自宅録音 Tips

自分なりに自宅録音のコツみたいなものを書いておこうと思い立った

<ドラム打ち込み方法>

まず必須なのはキーボード(鍵盤)またはパッド系入力機。ピアノロールなり数値なりで打ち込むこともできるけれど、直感的に素早く打ち込むなら鍵盤が一番である。打ち込む場合の音源はいわゆるMIDI音源(SD-90とか単体シンセなど)かサンプラーということになる。いずれにせよ、クリックを鳴らして基本を打ち込み、後でクォンタイズをかける(又は最初からクォンタイズ補正をかけて録る)のがセオリーである。譜割に補正をかけるということは、ビートが機械的になりすぎるという面があり、作成者はいろいろなやり方でこの「機械らしさ」を回避すべく努力する。

結論を先取りしていえば、打ち込んだデータをいかにばらつかせるかが肝になる。

まずはベロシティ、つまりキックやスネア、ハットなどの各音の音量調整は必須である。すべての音が均一な音量で鳴ると機械らしさが強調されるから、逆にあえてそれを全面に押し出すのも悪くない。ハットの裏拍は弱め、とかキック連打の二つ目は弱くとか、王道セオリーがいくつかある。ま、各音のPAN調整も必須である。

次に、ゲートタイム(デュレーション)、つまり各音が鳴る長さの調整もグルーブに大きな影響を与える。鳴っている音の長さが変わることによって、音質そのものも変化して聴こえるので非常に重要である。思い切って短くしたり、長くして、自分の好きなポイントを探せばいい。

次に、音色自体にばらつきを与える方法がある。スネアやキックなどを複数用意し、ベロシティで変化させるだけでなく音源そのものを変化させる事で変化をつけるやり方。特にサンプラーを使用する場合、これが簡単かつ効果的な手法になる。

最も上級(かつ、お手軽)な手法としては、発音タイミング自体をばらつかせる、という方法もある。いわゆるリアルタイム入力でクオンタイズしない、という方法であるが余程のタイム感がないとこれは難しい。結局あとで編集で各音の位置をひとつひとつ修正する羽目に陥ることもある。しかし「自分」を音に反映させるという点では一番手っ取り早い手法なので、クォンタイズとうまく併用すればいいのではないかと思う。具体的にはドラムパートをクォンタイズにしてパーカッションを手打ちする、などである。この場合手打ちパートの音量を下げれば、ばらつきが目立たない。

自分がよく使うのはドラムループ集などのループサンプルと打ち込みを混ぜる、またはループの一部を切り取って打ち込みと混在させるという手法である。要するにグルーブ感をループで出してもらって、そこに打ち込みで楽曲に合わせたパターンを入れることでリズムを成立させるわけで、感覚としては補助輪つきの自転車に乗るようなものである。ミクロ単位でのグルーブ調整に右往左往するくらいなら既成ループに助けてもらおうというわけで、これはこれでアリではないかと思う。

結局、こうしてみてくると、ドラムの打ち込みとは「機械っぽさ」と「自分らしさ」の間の果てしなき葛藤であると言える。そこに面白みがあるのは言うまでもない。

<ベース打ち込み>

ネットでいろいろな曲を聴いていて思うのはベース・フレーズの弱さである。恐らく、ベースをどう入れるかというのが自宅録音における鍵なのかもしれない。昨今のヒップホップなどはあえてベースラインを「ライン」として聴かせず、響きとしてのみ使うというような傾向があって、それは故意の狙いだから問題はないのだけれど、そうではなくてポップスやロック、ファンクではベースが非常に重要になってくる。

ベースを考える場合の基本的なスタンスとしては「奇を衒わない」ということが何よりも重要だろうと思う。よほどベースのフレーズに精通していないかぎり、奇を衒うと確実に失敗する。ベースはビートと上モノを繋ぐ重要な存在なので、ビートに合ったフレーズを弾く(打ち込む)というのが間違いない。

つまり16ビートなら16系、シャッフルならシャッフル系ということである。それらの基本パターンを知っておくことが肝要だろうと思う。ベースで自分らしさを出すというのは、ベースを専門としていない者にはかなりハードルが高いということを知っておく必要がある。ベースについては「保守主義者たれ」というのが筆者の基本姿勢である。ちなみにベースでは音の長さの調節が決定的に重要なので、フレーズそのもの以上に要注意である。

<サンプリング>

筆者にとって自宅録音で最も楽しい作業の一つがサンプリングである。特に単音サンプリングでなく、フレーズ・サンプリングは楽しい。考えてみれば手持ちのCDすべてが音源なわけで、その可能性は無限である。手当たり次第にサンプリングして、それを鍵盤に適当にアサインし、適当にサンプル音を鳴らしている時ほど楽しいことはない。

何が楽しいかというと、自分が予想していない音世界が簡単に目の前に立ち現れるからである。これは、いわゆるMIDI音源による打ち込みにはない楽しさだろうと思う。予想以上に素晴らしい組み合わせになることもあれば、予想以上に面白くない場合もあるけれど、MIDI音源の場合はほぼ確実に予想以下もしくはうまくいっても予想どおりであることが圧倒的なので、その差は大きい。

ただし、フレーズ・サンプリングの場合はテンポ合わせとピッチ合わせという永遠の問題が付きまとうのであって、そこに最も時間を取られる。

まずは、自分の好きなCDの好きな部分を片っ端から適当に抜いてくる。筆者の場合はサウンド・フォージXPで抜くことが多い。音を抜く場合のコツは「欲しい部分」の前後に若干余裕を持って抜く、ということ。後で使う時に微妙なテンポ合わせに有効だからである。さらにもうひとつのコツは、出来るだけいろんな分野のCDから無闇やたらに抜くほうがよい、ということ。そのほうがトリッキーなものが出来るからだ。そして、それらのサンプル断片を適当なフォルダにわかりやすく入れておく。

ある程度のサンプルが抜けたら、それらをサンプラーにアサインする。1サンプルにつき鍵盤3つ分くらい(例えばC〜D)の範囲でアサインしておく。これでC#のキーが元のサンプルのキー、CとDがそれぞれ半音上下となる。これで準備OKなので、あとは鍵盤を適当に鳴らしてみる。サンプルのスタート位置を変更したり、各サンプルのPANを変更したりしながら、おもしろいパターンができるまで遊んでみる。おもしろいものが出来ないなら、別のサンプルをアサインしなおす。「とにかくバカみたいに試してみる」ことが基本である。

サンプルのループが出来たら、それにあうドラム、ベース、エレピなどを考える。サンプルに音程があるものを使う場合はベースなり鍵盤側で音程を合わせる。ストリートっぽさを出すために、あえてキーから外れたものをそのまま使うというのも手であるが、センスがないと単なる「ピッチ合わせ失敗」になるので注意が必要。

こうして出来上がったベーシックトラックは、サンプリング音を鍵盤にアサインした時点では想像だにしなかったものである可能性が高く、非常に楽しい。変拍子ドラムと一緒で、作った側は制作順序がわかっているので何とも思わないが、聴く側はプロセスを知らないために「いったいどうやってこんな組み合わせを作ったのだろう??」と思うので愉快である。 2003年12月25日




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