Bensonの脳に挑む


今まで「やってみよう」と考えたこともなかったんだけれど、急に思い立ってジョージ・ベンソンのフレーズをコピーしてみることにした。せっかくGB100などという宝の持ち腐れなギターを所有しているのにベンソンのフレーズが一つも弾けないのはダサダサすぎるからである。とはいっても、フレーズが高速すぎてとてもじゃないが音を追いかけられない。そこで文明の利器に頼ることにした。

まずベンソンの曲をSonarという音楽作成ソフトに取り込む。そこでそのオーディオファイルに「ストレッチ」という加工をする。そうすると元の1/2のテンポのオーディオファイルが出来上がる。この機能のすごい点は、テンポが半分になっているのにピッチは元のままということ。どの程度テンポを下げるかはパーセントで指定できる。なんてすごい機械なんだろう。こんな使い方、ちょっと考えたらわかりそうなものだが気がつかなかった。バカだからである。

さてそんなわけで早速コピーしてみる。曲はブチ切れたようにギターソロが炸裂している「Body Talk」である。テンポが1/2になったベンソンの世界を聴いてみて「え?」と驚愕する。1/2でも結構早いからだ。しかもフレーズのリズムにまるで乱れがない。元のテンポは当然「なんじゃこりゃ?」だけれど、1/2に落としても「なんじゃこりゃ?」である。

しかしまあさすがに元の半分のテンポだと音は拾える。で、拾ってみるとこれがチャーリー・パーカー的バップ・フレーズが「これでもか!」とばかりに炸裂しているではないか。元のフレーズを聴いている時点でわかったつもりでいたけれど、実際にこうやって顕微鏡で200倍に拡大したような状態で解析すると、あらためてえげつないなあと思う。テンポが半分なのにスイングしているとは何ごとであろうか。やはり人間業ではない。神の領域である。しかも運指が複雑であるからテンポ半分でもうまく弾けない。しかしいろいろなことがわかってくる。クロマチックな音の使い方など非常に参考になる。 「ああ、そうか、こうなっとるのか〜」と一人で興奮してしまう。嫁はんに「なあ、ベンソンすごいで。めちゃくちゃにえげつないで」と言うが、「ああ、そうか。ベンソン、すごいんやね〜」とまるで相手にされない。アーティストとは孤独である、ということを学ぶには最適な我が家。

2小節ほど追いかけるのにフラフラである。しかしたった2小節とはいえ、半分のテンポならなんとか弾けなくもない。徐々にテンポを早めていけばいつか弾ける日がくるかもしれない。そう思っていざ元テンポのファイルの該当箇所を再生してみると

「なんじゃこりゃあああああぁぁぁあああ」

の超高速ぶりに思わず大爆笑してしまう。がははは。ベンソン、バカじゃないの?という超高速ぶり。早いのにグルーヴィ、そこが神ですわな。

まあそんなわけで、ベンソンを真似ることの無謀さを思い知ったのであるけれど、200倍に拡大したベンソンのソロ世界は非常におもしろいものだった。コピーする前と後では聞こえ方がに断然差が出るのである。時間にしてほんのコンマ何秒という刹那にベンソンが何を考えていたのか、それが多少なりともわかる、というのは貴重な体験であった。

それにしても一流というのはどこからどんなふうに見ても一流なのだなと、改めて思い知った次第である。今後はこの「ストレッチ」機能を使ってパット・メセニーやジョー・パスなどを解析してみたい。


2005年2月12日




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