
アメリカR&B界の「サブ北島」、いや「スギリョウこと杉良太郎」か、とにかく大御所にして巨漢の名歌手ルーサー・ヴァンドロスが4月に脳卒中で倒れて以来危篤状態だという。なんということだ。一度も来日してないのに危篤とは・・・・。
というわけで、今回は彼の復帰を祈りつつルーサー「スギリョウ」ヴァンドロスを取上げたい。
今やバリー・ホワイトと並ぶR&Bバラード王となったルーサー、もともとあのシックのバックボーカルなどやっていたわけで、実はアップ系も得意である。で、ルーサーのアップ系代表作となるのが傑作「Never Too Much」(1981)。後の相棒マーカス「文句あるんか?」ミラーがベースで参加しており、全編にファンクな血潮をたぎらせている本作は、今なおファンの間で評価の高い逸品である。
1曲目の「Never Too Much」、のっけからアクセル全開の傑作、タイトル通りまさにNever Too Much、イントロのパターンはいつまでも聴いていたい中毒性の強さだ。
名人技のリズムギター、バディ・ウィリアムズのグルーヴィかつタイトなドラム、マーカスの「やるんか、こら?!」なベースが渾然一体となって強固な土台を形成し、その上に力を抜いたルーサーの歌が舞う。そしてサビの「Never Too Much、Never Too Much、Never Too Much」でピークへ。即死である。
因みにテディ・ライリーはこの曲をほぼそのまま使ってクイーン・ペンにラップさせている。
マーカス「文句あるんか?」ミラーの神業ベースを楽しみたいというなら、やはり必殺「Super Lady」だろう。アップの8ビートドラムで始まり、待ってましたとEマイナーのスラッピングがブチかまされる。今となってはお馴染みのサウンドだが、当時としては画期的なベースサウンドであった。
こういうアップでも全然熱くないルーサーの唱法は好き嫌いの分かれるところかもしれない。F-1マシンのエンジン搭載しているのに時速80キロくらいで流す感じ、といえば分かってもらえるだろうか。「アクセルをベタ踏みしたら一体どうなるのか?」という怖さが、ルーサーにはある。
ルーサーといえば、スティーヴィー「天上人」ワンダー80年代のヒット曲「Part Time Lover」のイントロで「タッタラ・タッタッタラリラ、タッタラ・タッタッタラリラ」と歌っていたので、知らずに聴いた事がある人も多いはずである。
因みになぜ彼が「スギリョウ」なのか、といえば、それはアルバム「The Night I Fell In Love」(1985)のジャケット(左の写真)を見れば一目瞭然であろう。ド派手に演歌なコテコテ・スーツにこっ恥ずかしいポーズの決め具合、まさにスギリョウ様である。
このアルバムではスティーヴィーの名曲「Creepin'」をカバーしているが、これがまたルーサー節200%炸裂で非常に素晴らしい仕上がりである。
このアルバムには今は亡き名ドラマー(謎の自殺を遂げた)ヨギ・ホートンがドラムで参加しているのも注目である。共同プロデュースをマーカス「文句あるんか?」ミラーが努めており、非常に質の高いアルバムであるといえる。
米国での知名度の割に今一つ日本で認知されにくいルーサー。いまひとつ日本でウケない理由の一つは、マーヴィン・ゲイ的な「泣き」の要素(泣きの響きというべきか)が彼の「声」に感じられないからかもしれない。それにスギリョウ/サブ北島的ファッションも関係しているのだろうか??
いずれにせよ彼の一日も早い回復を願わずにはいられない。そしてあの、一度聴いたら忘れられない独特の声を再び、今度こそ日本で聴かせてほしいものだ。
2003年5月14日