はめちゃくちゃ早い!」らしいのだが、毎回遅い。いつも、ものすごい形相で鏡を睨みながら眉毛を描いている。たまに鏡の中で目が合うが、とても恐い。いまだに慣れない。毎日いっしょに暮らしていて、なんとなく相手のことを分かっているような気になっているけれど、この瞬間「ああ、やっぱり分からん」と思う。「分からなくてもいい。いや、分かりたくない」とも思う。

かくして化粧(品)命な嫁はんであるが、悲しいことにヘアスタイルのセンスがゼロである。以前、クルクルのラーメンパーマをあてていた時は「スランプに陥ったジミー・ペイジ」みたいな髪型になっていた。きっと職場で噂になっていたであろうと思われる。化粧には髪型も含まれるんだろうと思うが、彼女にそこまで考える余裕はないようである。顔面の化粧でいっぱいいっぱいなのだろう。

ちなみに最近は五稜郭にいたころの土方歳三(もしくは一時期の長州力)みたいな髪型になっているが、気の毒なのでそれは言わない。気のすむまでやってくれ、そう思っている。

 

 

2005年2月25日




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