いきなりな人々

先日ジミ・ヘンドリックスのライヴDVDを買った。新品なのに1500円と破格であったからだ。ま、値段はさておいて、このDVDを見ていてつくづく思うのだけれど、ミュージシャンには「新化型」と「いきなり頂点派」との2種類があるのではないか、と思うのである。(かかる区別が大雑把なのはご容赦いただきたい。)

たとえばビートルズなどは、最初「まあまあのアイドル・グループ」だったわけだが、「リボルバー」あたりからアート度が上がり、「ホワイトアルバム」あたりでは完全に神の領域に突入してしまっている。これが「進化型」である。他にもレッド・ゼッペリンやらスティービー・ワンダーやらマイルス・デイビスやら多くのアーティストがこのタイプに属している。

これとは対照的にデビューした時点でいきなりトップギア、というかいきなり横綱全盛期というタイプの人がいる。 それがジミ・ヘンドリックスであり、ジャコ・パストリアスであり、ジャニス・ジョプリンであり、はたまたリー・モーガン(ジャズ・トランペッター)であり、2PAC(伝説のラッパー)である。ボクサーでいえばマイク・タイソンあたりか。

この系列の人は、いきなり個性全開でシーンに登場し、人々の度肝を抜く。で、いきなりピークに至っているので、「一体この先どうなるんやろか?」と聴衆を身震いさせてくれる。しかし、心配することはない。この「いきなりトップギア」系の人達は、揃いもそろって早死に(もしくは悲惨な人生)するのである。

ジミヘン=ドラッグで死去
ジャコ・パス=泥酔中に殴られ死亡(ずっと薬中)
ジャニス・ジョプリン=薬中で死亡
リー・モーガン=痴情のもつれで女に撃たれて死亡
2PAC=タイソンの試合の帰りに撃たれて死亡

ジミヘンなど、今見ても現役ハードロック・ギタリスト十人が束になっても敵わない迫力である。少々チューニングが狂っていても歌のピッチがおかしくても関係ない。完全にぶち切れたドライヴ感があるため、そういう瑣末な事柄はどうでもよくなってしまう。未だかつて、このドライヴ感を再現できたギタリストは存在しない。この「完全にぶち切れたドライヴ感」こそ、天才にだけ許された秘密の魔法なのだろうと思う。このドライヴ感と引き換えに彼は寿命を縮めたのだろうか。

考えてみれば先に列挙した「いきなり系」の人達は悲劇的である。 いきなり極致なのである。ジミヘン・スタイルをあれ以上に推し進めることなど想像も出来ない。ジミヘン自身にさえ出来なかった。そして死んだ。

ところで、「いきなり型」と「進化型」以外にも実は様々なパターンがある。ファンクの神様ジェームス・ブラウンは最初は「進化型」だったが、ファンク確立以降は「ひたすらこの道一本型」になった。このタイプにはBBキングなど多数いる。クラプトンは「進化型」でありながら70年代以降「ひたすらこの道一本型」になり、やがてある時期から「仙人型」即ち「なにやっても凄い」に変化した。いろいろあって楽しいのである。

2002年09月02日 16時02分48秒



Shake Your Booty!!