これまでソウルに関してはカーティスやダニー・ハザウェイなどの大御所ばかり取り上げてきたので、今回は彼らに比べて一般にはやや認知度の低い男女混成のボーカルグループThe Ebonysの「The Ebonys」('73)を紹介したい。まずアルバムジャケットが非常に素晴らしくて、このジャケットだけでもイケそうなんだけれど・・・笑。
このエボニーズ、「やや認知度が低い」などと書いたものの、ソウル・ファンの間では大メジャーな存在であって、特にフィリー・ソウル愛好家にとってはシンボル的な位置付けにあるので、現在でも音盤を入手しやすい。(一時期は幻のアルバム扱いだったようだけれど)いわゆるひとつの「フィリー・ソウル」の典型だから、フィリー入門盤としても最適の1枚である。
さて、このアルバムの解説に入る前に「フィリー・ソウル」とは何なのかを簡単に記しておこう。フィリー・ソウルとは、その名のとおり「ペンシルヴァニア州はフィラデルフィア産のソウルミュージック」を意味しているわけで、このフィリーソウルの特徴となるのが、今や伝説のプロデューサー・チームであるギャンブル&ハフらによる独特のシルキーなストリングス・アレンジである。スローのみならず、アップ系の曲でもストリングスが大活躍する。特にメローな曲調での華麗なストリングス・アレンジは秀逸で、どちらかといえばリズム隊とブラスが主体であるモータウンとは一線を画す(モータウンも大好きだけど)。
フィリーの代表的な曲としてはMFSBの「ソウルトレインのテーマ(The Sound Of Philadelphia)」やハロルド・メルビン&ザ・ブルーノーツの傑作バラード「If You Don't Know Me By Now」などがある。ギャンブル&ハフ絡み以外にも、デルフォニックスの「La La means I Love You」やスタイリスティックス「You are Everything」などがフィリーとしては有名である(注:ここに挙げた曲すべてが絶品)。
さて、アルバム冒頭を飾るのは「Hock Up and Get Down」。これぞソウル、である。エドウィン・スターの「War」を思わせるバリトン・ボーカル(名前不明)がこちらの心臓をわしづかみにする。さらにはこのドス黒いベースを聴け、と。グルーヴしまくっていて恐ろしい。こんなベースを弾いてみたい・・・。まずはこれで軽く脳震盪を起こすことになり、意識朦朧のまま2曲目の傑作スロー「it's Forever」へ。
まさにこの歌そのものが「Forever」なわけだけれど、イントロのシルキーなストリングスに続いて入るコーラス、おもむろに、満を持してバリトン・ボーカルが切り込んでくる。そしてファルセットに移行。死にます。即死します。危険すぎます。楽曲もよすぎます。これがスイートソウル・ミュージックってもんだろ、と言うしかない歴史的傑作。聴かずに死ねない。
ここで完全に脳内麻薬が充満してしまうので、これ以降の曲をもはや冷静に判断できないわけだけれど、どの曲も「文句あるんかワレ?」な仕上がりであることは明記しておかねばならない。アルバムトータルでみても非常に水準の高い楽曲が並んでいるのでお買い得感も高い。
アルバムは傑作スロー「You Are The Reason Why」で幕を閉じる。「パパパパー、パパパパー」というコーラスがたまりません。結局ここでも死にます。即死。溺死。討ち死に。 ん?
つまるところ、傑作なんです。「聴かずに死ねない」に取り上げたからには全国民の皆様に聴いてもらわなきゃ困るんです。国会で「聴かずに死ねない法」成立を審議してほしいんです。日本の初代大統領になりたいんです。最近医者から睡眠薬もらってるんです。
2004年3月5日 まだまだ寒い関西地方。家計も寒いっちゅうねん。