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日本のポップ・ミュージックのフィールドで歴代最高のドラマーは誰だと聞かれたなら、やはり高橋幸宏を挙げざるを得ないのは、単に筆者が「YMO世代だから」というだけではなくて、あたりを見まわしても彼ほどの「オリジナル」なドラマーが他に見当たらないからでもある。
幸宏以前、日本人ドラマーにとって「外国のドラマーにいかに似ているか/迫っているか」がそのプレイヤーに対する評価の基準だった。しかし、そこに幸宏が登場し「日本人のグルーヴ」を正々堂々と打ち出したのである。これは衝撃だった、いや、今なお衝撃であり続けている。
彼が日本最高のキーボーディストである坂本龍一、日本最高のベーシストである細野春臣とYMOを結成したのは決して偶然ではない。彼らはそれぞれがそれぞれの分野で頂点であったので、頂点同士が結びつくのは必然である。(坂本、細野も「オリジナル」という点で突出している)
筆者は黒人の音楽(とりわけソウル、ファンク、ジャズ)が好きである。その理由の半分は彼らの音楽のグルーヴ、あのバウンシーなリズム感にある。そして、そのグルーヴはまずドラムとベースの絡み合いによって生み出されているのだけれど、そういう黒人的なグルーヴだけがグルーヴではない、ということを幸宏は証明してくれた。
具体的にわかりやすい例として、坂本龍一のソロ「音楽図鑑」に収録されている「セルフ・ポートレイト」という楽曲を、同じく坂本のソロライブ「Media Bang Live」に収録されているライブ版と聴き比べてみればわかる。「音楽図鑑」の方のドラムは高橋幸宏、ライブ版のほうはバカウマ黒人ドラマー(名前忘れた)である。
さて比較結果はというと、もうこれは圧倒的に幸宏のほうが楽曲にマッチしているのである。ライブ版のほうはビートが楽曲に対してファンキーすぎて(ハネ気味で)浮いているのである。対する幸宏のほうは、ジャストなタイミングで、お決まりの八分音符によるスネアのおかずが入り、「これしかない」という決定的なものとなっている。これはかなり衝撃的な結果だった。それまで「黒人ビートこそ最高」と信じていた価値観(それは一種の劣等感の裏返しだけれど)が、幸宏のおかげで見事に覆されたのである。
幸宏のドラムには確かに黒人的ファンキーさはない。しかし、あの機械的ともいえるジャストなビートは、それ自体が「独自なグルーヴ」であり、黒人のグルーヴに引け目を感じる必要などまるでないものだ。そして彼のグルーヴは今なおこの国で最高峰のものであり続けている。
今なお日本の女性ポップ歌手の最高峰である矢野顕子のアルバム「ごはんができたよ」などは、この幸宏の唯一無比なグルーヴが全編にわたって聴ける傑作である。ちなみにベースは細野春臣、鍵盤に坂本龍一などが参加しており、恐るべき「日本のグルーヴ」を聴かせてくれる。それにしても、YMOの3人は本当に突出した人たちである。
2002年11月07日 11時21分26秒
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